月別アーカイブ: 3月 2025

ルイスカバー ペンギンカシェ

二葉目はルイスカバーです。メモでは100点になっていましたが、葉書と白封を除いてオークションネタとすれば約半数になります。実はこのテーマで、昨秋に大きいコレクションを預かりました。未収品を見つければ落し切っていた人のコレクションですが、殆ど増えなくなったのでドロップアウトを決したのです。一応のご希望値を貰いました。暗算でオークションでの落札値を叩いたのですが、コストがかなり高いので、まともに勝負してもオーナーさんのご希望には及ばないと思えたのです。数年前のヤフオクのクレージープライスは、最早どこかへ消し飛んでしまっています。オークションでの最低値レベルの評価とすれば1次昭和と国立が@5万、記念と年賀が@3万、カシェ入りの船内印と風景印、外地関係が@1万、南太平洋と満州が@2万位で叩くのです。この中にはAランクが数点存在します。乃木2銭の10Bと富士箱根と牛車の次高タロコは@10万です。AAは、国立の小型シートと樺太の白熊カシェがオークションでは@50万で売れています。AAAは2点だけだと思います。安くても100万です。制定=FDCでなく後年の特印ですが、複数知られています。そして年賀富士山の20面シートも有るのです。これだけは私は今まで縁が無く、今回も欠けていました。

ビッグコレクションには、制定・白熊・国立小型が数点入っていたので、これらを梃子にして、喰いつくかなと思った人にオファーしたのです。要るんでしょう、高いけど飛び込んでよ・・とかなり滅茶な値段で踏んでプライベートの一括売りで纏まったのです。JAPEX会場に来てもらって、現物を見せて即決でした。無かったのは富士山小型と牛車です。富士山はオークションに出たならば、最低値100万で余裕で売れると思います。牛車は有りそうに思うのですが、随分前からこれだけ抜けている人がいて、チャンスが有れば、値段構わずにビッドすると聞いているのですが、私の記憶の限りでは縁が有りません。ランク的にはAなのですが、タイミング次第でぶっ飛ぶかも知れません。オークションでの結果を確かめ見たいアイテムです。

樺太の白熊はアメリカのオークションでの相場が5000ドルだそうです。恐らくはカシェの人気だと思うのですが、今回手元に来ている物には入っていません。でも、樺太の風景印で【ペンギンカシェ】が2通有るので、もしかすればこれは化けるかも知れません。ルイスの場合、合理的な希少性で無く、私が知らない感覚的な要素で値段が付いているように見える物もあるのです。これからオンセールになる物の内訳を書いて置きましょう。1次昭和が19通、国立が3通、記念と年賀が9通、カシェ入りの風景印・船内印・外地等が22通です。並べて見て気になることが有ったのです。カシェの違いです。国立と記念・年賀は見覚えがある均一のカシェなのですが、1次昭和で複数ある物ではカシェの基本図案が大いに異なるのです。25銭は4通ですが、明らかに構図が違います。こちらは、宛先がまちまちなのでそのせいかと思ったのですが、1銭はどちらもアメリカなのに違っています。何らかの理由が有るのでしょうが、今初めて気づいたのです。カシェに依る値段への影響?さあどうでしょうか。【ペンギンカシェ】がどう評価されるかが楽しみです。

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渡辺版 川瀬巴水カシェ

オークションが終わってすぐに大箱を受け取りました。ご連絡いただいた物は、ほぼ想像通りに入っていました。四葉のクローバーはドンピシャな表現だと思います。気分よく仕事ができるのです。大きいダンボールが大分スペースが空いていたので、その詰め物としてストックブックが1冊、手彫の本物・偽物がごちゃ混ぜの未整理で入っていました。この作業は何らの手間も掛かりません。大好きなテーマですから。ボリューム的にはFDCがメインです。これだけでも3~4回に分けて出すと思います。頂いたメモの【川瀬巴水全点含む】が気になっていたのです。正しければ、超目玉が1点、鵜飼100円です。大昔に扱ったことが有って、知る人ぞ知るFDCコレクターで、瀬戸口版を極めた方、高崎正吉さんが滅茶苦茶な値段で買ってくれた事が強烈に記憶に残っているのです。この方は突然消えて、FDC界の後輩の人たちとも音信不通になっているようです。鵜飼100円は私が希少性を意識せずにアメリカのオークションで落とした物だと思います。遠い昔のお話です。この件は、秋吉誠二郎さんの『版画家 川瀬巴水と渡辺版初日カバー』の本に、日比茂春さんがちょっとだけ書かれています。巴水の渡辺版としてもかなり特殊なので、サブナンバー扱いだし、これは無くても止むを得ないのです。

