2013年4月9日(火)

『かぐや姫と大臣=おとど』

スイスのオークションで落札した商品の受け取りに、通関のトラブルで、矢鱈と時間を食ってしまいました。切手の通関なら、法的にも絶対の自信があるし、また差出人にも、変に気を廻した過少申告でなく、正規の数字のCIFで申告、かつ原産国表示を日本にしてくれるように要求し、正にその通りにやってくれていた荷物でした。コマーシャル・インヴォイスは荷物に付いています。あとは、原産国が日本であることを証明すれば、免税通関が出来るのです。オークションのカタログにも、全てのロットのタイトルにJAPANの表示が有りました。

3 月22日にTNTから連絡を貰い、直ぐにJAPANESESTAMPの証明が出来る、オークション誌のコピーを送り、0.5日で通関、次の日には配達の段取りでした。でも、最終的に受け取ったのは4月3日、ミスは全くないのですが、予想外に梃子摺ってしまいました。後で聞いて判ったことが色々あるのですが、今回の荷物に関しては、運が良いのか悪いのか、「消費税徴収・課税強化月間」の大当たりの荷物に指定され、厳格な手続きを東京税関の業務部統括部門がやったのです。おかげで、久しぶりに、相談官システムを使い、税関の統括官とも直接話ができ、今後のスムース通関のやり方が判りました。改めて法令を熟読、今までの数百回の税関・通関(乙仲)業者との交渉・会話を反芻したのです。

ターニングポイントが、消費税が導入された、1989年4月1日、この日以前は、全ての郵便切手の輸入には税金は一切掛かりません。税番一覧=HS条約で、郵便切手は消費税導入以前は99.07=収集品=関税ゼロだったと思います。消費税制度が出来て、税番は一般的には97.04=本邦にて効力を持たない郵便切手は、関税はゼロですが、消費税が3%掛かるようになったのです。97.06=100年経過の骨董品、49.07=効力を有する有価証券は、関税も消費税も掛からないのですが、その利便を得るには、相当にキツイ証明書類が必要です。97.06は博物館の学術品、49.07は枚数と額面明記の全部のインヴェントリーリストとか、実際問題無理なのです。一括での97.04の通関が便利です。

だから、消費税導入当初は運が良ければ無税通関、普通は極当たり前の如く、消費税3%を払っていました。当時は郵便で送られることが多かったのですが、それでも手続きが必要で、電話するより行く方が早いこともあり、大阪税関の外郵出張所が大阪中央郵便局の中なので、毎週のように通っていました。税関職員に立ち会って現物を見ながら、直に話をする方が早いのです。この時に、たまたま見た掲示が、「消費税導入に伴う輸入貨物に関わる消費税相談コーナー」でした。大蔵省=本庁の課長さんもいたし、対応してくれた相談官が女性で有田さんでした。雑談でしたが、そこで聞いたのが、『日本の郵便切手なら、一切消費税は掛かりません』、でも既に払ってしまったのは取り戻せませんけどという言葉。びっくり仰天、この時以前は予想だにしていませんでした。当然、根拠法令を聞きます。

