2005年10月11日(火)

「国立公園小型シート」
目打の話を書いていて、面白い事実に気づきました。「プラハ・・・」やそれ以外の小型シートの1枚印刷や、年賀の4面掛けの場合は、一度の作業で穿孔が出来るように目打機を作ってます。区別するならH=全型目打を一度操作すれば完了です。
弊社第38回フロアのロット3523の写真です。記事を編集した時には、随分20銭がズレテいて、珍しいエラーだな程度の受け取り方でした。だから、モノクロでしか載せてません。でも、良く見れば、目打はズレタ20銭を追いかけて打たれているのです。この事実だけで、国立公園の4種刷りの小型シートの目打は、4種用にセットした、全型目打の一度打ちでなく、切手毎に、4回の作業をしたと判ります。一度の作業で1枚ずつでは無いでしょうが手間暇掛けた仕事です。そして、この作業のやり方は、戦後のものも同じです。吉野・十和田・阿寒で、日光と同じく、印刷がズレテ、目打がそれを追っているものが見つかっているし、重ねての穿孔作業でしょうから、反対に印刷が定位置で目打が一部の額面でズレテいるのも有るのです。
ここらの話を、最近、関東から関西に仕事の都合で引っ越して下見や、フロアに来てくれている人としてました。キャリアは長いし、一応ゼネラル、人と競って頑張ってオークションで落とすのが「国立公園」だけの人です。人よりも高くても買うということも重要ですが、自分でポイントを決めて、その可能性を求めて、即売やオークションで丹念に下見をするのです。値段は二の次で、欲しい物が有るか無いかが問題です。だから、オークションでは勝手にやってくれるし、値段で勝負して、他に強烈な人がいたら、その上で買うも、自分の評価でやめるのも、この人なら納得してできるのです。ベタベタのお付き合いは不要で何の手間も掛かりません。以前は電話で「疑問消し」のことを聞かれて、それは見知った消印だったので割りと簡単に答えられたと思います。
好みが判るというか、国立の分厚い紙のインパーフを、機会が有れば、全部買っていたと聞いてました。だから絶対的な素性が知れてなかった、変な小型シート、しかも、国立富士箱根の情報を貰ったならば、それなりにオファーを掛けるのです。オークションのディスクライバーは、20年前にプライベートで、「旧小4銭田型貼りの白抜けキ」の極美のカバーを買ったことの有るグレッグ・トッドくんで、特別のインフォメーションも貰ってました。彼の考えでは、出所から見て、在日米国駐留軍の高官が持ち出した、試刷のようなものでした。
調べたけれど、絶対の確証は得られずに、セールの日が近づきました。直感で「買うべし」と思って、エージェントも手配したのですが、問題は値段です。素性は定かでなくて、確信は有りません。@10万と言えば10万だし、@100万でも欲しい人がいるかも知れないし。売り方を考えれば、富士箱根・議事堂・愛国・昭白高額はセット売り、1次昭和はバラします。特に乃木は別格で、もし持って無ければ、幾ら高くても売れるでしょう。そこそこの数字を頭に入れて準備してました。昭和を一番高くして、次いで好みで欲しがるに違いない「珍品コレクター」にはまる、昭白2種・・、あとはセット売りが、かえって足かせになるのです。
ギリギリのタイミングで来てくれて、当然のように、「富士箱根」は欲しいとのこと。こちらの思っている数字を出したら、その程度でなら大喜び、どうしても欲しいので、値段は構わずお願いしますとのこと。確かにフロアでのビッドの遣り方を見てればその通りです。メールが相場以上に強いので、止めたらと思っても、最後まで行ってましたから。特に最近は、買う物が無くなって来ているとのこと、切手に限った予算でも賄えるし、車の買い替えを暫く延ばしても、こちらが欲しいとまで言うのです。値段はさておき、物に対するリスクは被ってくれるので、ならば後は落とすだけ。必要な手配をして、ビッドを預けました。不発行4完の未使用・みほん・特印付きの葉書がセットで買えるぐらいの数字です。昭和や他の物も、それに鞘寄せした数字なので、まさか負けないし、上で取られるならば、ノンリミットで来られた場合だけ。それならそれで、賑やかになって結構なことなのです。
でも、落ちた値段は安かった。拍子抜け位でした。前もっての話で、日本からのメールビッドが一杯有ると聞かされていて、一人だけかなり強いとか言ってましたけど、それは何時もの事なので、メールの場合は、参考値基準の数字でしかないのです。スイスのオークションで、目玉的な物をメールで落とすのは無理なのです。
富士箱根は、私としては完全なノーリスクのビッドでしたし、空振りの可能性も無い札なので、エージェントの費用も賄えるのです。この場合の売り値は、ハンマープライス+経費の1割増しで構いません。ビッドした値段より一桁安くても、それは勿論納得です。落ち値の3~5倍は覚悟をしてましたが、その差は、物に対する安心感の違いが大きかったのです。確証は無いけど、多分素性も正しいものだろう・・という意識でやってましたから。
「富士箱根」は一つの歴史的なマテリアルです。他のものと比べても、発売されたものと、少し違いが有るのです。この時は印刷局でグラビア印刷が出来なくて、実際の印刷は大日本印刷(株)でやってます。「プラハ・・」はグラビア用の原版で、スクリーン線は180線で共通ですが、多分内閣印刷局で刷られてます。だから、これこそが、日本で最初の「グラビア印刷の切手」かも。発売されたものとの細かい違いは、いずれ、「国立公園」のコレクションが展示される時に、タイトルページで表現してくれるでしょう。でも、残念ながら、今年のJAPEXではないのですが。

38回フロア Lot 3523(1.91MB)