2013年3月8日(金)
『ハリケーン・サンディー』
最近、必要に迫られてですが、新しいビジネスを始めました。広告を出す程までは完成度が高くないし、ある意味、肝要部分は人任せで、最初から最後まで私の裁量と責任で完遂できないので、手探り状態でのスタートです。アイデアとしては悪くはないと思います。
弊社の顧客がお持ちの外国切手のコレクションを、海外のオークションハウスに出品しての現金化です。ビジネス的な手間とコストを考えて一定のボリュームが必要です。最低でもコレクションに使った金額ベースで1000万円、売れて数万ドル、出来れば国際展への出品作品か、せめてJAPEX・全日展での金銀賞以上のコレクションが対象です。原則としてクラシック、郵便史として評価の高いカバーは○、トピカルやゼネラルの切手は×です。既に、口コミでの依頼を受けて、5人ほどのその類の物を扱って、すべてお支払いまで完了。幾つかの予想外の軋轢もクリアして、一応の結論も得ています。US$が360円の時に買ったコレクションなら、為替レートの変化や、市場の実態を考えれば、外国切手の場合、中国以外は、数分の1の戻りでやむを得ません。日本国内では売る場所すらないでしょう。
弊社を始め、日本切手を日本のオークションハウスで売るのとは、全く基準が違います。フォークランドのペンギンとか、オーストリアのWIPAはどこでも、1点で出せるのですが、数百ドルレベルの単片なら、何枚有っても1ロット、逆に言えば、アルバムに整理したコレクションが有ったとして、数点をシングルロットで出して、残りは一括みたいな売り方が基準です。香港で売られた「水原明窓」の旧韓国コレクションのような、ネームドセールなら、シングルロット+リーフ1枚売りも有り得ますが、それは非常にレアなケースです。有力なフロアセールを運営している会社の場合、金額的には平均して、1ロットで1000ドルぐらいのボリュームでの扱いです。各国の代表的なオークションハウスは皆共通です。手間隙かけて、懇切丁寧にうす造りをやっている、日本が異常だし、顧客にサービスをしすぎなのです。日本のオークションの基準は、国際的には全く通用しないビジネスモデルです。一般的なコレクターが、コレクションの不用品、しかも数千円=数十ドルの重品を売れるオークションなど、日本以外にはないのです。オークションハウスの献身的な努力の結果、オークションのマーケットが辛うじて保たれているのです。お分かりでしょうか。
今回の仕事を始めるに当たって、データを取る意味もあり、また最初に依頼されたマテリアルがヨーロッパと英領が中心の、型価数千ドルがゴロゴロという、グレードも高かったので、今までに私が長い付き合いのある各国の代表的な会社に出品してみました。送付は原則EMSで、品物を明示しての真っ正直なデクレアでやりました。相手はコレクションの母体国としての、アメリカ・イギリス・フランス・スイス・ドイツ・オランダ・スウェーデン・カナダ・香港です。やってみてわかったことなのですが、ユーロ圏の諸国は、日本=EU域外から、出品するのは現実的ではありません。ガットが発展したWTOは条約で、各国共に当然批准もしているので、関税定率法の概念は各国にあり、原産国商品の再輸入免税とかになるはずですが、慎重を期して、瑕疵の無いきっちりした書類を出して、その旨を申告しても、フランス・スイス・オランダで消費税が掛かりました。更にフランスの場合、EU域外からのオークションへの出品には6.2%の税金もオンされるのです。
物流に関しても、届くまではイライラがつのります。EMSで送っても、通関に1ヶ月かかることもあるし、ドイツの場合、Webで配達状況の検索を掛けても、100%の確率で、「ご不在の為持ち帰り」からまったく動きません。別件も含めて、郵政経由の配達完了のメールは一度も貰っていません。日本郵便のフリーダイヤルは全く役立たずですが、大阪国際局が非常に親切に対応して、的確な情報をくれるのです。ドイツの場合、国際税関=フランクフルトに入って、各地方税関に流れます。この時点で独郵政から民間委託になるので、Webの問合せには一切反応がでないのです。実際は配達されているのですが、いずれのケースでも「ご不在・持ち戻り」の表示しかでないそうです。日本郵政のせいではないのですが、ユーザーとしては不快感しか残りません。だから、Web頼りでなく、直接相手に聞くしかありません。着いた?