渡辺版で、どれが巴水かを調べるには誰もが上記の秋吉さんの著作を使っています。大元の資料は、毎日新聞社の『川瀬巴水木版画集』だそうです。データとして洩れている物も伝手をたどって検証されており非常に正確な資料だと思います。でも、オークショニアとして、時たま引っ掛かる事案にぶつかります。今回の方もそうですが、それなりにFDCに通じた方のご出品で、秋吉本に採録されていない物に対して、【川瀬巴水カシェ】のコメント付きの物がやってくるのです。有り得ない素っ頓狂な物は冷たく無視しますが、私が見ても、もしかしてと思えるものが2点有ります。長野平和博と4回国体水泳です。時期的には巴水で矛盾しませんし、カシェの形態と巴水ブルーの色使いからして秋吉さんの本が無ければ、誰もが巴水だと思うでしょう。著作の上梓は2002年でしたが、日を置かずに秋吉さんに聞いた覚えが有るのです。長野平和と4国水泳の巴水の可能性についてです。即座に否定されましたが、根拠は巴水の物だとする証拠がないからだという答えだったと思います。物事の証明手法で、存在の事実を示せば説得力を持ちますが、無い事を根拠にしての証明は難しいのです。

20250305

渡辺・巴水の場合は、有る事で証明できる可能性が有るのです。【ガリ刷りの会報・或は英文のMEMO】です。又聞きなのですが、国内頒布には付いていないのですが、海外へ送った物には同封されていたそうなのです。これを一生懸命追いかけているコレクターがいて、私も興味が有るので、当然の如く長野と4国水泳のデータを聞いたのですが、見つかったとの報には接していないのです。ガリ刷りぺーパーには、恐らくは巴水とは限らないのですが、カシェの作家の名前が入っている筈です。もし巴水の名前が有れば、秋吉さんは卒倒するかも知れませんが、快く事実として認めてくれるでしょう。20年来の疑問が解決するやも知れません。見つけた方は是非ご報告お願い致します。

別件で、カシェのロゴで多くの人が誤解している事実が有るのです。2回国体と鉄道75年小型シートの版元です。結論とすれば【日本郵便切手会】で有る事は確かですが、ロゴの表示が【JPS】になっているのです。FDCに強い人なら分かりますが、一般人ならJPS=日本郵趣協会だと誤解してしまいます。弊社への出品者さんからは高確率で間違った記載でやってきます。これは罪も悪影響も無いので、オークション誌には【切手会】と書いて、昔は親切に(ロゴはJPS)としてましたが、今はこの注記は止めました。判っていて当然でしょうと思うからです。切手会の英語の略称、幾つか有るのですが封筒の雰囲気とカシェを見れば間違う心配は有りません。FDC、どなたかがきっちりした文献を出してくれれば有望な収集テーマになるのに残念です。山崎君が引き継いだ1997年版初日カバーカタログはこの分野での最新の書籍の筈ですが、FDCコレクターは誰も信用していません。2回国体のJPSロゴは無論ですが、司法保護のJPSAロゴや社会事業と全国緑化のPSJロゴまで全部JPS(日本郵趣協会)としています。これらは全て、郵便切手会の物なのです。この事を曾て児玉君と話したことが有りました。笑いながら速攻で返事が返ってきたのです。【あたりまえじゃん。だって山崎だから・・。】

FDCカタログは無いと困りますからどなたか動いてくれませんかね。山崎抜きでも、山崎付でも、能力のある人は沢山いると思います。

 

