オークションが終わってすぐに大箱を受け取りました。ご連絡いただいた物は、ほぼ想像通りに入っていました。四葉のクローバーはドンピシャな表現だと思います。気分よく仕事ができるのです。大きいダンボールが大分スペースが空いていたので、その詰め物としてストックブックが1冊、手彫の本物・偽物がごちゃ混ぜの未整理で入っていました。この作業は何らの手間も掛かりません。大好きなテーマですから。ボリューム的にはFDCがメインです。これだけでも3~4回に分けて出すと思います。頂いたメモの【川瀬巴水全点含む】が気になっていたのです。正しければ、超目玉が1点、鵜飼100円です。大昔に扱ったことが有って、知る人ぞ知るFDCコレクターで、瀬戸口版を極めた方、高崎正吉さんが滅茶苦茶な値段で買ってくれた事が強烈に記憶に残っているのです。この方は突然消えて、FDC界の後輩の人たちとも音信不通になっているようです。鵜飼100円は私が希少性を意識せずにアメリカのオークションで落とした物だと思います。遠い昔のお話です。この件は、秋吉誠二郎さんの『版画家 川瀬巴水と渡辺版初日カバー』の本に、日比茂春さんがちょっとだけ書かれています。巴水の渡辺版としてもかなり特殊なので、サブナンバー扱いだし、これは無くても止むを得ないのです。
渡辺版で、どれが巴水かを調べるには誰もが上記の秋吉さんの著作を使っています。大元の資料は、毎日新聞社の『川瀬巴水木版画集』だそうです。データとして洩れている物も伝手をたどって検証されており非常に正確な資料だと思います。でも、オークショニアとして、時たま引っ掛かる事案にぶつかります。今回の方もそうですが、それなりにFDCに通じた方のご出品で、秋吉本に採録されていない物に対して、【川瀬巴水カシェ】のコメント付きの物がやってくるのです。有り得ない素っ頓狂な物は冷たく無視しますが、私が見ても、もしかしてと思えるものが2点有ります。長野平和博と4回国体水泳です。時期的には巴水で矛盾しませんし、カシェの形態と巴水ブルーの色使いからして秋吉さんの本が無ければ、誰もが巴水だと思うでしょう。著作の上梓は2002年でしたが、日を置かずに秋吉さんに聞いた覚えが有るのです。長野平和と4国水泳の巴水の可能性についてです。即座に否定されましたが、根拠は巴水の物だとする証拠がないからだという答えだったと思います。物事の証明手法で、存在の事実を示せば説得力を持ちますが、無い事を根拠にしての証明は難しいのです。
渡辺・巴水の場合は、有る事で証明できる可能性が有るのです。【ガリ刷りの会報・或は英文のMEMO】です。又聞きなのですが、国内頒布には付いていないのですが、海外へ送った物には同封されていたそうなのです。これを一生懸命追いかけているコレクターがいて、私も興味が有るので、当然の如く長野と4国水泳のデータを聞いたのですが、見つかったとの報には接していないのです。ガリ刷りぺーパーには、恐らくは巴水とは限らないのですが、カシェの作家の名前が入っている筈です。もし巴水の名前が有れば、秋吉さんは卒倒するかも知れませんが、快く事実として認めてくれるでしょう。20年来の疑問が解決するやも知れません。見つけた方は是非ご報告お願い致します。
別件で、カシェのロゴで多くの人が誤解している事実が有るのです。2回国体と鉄道75年小型シートの版元です。結論とすれば【日本郵便切手会】で有る事は確かですが、ロゴの表示が【JPS】になっているのです。FDCに強い人なら分かりますが、一般人ならJPS=日本郵趣協会だと誤解してしまいます。弊社への出品者さんからは高確率で間違った記載でやってきます。これは罪も悪影響も無いので、オークション誌には【切手会】と書いて、昔は親切に(ロゴはJPS)としてましたが、今はこの注記は止めました。判っていて当然でしょうと思うからです。切手会の英語の略称、幾つか有るのですが封筒の雰囲気とカシェを見れば間違う心配は有りません。FDC、どなたかがきっちりした文献を出してくれれば有望な収集テーマになるのに残念です。山崎君が引き継いだ1997年版初日カバーカタログはこの分野での最新の書籍の筈ですが、FDCコレクターは誰も信用していません。2回国体のJPSロゴは無論ですが、司法保護のJPSAロゴや社会事業と全国緑化のPSJロゴまで全部JPS(日本郵趣協会)としています。これらは全て、郵便切手会の物なのです。この事を曾て児玉君と話したことが有りました。笑いながら速攻で返事が返ってきたのです。【あたりまえじゃん。だって山崎だから・・。】
FDCカタログは無いと困りますからどなたか動いてくれませんかね。山崎抜きでも、山崎付でも、能力のある人は沢山いると思います。