和桜20銭縞のお話を続けます。Lot30170の再接ペアには、私が密接に絡んでいますし、当初のディールでは私しか知らないネタが一杯有るのです。アイホン君の記事のHerbert Goldsmithの名前は、日本人で知っているのは私とキタゾノ君だけでしょう。アイホン君の記事の詳細は、私が嘗てどこかに書いた物を引っ張って来ていますが、大急ぎのやっつけ仕事の為、事実関係が錯綜しており正しくないことが一杯なのです。登場人物の固有名詞は合っていますが、登場シーンと数字が出鱈目なのです。【東西南北】と書くべきところを【東南西北】と書いてしまっています。今回のセールの結果には影響は無いのでしょうが、書籍に開示された情報が、国際切手展の作品に子引き、孫引きされて、私の名前が間違って引用されるのは気分が悪いので、ここで修正しておきます。正誤表でなく、ゼロから決定版を書いて行きましょう。老婆心ながら、この切手だけでなく他の物の詳細に関しても、アイホン君はよく勉強をしているのですが、情報の処理に関しては、大昔から物凄くルーズなので、引用する場合には慎重さが必要なのです。このセールのデータは、確定版でなく一つの参考の情報だと思って扱って欲しいのです。一例をあげれば、止むを得ないケースなのですが、1銭ブッチの田型は存在が5になっていますが、去年私がバラ4枚にして潰しましたし、その前にもユキオスタンプさんが同じ事をやっています。もう1点もオンセール状態です。どんな物でも、世に知られずに形を変えて動いても誰もトレース出来ないと思います。私が知っていることだけでも、まともに正誤表を出すならば、500文逆刷の別冊以上のボリュームになってしまうでしょう。
本筋に戻りますが、20銭縞のペアが我々の元に来たのは、下側切手=Pos32が最初でした。ユキ・(カネコ)・長谷川さんのサンフィラUSAが東京に来た時に、山崎君にプライベートで売られました。私が持っている情報の、1989年で間違いは無いと思いますが、値段は300万位だったと聞きました。この頃の彼女が扱ったもので、ちょっと不似合いかなと思えるものが結構有ったのです。今回のセールの和桜20銭イ 墨点 白抜十字の後消しは、鯉江君が安く(言葉を変えれば、適価で)買っています。残念ながら私にはプライベートのお声が掛からなかったのですが、この時のオークションでは良い物を落しました。旧小判3銭木綿紙11N 未使用です。場に行った時に、秋元信二郎さんと話をして、要るでしょう?降りましょうか?と聞いたのですが、『紙が違うだろう、要らない』のご返事だったので、遠慮なく最低値の一声上で買いました。安いけれど、1000ドル位の評価なので、元の持ち主は少なくとも目打は判るコレクターだったのです。木綿紙は公式には未発表ですが雰囲気は良かったので、飛び込んで買ったのですが、売る時には連合の鑑定書を取りました。プライベートで売って、物が表に出た時点で、田畑君が貴重な情報を見つけたのです。【ウッドワード】の本に出ている現物だったのです。一気に格が上がりましたし、関連しての情報の捜索が出来るようになったのです。
このヒントを貰えれば、私の出番になるのです。ユキさんが手にした珠玉のお宝の素性が割れたのです。20銭縞のN1B1 東京も20銭イの墨点・後消しも3銭木綿紙11Nも大元の出所は同じでしょう、トレーシー・ウッドワードだと思います。彼からカナダの著名なコレクター、ブラッドショウに流れて、次いでカナダ在住の日系の弁護士、エドモンド・バンノ氏のご遺族からユキさんに来た物だと思います。バンノ弁護士は代は変わっていますが、今も同じ職に就かれているはずです。因みに、エドモンド氏は、番野一臣さんの実の叔父(或は伯父)さんです。番野さんに聞いたら、カナダに泊まりに行ったけど、切手の話は出なかったと言ってました。私が88,000ドルで買ったというのは、100%ガセネタです。また山崎君が16,611,000円でJAPEXで売ったというのも間違いです。他の物と混同していると思います。過去は兎も角として、私が関われたもので、取引値で1000万を軽~く超えるのは【秋田調】の2枚だけだと思います。
私にすれば、山崎君が安く買ったPos32の存在が記憶に有ったので、もう一枚のPos24に反応出来たのです。ペアにしての大儲け、二人での山分けを夢見ました。Hamburg Kleine Reichenstrasse 1-ⅤのSchwanke & Shonセール、赤い表紙のA5版で隔月程度のペースでやっていた、小さいオークションハウスです。200回記念セールで表紙に20銭縞が出ていました。フロアセールは1991年で間違いないと思います。カタログを見て、消印とPosを確認して、ペアになることが分かりました。国内で調整したか、何も無しでやったかは覚えていないのですがそれは些事でしょう。ユーロ導入前なので、参考値は5万マルク=400万位だった気がします。山崎君にペアにしようぜ、の連絡をしたのかな。ここのセールのフロアには何度か出たことが有って、競りの流れは分かっています。小学校の教室みたいな風情で、長テーブルと木の椅子です。コールはドイツ語、ファーストコールは、エスティメイトでスタートして、ノービッドならビッダーが声を出してリクエスト、1割引き位ならOKだと分かっていたのです。20銭縞のメールはノービッドと読んでいました。だから45000マルクのコールを掛けようと最前列に座って、ドイツ語を反芻していたのです。予想通りの50000スタートで、値切りの発句をしようとしたら、場で手が挙がったのです。若いドイツ人、一体誰だ?状態でした。コレクターだとは思いません。エージェントか、スポットの代理人なのかな、数声読んで落札、許容範囲に収まりました。終わった後にアンダービッダー(最後まで競って降りた)のお兄さんに声掛けしたのですが返事なしで逃げられました。ドイツの若い子というと、ブレーメンの高校生=アンドレ・ローランの友達がいるのですが、見知った彼とは別人でした。
