XRF=蛍光X線分析装置での精密偽造郵趣品の摘発ですが、近日中に事態を大きく動かします。私及び親しい人だけで知っている問題、という括りでなく、須らく情報を公開して、今後の行動を意義有る物にしたいと思います。何を優先するかはこれからの課題ですが、事実の解明=偽物の摘発・被害の回復=損害賠償請求・情報の公開と保存=再発防止へと、公に行動する準備しています。残念ながら、最後になった『日本切手専門カタログ』「2011=2012戦前編」の巻末に17ページの「記事広告」を書きました。『珍品カバーを検証する』のタイトルで、一人の異能な人物の長期にわたる悪行を告発したものです。私自身の実体験なので、事実に基づく告発です。対象が特殊で限られたテーマなので、一部では話題になったかも知れませんが、小説として読まれたに等しく、或はメディアとしての小ささ故に、少なくとも郵趣界の目に見えるコンセンサスとしては、私が望んだ結果は得られていません。最早、過去のエピソード扱いです。相手は反省して大人しくなるどころか、むしろ悪意の技がレベルアップして、仕事が巧妙かつ高額に進化して来ているのです。その凝縮が、本年1月の「日本フィラテリックセンター」のフロアセールの一連の珍カバーの出現でした。ちょっとやりすぎだし、異局差出しのカバーで、同じタイプライターを使ったという、足が付くチョンボが有ったので、結果として、該当の出品者の出品物は全品WDになりました。処理の仕方としては、それで一話完結、余韻なしです。そして、このケースでさえ、オークション誌の記事を見た時の違和感、不快感は、現物を手にすれば消え去ってしまうのです。一連・一群で、全てが初の、大量の珍品が並ぶことは有り得ない、だからそれは、奴が作った偽物だろうというのが、私なら直感で感じる拒否感ですが、グループとしては有り得なくても、単独のマテリアルとして見れば、どこがダメかが言えない物が多いのです。オークションの出品物なら、あいまいな理由で拒否できても、鑑定という立場でなら、ダメを出すのは相当な勇気がいると思います。今度の場合、余りにも極端だったので、スルーは出来ず対応策が取られたのですが、今までにやったように10回に分けて売られたなら、ストップを掛けるのは無理だったかと思います。それに、過去の数十倍の悪事の検証と、対抗しての未来に続けるべき措置は何も為されていないのです。郵趣界に於ける行動力とはこの程度のレベルなのです。