マテリアルに対する評価という意味でも、ハードルはかなり高いので、我田引水的な、安易な気持ちならお断りいたします。自分が幾らで買ったというのは、何の意味も有りません。幾らで売りたいという希望も聞けません。それに拘るのなら、後生大事に抱えて、腐らせて下さい。オークションというマーケットに売りに出した場合は、そこで付いた値段に納得するしかありません。だから、大金を投じ、年月を掛けて魂のこもったコレクションを作った方ご本人より、その方から買い取ったディーラーの方のご依頼が有り難いのです。日本物や、アジア関連は、弊社でも魔法の粉を塗せるテクニックも使えます。日本国内で何とかお金に変わります。でも、外国切手は物が溢れている、世界の市場でのディールなので、全てにおいて甘くないのです。お知り合いに売れるとか、他の手法が有るならば、是非そうして下さい。海外のオークションハウスへの出品取次ぎは、過剰な期待に応えられるビジネスでは有りません。他に手段がなければ、お手伝いいたしましょうというスタンスです。10分の一になってけしからんとクレームを付けられても、何らの対応手段は持ちません。また、一度私の手を離れてしまえば、キャンセルや修正も利きません。このやり方では、結果に関しては、オークションで付いた値段だからそれが神様の数字だと納得してもらわねばなりません。
実際に終わった仕事なのですが、スイスのクラシックのコレクション、バーゼルの鳩や、チューリッヒの4・6も有って、ツームステインの評価で10万フラン=邦貨で1000万円位の、ゼネラルのコレクションでした。状態が混合ですが、使った金額は数百万円のはずです。アルバム1冊をスイスのオークションハウスに送って、掲載されたロット数は5、参考値合計は3000スイスフランでした。100%売り切るオークションハウスなので、見え見えの安い参考値になるのです。フロアでは結構伸びて、落札額で約100万円、当方の手数料は10%で、先方に日本円で支払って、商売完了になっています。
私の仕事は、物を相手に繋ぐだけ、それなりの経験を積んで、ストレスの少ないパターンを作りました。出品先は国ごとに細かく分けるのでなく、全世界のクラシックや高級品を幅広く、隔月でフロアオークションをやっている、アメリカのオークションハウスに絞ります。事前の交渉成立で送品は原則、FedEXの着払いでドキュメント扱いで送って、相手が掛けているロイズの保険で担保してくれます。発送料は負担ゼロです。最低値、ロッティングは一切一任、希望は全くリクエストできません。原則売り切りの安い値段の参考値を付けて、アメリカのオークションハウスの基本的な決め事で、残った物は参考値の半値で買ってもらう。返品を原則ゼロにするのです。普通の結果で、落札率は90%を超えており、10キロのカートン1箱1ロットという手抜きでなく、それなりに分割してくれています。平均の落札額は@1000ドルなので、双方にとってメリットのあるディールができています。小さいボリュームでは動けないのですが、何百万円かになるコレクションなら、何時でもお手伝いはいたします。一般的に言って、お預かりして、6ヶ月ぐらいで日本円でお支払いしています。当方の手数料は成功報酬10%の差引きなので、現金化できればOKだと納得して頂ければ、手間もストレスも、こちらがお引受いたします。
海外取引なので、全く予想だに出来ないトラブルも起こります。実は、かなりの大きいコレクションを、アメリカのオークションハウスで売って、昨年の11月始めに、10万ドル以上の小切手を受け取ったのです。本来の依頼者にはチェックを貰った時点で、TTBで円転して精算してしまいます。実務上はドル→円の手数料を節約するのに、円転でなく、私のアメリカの銀行のドルの口座に入れるのですが、航空便の書留で11月頭に送った郵便が、12月末で届いていないのです。心配になって、通訳付で電話したり、必死で調べて判明したのは、「ハリケーン・サンディー」のせい。ジョン・F経由の郵便がベタ遅れ、こちらは何の対応策も取れません。ただ只管待つしかない。事故で紛失ならば、再発行も要求出来るし、6ヶ月の有効期限が切れれば同じ措置もとれるのですが、直ぐにはどうにもなりません。結果としては、本年1月頭に書留郵便が届いたことが確認できて、やっとクリア。相手がアメリカの場合、郵便局も銀行も極めてルーズだし、日本の行政にも駆け込めない、全て自分の自己責任で解決しないといけません。日本国内と異なり、他人様はこっちの期待通りには結果を出してはくれません。日本では有り得ない、こんなストレスは大変なものなのです。一般の素人さんでは無理でしょう。
これ程のケースは想定外、宝くじが当たるよりは珍しいかも。でも、ニュースを慎重に見ていれば、小切手の送付に郵便を使わなかったかも知れません。FedEXなら、ジョン・Fでなく、メンフィスへ専用機で入るので、このリスクは防げたでしょう。プロとしてはちょっと後悔、でも、海外との取引には、これ以上のリスクなど、幾らでも潜在しているのです。トラブルをネタにしての、サービスの宣伝は気が引けるのですが、一般の方が的確には動きにくいこのビジネス、結構需要があるかも知れません。お心当たりの方は、まずご相談して下さい。Yes・Noをはっきりと説明いたします。甘い期待は絶対にご法度ですが。