16000万の配偶者控除

昨年の4月に亡くなられた方のご遺族からの突然のお電話でした。相続税の申告に入っていて、著名な葬儀屋さんから紹介された税理士さんにお願いしていて、切手のコレクションの話をしたら、専門家に評価を依頼するように言われたとの事でした。お名前に覚えが有って、ここ数年に亘って毎回数十万円レベルで未使用切手を弊社のメールオークションとバザールで買ってくれていた人でした。リタイアした後に切手屋でもやるつもりみたいな買いっぷりでした。制定と年賀富士山小型シート、雁と見返りが5シート以上有りました。ご自分の買いたい値段が決まっていて、それ以下ならダブっても平気で買ってくれていたのでしょう。見事な位の未使用切手のストックが残っていたのです。この品揃えでは金額は大きくても、オークションでは高く売るのは無理なのです。往復の手数料が重いのです。即金で買える数字を出したら、速攻でOKになりました。もしかしたら、TVにCMを出している買い取り屋さんも来ていたような雰囲気でした。この人たちには負ける筈は有りません。

相続のデッドラインに少し余裕が有ったので、アドバイスしたのです。税理士さんは切手を含めての相続を勧めています。被相続財産としの評価を望まれています。相続人は奥様と娘さんです。プライベートの資産状況は聞けませんが、あくまで一般論として配偶者控除を使って、奥様が相続するように話しました。配偶者控除で1.6億円又は50%まで無税になるからです。でも、遺産分割協議書は既に出来上がっていて、相続は100%娘さんになっていたのです。剰え不動産は登記まで完了です。聞けば、要介護認定を受けていて、法的な行為は出来ないということでした。私が話したところ問題は無さそうだし、相続に於いての係争の恐れも無く、署名・捺印さえできれば問題なく配偶者控除利用で税金が抑えられると見えたのにです。不動産の方は外野は口出しできませんが、せめて切手は奥様の口座に払いたかったのですが叶いませんでした。こちらとしては何方に払っても損得には影響しないのですが、出来るだけ手取りが多く残る様にお手伝いしたいのです。このケースでは基礎控除が4200万、配偶者控除不使用なのでプラスは有りません。不動産と金融資産で無税の基礎控除の数字は超えるので、切手の分に関しても否応なしに一定率の相続税が発生してしまいます。娘さん曰く、自分は一切嘘が付けない性格なので、税理士さんが言うとおりにやりたいとの事でした。だから、コレクションをピックアップする直前に、下見で評価した約定金額を銀行口座に振込んで、売買契約書を2部、収入印紙貼付で作り、思い出の為にご自宅に残したい物の精通者評価価格一覧表を添えて、これで申告して下さいにしたのです。

完全に終わったつもりだったのですが、2日前に電話を貰いました。税理士さんが故人の切手の売買での差益の申告が必要だと言って来ているとのことでした。通帳の数字を見れば、それなりに大きい数字なので、念の為のお問い合わせだと思います。ルールを娘さんに説明して、税理士さんに繋いで貰うのが筋でしょうが、説明能力に危惧を感じたのです。だから私が説明するからと言ってこちらに電話を貰いました。ポイントを絞らないといけません。今更、配偶者控除云々は言いません。お問い合わせの趣旨を聞きました。相続ですか、譲渡ですかです。譲渡での差益の申告との返事なので、ここらはソラで回答が出来るのです。真面目にレクチャーしましたよ。切手コレクションの売却は譲渡所得だけれど、不動産とは異なります。書画骨董と同じです。一点又は一組で30万円以下の物は生活用資産と見なされて、一切が申告対象外です。今回のケースでは、購入時の弊社のオークションのカタログからして1点で30万円超の物はなく、普通の未使用切手なので値上がりもしていません。だからトータルで大きい金額になっていても、譲渡所得の申告は不要です。この説明で先方も納得してくれました。本来なら、所得原価と必要経費を差し引いたり、損益通算したり、年間の譲渡所得の基礎控除50万を使うとかもするのですが、この人の場合は、30万条項一発で解決できたのです。税務署が聞いて来れば、私が対応致します。

でも、どう考えても、切手だけでなく、不動産の相続で配偶者控除を一切使わない理由が見えてこないのです。お元気そうだったし、普通に話せたし、署名・捺印は問題なく出来たのにです。葬儀屋さん紹介の税理士さんで無く、初っ端から私に声を掛けてくれれば幾らでもお手伝いできたかなと思うのです。