【ものを】と【ものが】
郵摸に関して、かなりクリアになって来ています。警視庁保安課に問い合わせた結果、明瞭な回答が得られました。1月の件は富山の男性が、5月のそれは横浜の古物商がターゲットです。主たる該当物は【東芝ゼロ円】です。私の解釈を伝えたところ、警視庁としては2件共に地検に書類を送り、起訴されることを期待しているとの答えでした。結論は公訴時効の3年以内に為されます。日本の司法制度では起訴された刑事事件での有罪率は99%以上、無罪になればニュースだし、国家賠償請求の対象になる位です。だから検察は有罪になる案件しか起訴しません。でも、警察から検察に書類送検された案件の内、起訴される確率は38%に過ぎないのです。この事を覚えて置く必要が有るのです。
郵摸の解釈ですが、私は製造時期を根拠にして、基本的に東芝ゼロ円のオリジナルは合法品、リプリントは違法品という意見であり、法的根拠も持っています。当然ながらオリジナルとリプリントの意味の違いを警視庁に告げましたが、先方に郵趣品に関する理解力は有りません。摘発に当たっては監督官庁の総務省郵便課と書面でやり取りを為し、顧問弁護士の意見で、オリジナルも含めて違法との回答を得たとの返事でした。郵摸の法文は一条しかなく解釈に迷いません。紛らわしい外観を有する物を摘発の対象にし、適用外要件も明示しています。2 前項の規定は、同項に規定する物で『郵政大臣』の許可を受けた【ものを】製造し、輸入し、販売し、又は頒布する場合には、適用しない。です。なぜ【ものを】が漢字でなく平仮名かが分からないのですが、【ものを】は【物を】と読むべきだと考えます。つまり【者が】と読み替えて、限定された属性を根拠にして摘発の対象外になるのでなく、物自体が合法か否かが問われるのです。警視庁はこの点で明らかに間違っています。私の問いに対して、【者が】の解釈で、東芝ゼロ円は「物としては」郵政大臣の許可を受けたことは認めるが、それは東芝のみが当初の目的に使う限りにおいて合法であり、第三者がそれをやれば違法だというのですが、「者」に読み替えており、これば全く無理筋です。だからこの点にポイントを絞って、総務省郵便課に警視庁に対してどう答えたかを聞いています。リプリントの現物を見て判断をした物を、警視庁がオリジナルにも適用できると解釈したのかと思います。物凄い善意での解釈ですが、どう答えてくれるか楽しみにしています。ゼロ円は製造日からして、法の不遡及でも適用は無理なのですが、その点以外の物への解釈の意見を聞きたいのです。7月1日にレターパックを送りましたが、現時点で返事待ちです。
【郵摸】法案作成者の関係者のご遺族から、決定的な一級の資料を頂きました。法律化直前の郵政省の素案・意見の具申書です。まさにそのままが法文になっています。付随して今まで知らなかった事実か記されていますし、これを読めば【郵摸】の法的な位置付けが明瞭になる物です。郵政省の便箋なので、そのまま画像でお見せすると差しさわりあるかと思いますので、後日打ち換えて公表いたします。概略ですが、元の法律は明治42年逓信省令第65号です。万国郵便条約73条と絡みます。そして新憲法の施行の結果、命令をもって処罰事項の規定が消失し、郵政省設置の昭和24年5月末で旧法が廃止され、昭和47年12月1日の【郵摸】施行までの期間は法的な空白期間になったのです。この期間に於いては、旧法の適用除外の要因を満たすためでも、許可を申請する術がなく、結果としては違法物は存在しないのです。処罰できる法律が無いのですから。新【郵摸】が施行後も当然ながら遡っての許可申請の義務もなく、外形上は法律が存在すれば違法な物も含めて処罰の対象にはなりません。法は遡及しての行為の追及はできませんから。だから、【ものを】=【物を】が重要なのです。
明治時代の逓信省令65号=通信日附印及郵便切手類模造取締規則でも、今の【郵摸】でも、適用除外の要件は明記されています。郵政大臣(総務大臣)の許可がそれです。面白い出品物が有りましたので、それをお見せいたしましょう。和田小太郎の偽物のシートです。明治23年8月3日印刷なので、明治法の施行以前の郵趣品です。法が存在しないので違法にはなりません。当時でも今でもです。今の法律を基準にして、思い込みで偽物は何でも違法では有りません。そしてそれは、外国切手に於いても同様です。当然ながら外国切手に関する許可を日本の郵政大臣が出すわけは無いのですが、発行当時国が許可すれば【郵摸】の適用からは外れます。現行法に於いても、総務省の許可申請に関する解説の、総務大臣の許可が不要な物の内、(9)外国で製造された模造品を輸入する場合で、そのものが当該国の郵便切手類模造取締関係法令に違反しない物。・・・と書かれています。外国切手のみほんやプルーフは原則的に全てセーフです。日本に於いて、郵便法上の有効性=手彫と5厘を除く旧小判、追放切手以外のリプリントもアウトという事も間違いです。何処にもその記載は有りませんから。実務上は戦前発行の物は対象外と思います。これに関しては私はHS税番49類で想定している定義を使う事が多いのですが、これは別の視点での議論が要るので長くなるので今はスルーしておきます。