未納還付をアナライズ

スペースに限りが無いので、諄いほどにしっかりと書いて行きましょう。カテゴリー分けから入ります。因みに料金は第1種2銭を前提として書きますので、3銭時代は機械的に置き換えて読んでください。

「法律の条文」では、郵便条例の21条の後半と22条に分かれます。条文は前回書きました。このパートはスタートに書くとちょっと複雑なので、最後に書くことにします。

「料金」としては、明治16年1月1日~32年3月31日が第1種2銭、32年4月1日~33年8月31日が3銭です。特殊要因として、菊切手=2銭・4銭・10銭の発行が32年1月1日で、この日から32年3月31日までの菊使用は特筆される珍品ですが、郵便史の観点で見れば、ステータスは高くないのです。菊切手のコレクションとして生きて来るのです。

「宛先」は管内と管外に分かれます。料金は同じなのですが、未納・不足便の場合には顕著な差が出るのです。京都郵便電信局の場合ですが、支局として今出川がM25年3月16日から、五条橋がM19年4月26日~25年11月15日、25年11月16日から五条に局名変更されています。丸一で五条橋の「橋削り」の五条という物も有るのですが、局名変更の日付けとはリンクしていないと思えます。支局としての開設されていた事実が会計上で重大な意味を持つのです。管内のポイントは、還付郵便物の料金処理を、自己勘定で出来ることです。支局も同じ会計です。宛地で料金を徴収して配達しても、拒否又は不在戻しで還付になって、料金を差出人から徴収しても、郵便局の会計とすれば、仕事を完遂できたことになるのです。那須さんの未納エンタで言えば、引き受け局の京都の担当部署で、捨印を押して、配達担当の部署で2銭料金の未納の倍額を貼って、未納印で抹消します。この時点では、21条の前半部の、未納郵便物を相手が受け取ることを前提にしています。受け取り拒否で21条の後半部に移り、差出人に還付して3倍を徴収するのですが、局のお財布は一緒なので、未納の消印を押した、2銭x2枚の料金は生きているので、追加の2銭を貼って、未納で抹消、合計6銭を那須さんから貰えば良いのです。制度に則った扱いです。管外の場合は違います。未納郵便物の料金徴収は、宛地で行います。切手を貼るのは宛地局です。京都局の捨印が有る未納エンタがやって来れば、配達局で2銭x2枚を貼って、未納で消印するのです。受取人が受け取ってくれれば21条前半でケリですが、拒否の場合が困るのです。差出局の京都に戻すのですが、配達局で貼った4銭切手の支払いが為されていないのです。差出局に戻しても、賠償はしてくれません。結論を書いてしまえば、配達局の損金になってしまうのです。消印を押してあるので、管轄をまたいでしまえば、有価証券=郵税の効果はないのです。受け取り拒否をされたなら、差出局に返すのですが、未納で消した切手代は、誰からも貰えずに、料金として死んでしまっているのです。涙を呑んで此畜生と筆でを書くのです。配達局の損金になるのです。筆の料金は、本来の料金の2倍に限られます。那須さんの元に戻るのですが、その際には、21条後半の受け取り拒否の3倍のペナルティーが新たに課されます。2銭x3=6銭に未納消しです。筆の4銭は那須さんから貰えません。よく聞く話ですが、受取拒否だから、筆では無いのです。「管外宛の還付便」だからなのです。21条後半の拒否でも22条の不在での配達不能戻しでも会計勘定が異なる「管外宛」だから筆なのです。これは次に書くことと関連して来ます。

「配達の手法」は2種類に分かれます。一般的には直配達です。未納分の2倍を貼っておいて、未納で消して宛先に持って行き、21条前半の倍額を受取人から貰うのが前提です。拒否されれば、21条後半の3倍を差出人から貰うのですが、管内便なら差出人が最終の支払いを拒まない限り、損金にはなりません。それをやれば、その後に響くので、那須さんは3倍払いを承知でやったと思います。未納で請求書を送り、郵便局員が対面で未納料金を徴収するので、書留便を無料で出せることになるのです。えげつないけれど、非常にクレバーなやり方です。郵便局も、それへの対応策を取りました。那須さん対策では無いのでしょうが、試配達をやったのです。未納(不足も)郵便物が来たならば、最初は切手を貼らずに、2倍の罰金を払って受け取るか否かを前もって問うたのです。「徴税注意」等の付箋ではっきりわかります。お尋ねをしてから、了承なら4銭を貼って未納を押して、倍額徴収で配達し、拒否なら差出人に戻しての3倍徴収をやるのです。郵便局は損をしないで済むのです。管内の場合は、問題ないのですが、管外ならば大いに会計に響きます。管外宛でも試配達なら、切手を貼ってないので、そのままで差出局に戻せます。つまり、管外宛の受け取り拒否でも、試配達をやったなら筆発生しないのです。筆=受け取り拒否でないことは、このことで分かるでしょう。実例が非常に少ないし、筆に比して地味なのですが、覚えておいて損は有りません。リーフに説明を書ける絶好のネタなのです。

「条文」の説明に入ります。21条の後半部は受け取り拒否での規定です。単純に3倍徴収です。22条は拒否で無い還付=転居先不明等での差出人戻しです。罰金は当初の料金の2倍です。切手を貼った郵便物の還付はよくあるのですが、未納便のそれは滅多に起こりません。那須さんエンタを除いてですが。そして那須さんの場合でも、21条後半の拒否よりは格段に少ないのです。管内のそれは何の問題は有りません。2倍徴収でケリです。そろばん勘定で言えば、試配達の必要性は有りません。受取人か差出人の何れかから4銭を取れますから、郵便局とすれば美味しい仕事です。管外の場合は、試配達をやっていれば、那須さん戻しで4銭徴収ですが、直配達の場合は、4銭を貼って配達局で未納消しで配達未完了での戻しになるので、このケースでも筆が為されるのです。郵便局的には此畜生です。受け取り拒否でないのに筆で損金の計上になるのです。

4項目でそれぞれ2区分なので、2の4乗=2x2x2x2=16パターンに分かれます。「2銭と3銭」「管内と管外」「直配と試配」「21条と22条」の組み合わせです。追加して、未納印に局名が入るのが明治27年2月21日です。管内支局の確認と直配と試配の区別の際に有効なデータになるのです。次からは、実例をお見せいたしましょう。合わせて手元にある数も書いて見ます。

理屈上の計算式では、2の4乗の16ですが、実際はそれは無理、だけど◎時代を独立させ、不足消しを局名無しと局名入りに分け、付箋のバラエティーを加えれば、結構な数になりました。エンタの情報では、直配達と試配達の区別が無理な物も有るのですが、殆どの物は理屈がきっちり立つのです。次回からは、画像を添えて解説していきたいと思います。