縁あって、XRFに巡り合い、それを使うことにより、現物に接する事が出来たなら、想像以上に結果が明瞭に見えて来ることが分かりました。しかし疑惑のマテリアルを手にすることができない場合は、印刷物で過去のデータを俯瞰しても、果たして、真なのか偽なのか、分からないケースも有るのです。「日専」の記事は、結構厳しいタッチで、正鵠を突いているはずですが、今となれば相手に優しすぎる部分が多いのです。悪意の輩に対して、私が推理した動機の部分が、ある種、そうであって欲しいという知的な挑戦でなく、単に金目当てに過ぎないことが分かってしまったのです。悪事の発端として、1通のカバーを書いています。画像でお見せする、竜1銭1版 横浜検査済 壬申8月18日 最初期データ更新カバーです。MSA183号 MAY 12 1997締め切り Lot 2011 最低値 270万、落札値 320万。何分にも、18年前の出来事なので、時系列の並びが正確かどうかは分かりません。ただ、複数のメディアで活字になっている事実を元に話を進めて行きましょう。1997年の8月か9月、私の前の事務所に、水口正春が突然やってきました。商売上の付き合いは殆ど切れていたし、オークションの会員でもなくなっていたはずです。因みに、私が関わったオークションに、彼は一度たりとも出品はしていません。嫌われていましたから。来訪の要件は、自分が編集を任されているMSAに、自分の所有物=竜1銭1版貼のカバーを出品したところ、金井宏之氏が320万で落札、その後偽造だと返品して、しかも全日本郵趣に偽物と断定して記事を書いた、その理由は消印のズレ=空間だけれど、切手を一度はがして貼り直した際にズレタまま貼ってしまったので、物は絶対に本物、剥がせば元から押された消印が、切手の下から出てくるので、金井氏の面前で剥がすから、その交渉をして欲しいというものでした。私に仲介の労をとる力はないので、当然断りました。時は飛びますが、MSA192号 JAN.22 2000 Lot1120 270万で再出品がそれであり、偽物として指摘された要因のズレは、水口自身により貼り戻されています。竜1銭1版のカバーは、500文2版に匹敵する希少性です。それ故に、初期使用のデータも、長期に亘って壬申=明治5年9月14日のままになっていました。水口のそれは5年8月18日です。専門家にとっては、この更新はビッグニュースで、金井氏の正面切っての告発も有り、水口のそれが、本物か否かが真剣に議論されたそうです。金井さんは「神」なので、出した結論を屈返すことは有り得ません。時を経てなら別ですが、出した結論を、即座に自ら訂正することは望めません。でも、手彫切手研究会の有史で真剣に議論され、「真正だろう」の結論になったと漏れ聞きました。本来なら、2007年発行の手彫切手専門カタログに、初期使用データとして水口が出品して、金井氏が落札・返品した5年8月18日が、採録される予定だったのですが、新カタログの発行以前の2000年頃に、タカハシオークションに7年7月12日の横浜検査済消しのカバーが出たのです。最低値5万で不落札なので状態は推して知るべしですが、データとしては生きるのです。MSA192にも、水口の出品で、同じ組み合わせで7年7月25日の物も記録されています。初期使用更新競争というよりも、データが少ない1銭1版で、横浜使用のエンタが3通ということは、松田1銭の横浜配給と絡めれば、面白いデータが見えるかも知れません。

前置きが長いのですが、論点は一つ、水口が出品して、金井さんが返品したカバー、本物か否かが知りたいのです。日専の記事で、私は本物と書きましたし、手彫研の意見も同じです。頭に来た水口がやったのは、MSA192号への再出品、記事を載せて置きましょう。結果は不落札でした。彼の評価は、『無地紙』の希少性を強調していますが、オンカバーの場合は、然したる意味はないし、初期使用というデータも、値段には影響ありません。私の評価では100万+かなと思っています。その後に、売られた記録がないので、本人が持っているかも知れません。XRFで調べて、Tiが出ないならば、扱ってみたいカバーです。気になる点が一つあって、東京の干支印に油の滲みが有るのです。この特徴は水口の偽カバーの共通点としてよく見られるのです。真か偽か、現時点では分かりません。私が、本物と信じた大きい理由は、水口が私に、金井氏との仲介を求めてきたことです。理屈は通ります。本物の自信が有るのでしょう。まさか、自分が作った快心の偽カバーで、この行動は無いだろう、と信じたのです。彼が悪事に手を染めたのは、この件が大きいきっかけ、重要文化財に指定されて後に偽物と分かって取り消された、「永仁の壺の加藤唐九郎」と通じるのではのニュアンスで書いたのです。でも、それは私の買い被り、大いなる誤解だったのです。改めて検証すれば、それ以前から、野別まくなくやってますから。金井マターが動機とか発端では無かったと断言できます。この時に彼が発した、「年寄連中の目が落ちている」の意味は、良いものをダメとしたという怒りでなく、偽物を見抜けずに、間抜けな高値で買っているという自信が元になっていると、今なら分かります。この時の文章で指摘した、彼の悪事に関しては、間違ってないと思います。でも、彼を信じて、字数を割いて、本物として例示した3点のカバー、500文2版貼 佐久山、河西務の欧文消の葉書、野戦郵便局の初日消カバー、再検証が必要だと真剣に思ってます。知れば知るほど、調べれば調べるほどに、彼奴の仕事の凄さが分かって来ているのです。機械抜きの1点勝負では、誰も太刀打ち出来ません。

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