膨大なデータは勿論編集者の手元に保存されています。アレンジさえすれば、使い方次第で有益な資料として生かすことが可能です。CDロム化とか、次のアイデアも幾つも有るのですが、まずはやれることから進めます。この資料の存在は、だいぶ前から概略はお聞きしていたのですが、完成状態の現物を拝見したのは昨年暮れでした。主たる作業として、弊社のオークションの出品物のデータ化をやられていたので、私の記憶と付きあわせて完成度で確認できるポイントが有ったのです。直ぐ確かめたのが千島と琉球です。二重丸以前の消印ですから、このレベルなら何を売ったかのみならず、出品者も落札者も完全に覚えている位に少ない物なのです。千島はOKでした。売った人は何処かへ消えましたが、買ってくれた人は現役です。千島のコレクションとして、赤二党とかの並み居る強敵を討ち負かしたのです。値段も含めて私の記憶と完全に一致しました。琉球は那覇以外がポイントです。DK東風平を売った覚えが有りました。切手は大傷ですが、消印のかかり具合はGood。琉球のトップコレクターがこの状態でも買うのかなと注目して、場に来て落し切ったので覚えているのです。因みに今回の本には⓻ですが切手の状態が綺麗ものが載っていますが、勿論それでOKです。データの押さえ方は問題無しと思いました。

編集者のコンセプトは、消印のタイプ違いを1点ずつ局ごとに時系列に並べる事です。同一印でも色違いは異種と見做します。二重丸では同タイプでも局名の字体違い、「島」・「嶋」なども異種扱いです。この方は情報分析のスキルは勿論ですが、画像処理も達者です。でも物凄く辛口の視点で見れば、消印に対してのシビアな郵趣知識が十分ではないと思いました。チラッと見ても、理屈に合わないミスが見つかってしまうのです。不統一の〇谷ですが、古い文献では羽前谷地になっていますが、私がこの消印で別のエンタを売った覚えが有ったのです。青一の19版ペア貼で備中庭瀬でした。文献に谷地として出ている、有名な〇谷が実は庭瀬だと確定したのです。このカバーは故中村道章さんが落として、今は安藤源成さんがお持ちです。このミスはやむを得ないし、指摘する方が酷ですし当然許される範囲ですが、私の場合は何故かどうしても見つけてしまうのです。訂正が間に合うので指摘して谷地の図録からは外して貰いました。琉球の北谷の不統一で四角に済印を採録されています。何らかの根拠が有るのでしょう。聞いたところ元ネタは、「消印とエンタイヤ」だと判明しました。でもこの消印は、備中板倉のそれと思った方が無難です。もし琉球北谷の不統一で、エンタで確認ならビッグニュースですが、今回は削除をお願い致しましょう。北谷だと確認出来ればそれはまた物凄くハッピーなことですが。

ビジュアル印影集-0001

二重丸で気になるポイントが有るのです。分類記号のDとdの区別です。私の場合は、表現に於いてブレることは有りません。【同一因子の二重丸印】が有れば【大きい方がD・小さい方がd】で統一しているのです。問題になるのはDN3B1とdN3B1=根室・大分、DN3B2とdN3B2=四日市・横須賀他のケースです。弊社では当然ながらdと明記して区別するのですが、例えばサンフィラ?の場合、N3B1根室、N3B2横須賀の表現でオークションの記事を書いているのです。セールの時点ではそれで何らの問題は起きません。でも、今回の図録に使う場合、編集者の郵趣スキルでは、N3B1根室とdN3B1根室を違う物として載せてしまっています。これを修正するのは結構な手間ですし、利用する人は先刻ご承知なので、誤差の範囲として置きましょう。

ビジュアル印影集-0002

不統一に於いても、編集者の責でなく、オークションのディスクライバーの不注意での記載ミスが起きています。水口郵便役所は三等ですが、二等郵便役所の印影を載せています。有り得ない表示なので、たまたま気づいたのですがこれは削除の方が良いと思います。

 

ビジュアル印影集-0003

この図録の位置づけとすればバイブル化して、正しいのが善、間違いは悪という狭量な価値観で些事に拘るのでなく、収集のための下書きのデータとして見て欲しいのです。たまたま気づけば、編集者に連絡して間違いは訂正のお願いを出すつもりです。でも、データの洩れ、特に空欄部分を埋める物を持っている・・ので追加、訂正は考えておりません。ご協力者から、100%ご厚意での新規のデータ提供を頂いても、それに即座に対応して真摯に向き合えるシステムは作れません。今回の仕事は今のままでの未完成の物が最終形だと思っています。地元印コレクターには、これを上回るコレクションを作って欲しいのです。不統一は困難ですが、記番と二重丸の局名数勝負なら恰好な目標だと思います。実例で示して見ましょうか。今のタイミングで記番印と越前・若狭で格好のネタが有るのです。