かつお釣り異聞

昨日の小話は、昨年12月23日の【かつお釣り】のお話に続きます。珍品をこよなく愛して、弊社のオークションでもギョッとすような買い方をしてくれていた人なのです。一例を挙げれば、沿革志3冊、婚儀の不発行を色々と、青島の田型、村送りのシート、序でに並べれば、ヤフオクに出ていた大判に対してのコメントを求められました。今回のセールのラストロットをどうすべきかのお尋ねでした。自分も鑑定書付の10Bを持っているので、銘10に大枚をはたいて買って将来性がどうかというお尋ねだったのです。真面目に返事する前にクリアしておきたい情報に目を奪われたのです。【かつお釣り】の無目打【銘10】には、立派な組織の鑑定書が付いているリプリントが有るのです。【透かしが有る】ので100%偽物だと断言できます。無目打も目打有りも、物の出所からして【透かし有り】の本物は存在し得ない筈です。弊社に2度出品物として違う人から送られて来たのですが、勿論説明してご遠慮願ったのです。数世代前の権威者が罪な鑑定をした物だと思います。これを買ったのなら辛い話しになるのです。聞いてきた人に10Bの位置を聞きました。偽物云々の話はせずにです。即正確な返事をくれました。時系列で曇りのないディールを説明してくれたのです。第2コーナーの10Bでした。この情報だけで十分です。本物だと判ります。

買ったのは10年程前のヤフオクだそうです。郵趣サービス社のシート分割の即売で、第2コーナーが160万で売りに出て、それを買った人が150万でヤフオクに出したのだそうです。この値付けなら、恐らくはご購入者本人の出品でしょう。少し上でビッドしたけれど、最低値で落札できたそうです。当時の銘10の即売値は250万です。第1と第4コーナーの10Bは多分160万での即売だったかと思います。因みに単片の13.5万の即売はご希望者多数で抽選扱い、外れたよというお話を複数から聞いています。シートの写真と切手の博物館=天野安治氏の署名入りの鑑定書のコピーはもしかすれば全購入者に付けたのかも知れません。

お問い合わせに対する返事は、物は全く問題無し、第2角10Bをお持ちなら、ランクアップしての銘10までは独占しなくて良いでしょうにしたのです。勧めれば買ってくれたかも知れませんが、要るか要らないなら勧めたくない物です。弊社のセールでは終了直前に場に現れた人の存在が気になっていました。その人が渇望されている物は今回は出ていないと思ったのです。メールでもフロアでも、ご希望の物は絶対に逃しません。そして単なる見学もしないでしょう。最後の最後までの残ってくれていたので、何を狙っているのかが気になっていたのです。ラストロットの直前には分かっていたのです。成程ね・・。一度素晴らしいコレクションを弊社で売ってしまって、突然、1種類の切手に絞っての再登場、それも買う物が亡くなって来たので、感性に有った珍品にチャレンジなのでしょう。190万のハンマーはまだまだ余裕だとお見受けいたしました。次は何処へ向かうか大いに興味がソソラレます。多分、読み通りには動いてはくれないでしょうが、今後も大いに注目したい方の再登場でした。それにもう一つの情報が・・。第1コーナーの10Bも売り物として弊社の手元に来ているのです。こちらは比較的最近に別のオークションで260万+手数料で売れた物です。意図せぬ偶然なのですが、何故か物が物を呼んでくるのです。

フロアセールの直前に1通のメールが来ていました。ご出品のお問い合わせです。①明治初期の外国郵便 40点位、②カールルイスFDC・カバー・絵葉書 100点位、③坂東収容所切手葉書等の俘虜郵便 50点、④川瀬巴水全点含む、渡辺版中心のFDC、出品物として受け付けますかという内容です。この並びなら大好きだし、幾らでも捻って売る自信が有るのです。差し詰め四葉のクローバー、今までの私のキャリアで面白い経験を一杯して来たテーマなのです。多分、誰にも話していないはずです・・・この機会に数回に分けて書いて見たいと思います。