関税定率法14条「無条件免税」次に掲げる貨物で輸入されるものについては、政令で定めるところにより、その関税を免除する。「切手は関税はゼロ・消費税が免税です。」10号 本邦から輸出された貨物で、その輸出の許可の際の性質、及び形状が変わっていない物。カバーの状態で外国に行ったものとか、「本邦」の定義が、琉球・満州・南方占領地はとか、スピロの手彫偽物、アジアで印刷された?ヤマセミ80円の偽物・・とか重箱の隅を突けば色々NGの可能性も有るのですが、税関にはその種の知識は有りません。一部は外国切手として按分比例で消費税を払う場合もありました。それには異存は有りません。ただ、たまに問題になるのが、輸出許可書の提示です。関税定率法施行令 (再輸入免税貨物の輸入の手続)第16条が根拠です。 関税定率法第14条第10号・・・の規定により関税の免除を受けようとする者は、その免除を受けようとする貨物の輸入申告の際に・・当該貨物の輸出の許可書を・・・税関長に提示しなければならない。『ただし、当該貨物がこれらの規定に該当することが他の資料に基づき明らかであるときは・・・この限りでない。』実際問題として、オークションで買うのは、直近に送り出したものの取り戻しでなく、かなり以前に輸出された切手の再輸入なので、輸出の際の資料の提示は不可能です。ただ、日本製であることの証明が出来れば、日本切手は海外で製造された物ではない故、過去に輸出されたと看做せるので、『この限りでない。』の規定が生きるのです。例外規定も法的には本則と同じ力を持ちます。法14条10号も令16条も、考え方としては、消費税の二重課税を免除するということだと思います。製造年や輸出年の証明は必要ありません。消費税制度の以前・以後を区別せずに、ある種性善説を採っています。輸出された日本製品は、国内で製造・流通時に消費税が支払い済みと見做されるのです。郵便局扱いの荷物は、税関の外郵が扱います。問題は全く有りません。日本語で話が出来るのです。でも、UPS・ヤマト、NIPPONEXPRESS等とは当時から何度も揉めました。黙っていては、面倒な免税扱いは絶対にやりません。ヤマトは、社のポリシーでそんな手間隙が掛かる扱いは、一切しないと言い放っています。だから、以前はこの2社は絶対に使うなと全てのオークションハウスに連絡をしていました。近年はこの2社は淘汰され、使われることは無くなって、FedEX、DHL、OCS、TNTのケースが増えています。

日本の税関は、外郵もそれ以外も同じ法令で動きます。私の知識に法的な紛れはないし、この説明で勝率100%なので、税関の担当者と直接話せれば問題は有りません。郵便局経由のEMSや小包は、いつも同じ外郵出張所が扱うので、こちらも日本郵便の通関士の名前も覚えているほどで話は簡単に通ります。ところが、FedEX・DHL・TNTが拙いのです。税関との雑談の中で出た話ですが、国際貨物業者は、無条件免税とかの手間が掛かる手続きはやりたがらない、だから税関によくクレームが付くというのです。実際、私のTNTでも、免税手続きを取らずに、消費税の5%を払うのなら、即通関できますよという言葉が有りました。私の場合は、消費税は本則課税業者なので、払っても損はないのです。確定申告で支払い済みに出来るので、+-はゼロなのです。でも、銭金の問題でなく、法手続きに則した扱いに拘ってみたのです。ちょっと前の、ドイツのゲルトナーのセールの送品では、日本にはSALで送られて来たので、通関は東京税関の川崎外郵出張所、何故か、日本切手なのに課税されそうだという、HELPの電話が連続で3件ありました。私の荷物は、川崎や関空なら、名前が登録されていて、顔パスで通るので、私の通関貨物番号を教えて同じ相手からの同じ商品という理由で、同じ扱いをリクエストして、スルー出来たと思います。ルール的には外郵も国際貨物も根拠法令は同じです。だから私の思考パターンではTNTやFedEXに対しても妥協は出来ないのです。少し前に法律が変わって、金額20万円以上なら、必ず受取人に問合せが来るようになったのですが、それ以下なら、受取人に荷物の内容を確認せずに、簡易通関で消費税を掛けてくるケースも有るのです。郵便局なら、税金を払わなければ異議申し立てが可能です。ストレス無く異議が通ります。でも立替払い済みのFedEXの場合は、それが出来ないので、こちらが泣くか、相手が負担するかになるのです。だから、何度もやり取りをした結果、JAPANESESTAMPSの表示が有って、ミスをすればFedEX持ち、JAPANの記載がなければこちら持ちで決めました。あくまで大人の対応の、私と関空のFedEXとのローカルルールです。

