2012年11月27日(火)
『JPSは切手会』
今回のFDCの大家のコレクションですが、時代を区切っての蒐集のポリシーがはっきり見えて来ます。境目が昭和23年9月9日の3回国体・水泳、渡辺版のNo1が出てからは、これに特化して蒐集されています。チェックはしてないのですが、渡辺は、恐らく限りなく完集です。その後は肉筆にも力を入れて、「ミヤコ」とかの、限定版の上顧客だったのでしょう。
渡辺の3国水泳は、ダイビングカシェが普通ですが、少女の浮き輪カシェも渡辺です。通常切手のNo1の数字1.5円+3.8円の孔版カシェも、はねつきのコロタイプ、44年年賀・とりの「鷹ぽっぽ」も有りました。渡辺以外でも、小型シートがほぼ完集、「制定」は実逓で極美だし、うなぎも完貼、京都は消印違い、犬山は完シートの渡辺、憲法は丸ごとではないのですが、切り抜きで普通シートのそれと混貼の外信・・カシェや日付でも、まだまだ楽しめるものが一杯です。徐々にオークションでご案内していきます。
渡辺版が発行される前は、基本的にカシェ違いというか、白封的なものも含めて、版元違いで何でも集めていました。この膨大な集積物を俯瞰して、初めて見えて来たこともあり、疑問が氷解し、目から鱗が落ちました。昭和23年以前のFDCで、この人がお持ちでないのは、存在しないか、有っても殆どマーケットに出て来ていないものだけなのだと考えて良いでしょう。収集品がFDCの歴史を逆に示してくれるのです。
私はオークションの記事編集の際に、必ず版元を書くのですが、1997年版のFDCカタログ(それ以前の物も当然)をベースにすれば、強烈な違和感が起きるのです。昔は活字の記載を信じていましたが、昨今は自分の感覚を重視しています。それは戦後の記念切手・創始75年~競馬法までの版元の分類です。
FDCカタログの図版の内、司法・2国・社会事業・全国緑化・教育復興・競馬法、それと図版には出ていない鉄道75年S/Sの版元が、「JPS」になっており、評価欄にもすべてJPS版が採録されていることが、マーケットの理屈に合わないのです。落ち着いた木版カシェで、ロゴにはJ・P・S・の文字は有っても、これらは明らかに一連の物で、その版元は切手会でしか有り得ないと思ったのです。これらをJPS=日本郵趣協会版とするならば、切手会版が世の中から、全て消えてしまいます。
JPS版は、憲法(22.5.3)がNo1、民間貿易は凹版の立派な物が有り、小型シートで雑な大阪展とか、ホンの希に見るものを除けば、本格的な出現は、4国冬~になります。今回のコレクションにも正にその通りで、そしてそれ以外は皆無だったのです。
付随するデータで言えば、切手会版のFDCでは、昭和10年前半からの、昭和切手、記念切手、国立公園の桜と文字の簡易カシェ封の流れが、戦後も少し続きました。3次昭和10銭の富士桜は例外ですが、3次昭和50銭、1次新昭和5円、2次新昭和10円横、5円、創始75年4完貼の、鳩と桜と縦書きJPSの文字封筒もJapanPostageStampAssociationと見て不自然ではないし、日本郵趣協会とすると、存在年代やカシェのポリシーで理屈に合わなくなるのです。
切手会の憲法は朝陽会の有名な凹版で、郵趣協会も別にあり、民間貿易の文字はJPSAで木版(郵趣協会は凹版で別のものがある)。この2点が切手会と郵趣協会が共存と確定しているので、司法=JPSA、鉄道S/S=JPS、2回国体=JPS、社会事業=PSJ、全国緑化=PSJ、教育復興=JSP、競馬法=英語無しと、ギャグの如く3文字(4文字)を並べ替えているもの全てが一つのグループで括れて、そしてそれは、切手会なのです。何となくは感じていた事ですが、今回の大コレクションを分析して、この推論が確信に変わりました。でも、憲法、民間貿易を除けば、競馬法までのJPS(郵趣協会)版は少ないと思います。直ぐに頭に浮かんで来ないのです。有るか無いかもそうですし、値段に繋がるかは別ですが、密に蒐集されている人がいれば、大いに尊敬いたします。