出品者は会場の最後部に座っていた、ドイツ系のイギリス人、Herbert Goldsmithでした。1984年にイギリスのオークションで掘出して抱えていたと聞きました。20銭縞を掘り出したもう一人のイギリス人(亡命墺太利人)のR & S Schapiraは、猜疑心が服を着ている風情で、付き合い方が滅茶苦茶難しかったのですが最後の最後に大きいビジネスをやりました。G・S氏の方は、ロンドンのBishopsgate のCity of London Philatelic Auctionへの有力な出品者としての間接的な接点しか有りませんでした。ここはマンスリーでやっていて、古~い全世界のアルバムを国別にバラシて売るのがメインでした。アルバムのブランドで狙う価値が有るのは、IdealかLincoln、多分この2社の場合、19世紀で終わっているメーカーかと思います。だから内容に魅力が有るのです。海外のオークションで日本切手の彫り出しが期待できるのはこの老舗の2社で有り、ライトハウスにスコット、ギボンズ、ダーボなら殆ど面白味は有りません。ロンドンに4大オークション=ロブソンロー・ギボンズ・ハーマー・フィリップスが有った時は、ここで大きいコレクションを買って、City of Londonでバラの小ロットで売るのがビジネスモデルとして成立していたのです。ロンドンを訪れた日本人の郵趣家をキタゾノ君が良く案内してあげていましたよ。必ず日本の初な物が出るので、スポットの旅行者でもイギリスのオークションでの掘出しの源流を体験できたのです。多くの人が楽しめたオークションハウスでした。普段は殆どが写真無での、場で見てよ・・のスタンスの編集なのですが、年に2回例外が有るのです。Goldsmithは手彫が結構判ります。4大オークション他で買った手彫の良品を、1年に2回、City of London に出していました。この時だけ写真版2ページに手彫の光輝く物が並ぶのです。このオークションでは掃きだめに鶴なので、彼の手彫を見た瞬間はギョッとしたし、大いに燃えたのです。City・・はとうの昔に無くなっていますし、Schwankeも何時しかオークション誌を送って来なくなりました。Schwankeの20銭縞ですが、Goldsmithはこの2社に深くかかわっていたのです。親戚か何かだと思います。だから200回の記念セールの目玉に出品してあげたのでしょう。もう30年も経ったのかと反芻すれば不思議な気分になるのです。時代はすっかり変わりましたから。
1991年の国際展に4社合同オークションが有ったのです。編集は私が全部やりました。再接ペアは目玉として3000万で出しました。私と山崎君の買い値からして、ちょっと欲張りなのですが、お祭りの目玉なので、話題になれば良いのです。それなりに反応も有ったのですが、残念ながら不落札になりました。旧に復してペアが2枚の単片に分かれたのです。私の物は白井二実さんが買ってくれて、山崎君の方は一度売って、戻って来て、又別の人に売ったと聞きました。取引の値段は野暮なので書きません。時を経て。何時しか合体して、面妖な場所に現れました。テレビの『何でも鑑定団』のやらせ出演と、売る気の無い『ヤフオク』出品です。更に時を経て、ペアとしての安住の地を信州に見つけたと、ある意味安堵していたのですが、又も目途の無い旅に出て行きました。Feldmanの画像よりも現物は綺麗だと思います。でも、118年も泣き別れだったのでペアというには色の違いが微妙です。4社合同オークションでの私の書いた記事を載せて置きましょう。アイホン君のそれよりもセンスは良いと思います。オークションの記事には華美な修飾語は要らないというのが私のポリシーです。30年前も、今も全く変化はしていません。
他の大物も含めて、今回のビッグなセール、私としても大いに楽しみたいと思っています。セールの予想は書けませんが、終わった後に結果を見て、裏話を書いてもいい物かどうか思案している物も少なくないのです。David Feldmanとスタンぺディアさんの【共催】のセールですが、ちょっと言葉の使い方がどうかと思うのです。東京での現物の下見が無理なのは分かります。でも、海外のオークションへのビッドが初めての人の参加を誘引するのが主眼でしょう。ならば、その人たちのストレスと不安を除去するのが【共催】社の義務だと思います。今のままなら、単なるプロモ―ション協力に過ぎないと思うのです。同封されたビッドシートでメールビッドをどうぞ、後の取引はご自分がやって下さいなら、オークションを標榜していて、取引の機会は提供しても責任は一切取らない、ヤフオクの場所貸しビジネスと同じでしょう。このままだと、海外取引に通じてない人が何人も泣くことになると危惧しています。だから私が出来る範囲で助け舟を出しましょう。キーワードは、HSコードとAEO、通関に絡む公式用語のイニシャルです。この件も含めて、直近の『ビジュアル日専』産業・動植物国宝編に、郵趣に絡む法律案件を書いています。郵便法の憲法17条違反、郵摸の東芝ゼロ円の不起訴、郵便法での切手の使用制限・・他です。特にFedEXのAEOの解説はもろに今回のスイスのオークションの最後の締めで大いに役に立つと思います。次回に詳報いたします。私の長年の経験で何が起きるかが見えているし、それを防ぐことも出来るのです。無駄な税金は払う必要は無いのです。