実際のTNTの荷物に戻ります。担当の通関士からのFaxで以前と同じ書類を出して下さいと有りました。無条件免税の実績もあるのです。だから、オークション誌のコピーと、現物確認の為の開封調査を了解する旨、書きました。開封調査は、原則、荷受人の承諾が要るのです。もっとも事前通知なき開封も、希ではないので、その詳細のルールは分かりません。これでケリのつもりが、ヘンテコな要求が入りました。TNTはメッセンジャーで、要求を出すのは税関の担当官です。オークション誌の図版の物が切手であることを証明せよ。日本切手が日本製であることを証明せよ。日本切手の発行者は何物かを示せ・・まだ幾つか有りました。それに、こちらが要求した開封検査での確認をTNTプラス税関が拒否したのです。高価な小さい物なので、紛失の恐れがあるという理由でです。

かぐや姫が竹取のおとど(大臣)に出した、実行不可能な無理難題の風情です。特に、最初に対応した通関士が、有税通関なら、直ぐに通すと言った暴言が頭に有って、TNTが悪意で悪戯をしていると受け取ったのです。電話で「郵便切手」を説明しても、「えきていりょう?」「ていしんしょう?」・・・民営化しての日本郵便KK、根拠法令は郵便規則、郵便条例、旧・新郵便法、それにUPU条約・・???。相手の意図は分かりませんが、物での証明手法として、切手商組合カタログ、ウィキぺディアの「郵便切手」、ヤフー百科事典の「切手」=執筆者・天野安治をレター・パックで送りました。

時間の浪費が嫌なので、このタイミングで、伝家の宝刀を抜くのです。東京税関の相談官システムです。税関は、トラブルのクレームを直接の部署に持ち込まれるのを嫌がります。だから、全ての税関に相談官を一人配置します。まず、電話は繋がりませんが。ただ、東京税関だけは4~5人で対応してくれます。身分は税関職員ですが、こちらが出す要求には的確に返事をくれるのです。乙仲が訳の分からないことを言えば、相談官を入れましょう、で大体話は終わります。だから、実際に依頼したのは今回が2回目の経験です。ポイントを絞っての問合せなので、税関の担当部署=業務部統括(無条件免税の手続き)とTNTに確認を取ってくれました。「おとど」の要求は税関の女性職員が出したとか、特別に厳格な証明書類の提示要求の貨物なので、物証要求での原則どおりに動いたという話です。それに、TNTとか、FedEXの場合、専任の担当官が付くので、受取人に書面を要求したりで、少しでも、流れが詰まると、お互いの勤務時間のズレで思わぬ時間が掛かるとの事です。でも、相談官さんが、税関の担当部門に繋いでくれて話ができ、そちらからTNTへプッシュして、当初の暴言通関士を外して、流れ出すとすんなりでした。

今度のことも有って、調べたのですが、事前教示に関する照会書・税関様式C第1000号というのが有るのです。実際に通関に掛かる貨物の関税率表の所属区分を書面で教えてもらえます。架空の貨物はダメ、手続きに入っている物はダメ、でも、私がその気になれば、近い将来輸入する、郵便切手類の内、南方切手や満州切手を差出人と調整して、正面切って特定して、HS条約の無無条件免税が利くかどうか聞いてみようと思います。照会書の効力は、該当貨物だけかも知れませんが、登録番号が貰えて、3年間は有効、全ての税関に通用するのです。もっとスマートなやり方は、全ての通関貨物には、9桁の申告番号が付いています。頭の3桁は国名、108はスイス、219はドイツです。この実績も3年は保存されているので、今回のケースだって、過去の通関実績を示せば、スムースに行ったかも知れません。品目番号97.04、関税定率法を使って、実際の減免は輸徴法第13条弟1項第1号です。同じ相手からの貨物でなくても、同じ性質の貨物の輸入通関なので、少なくとも3年間は免税通関の申告番号を示せば、どこの税関でも通るような気がします。荷主も荷受人も誰であっても良いはずです。知らぬは恥、知って為さぬは罪なのです。的確な情報を出してくれれば有効な手段をアドバイス出来ると思います。お困りの方、ご連絡いただければ、私の通関の実績番号、幾つでもお教えいたします。