月別アーカイブ: 6月 2011

2011年6月14日(火)

『大津小舟入・・』
日専に書いた記事の反響は、有るような無いような、なかなか微妙な状況です。こうすれば全てが解決と言える絶対的な結論は見出せていません。でも、市場の波は、良きに付け悪しきに付け、動きを止めることは有りません。6月4~5日の弊社のオークションの会場で面妖な情報に接しました。そしてそれは、今までの例では、遠からず波紋を広げて、こちらの世界へ押し寄せて来るのです。
京都には骨董・道具市が幾つか有りますが、昨今は一般的には、「紙物」=エンタや葉書は出ないのです。蔵を潰した流れで、道具や書画骨董の連れで出てくるケースはあるのですが、エンタ類の単独出品は、場の主催者が嫌がるので殆ど出品されることは有りません。その理由は、個人情報の関係なのか、競りに関わる面子が少ないから値段が伸びないから廃れるのかは、現時点では確認は出来ておりません。ただ、結論としては、1箇所の市を除いては最早、そのスタイルでの出品は無くなっているとのことです。その例外は、日専にも書いている、「市の竜」の出所です。
またしても、そこで竜のエンタが3通出たのです。48文横ペア貼り、100文貼り、草津と西京の検査済・・。初い蔵出しの竜のカバーの風情です。でも今の道具・骨董のマーケットの実情から判断すれば、見るからに、仕掛けて作った如き、取って付けたような出方です。ここにそんなものが出て、いったい誰が買うのかな?
競りは声掛け発句で、元気な若者が嫌味でチョッカイを出したのが、お遊び値段の35万、当たり前の如くいつもの輩が、上で撥ねて、落ちた値段は40万・・。蔵出しには似つかわしくない非常に綺麗な状態とか。あたかも、そのまま直ぐにオークションで出せるようなコンディション・・。普通なら、最初から、お天道様の下の郵趣シーンのオークションに出るでしょうに。
宛先が何れも、「大津小舟入・枡(升・舛)屋佐助」、一連の明らかにダメな「水口=みなくち=検査済」と同じ宛先です。この宛名は相当な量の封筒が各年代で蔵出しで出ていて、竜文から丸一までが確認されています。日専の記事を書く時の検証で、或る時から、住所の表示は小舟入から平蔵町に変わり、屋号も桝屋佐助から平田佐助になっています。竜文時代では、「小舟入りの枡屋」でないといけません。今回の草津他の3通は、必要条件を充たしています。でも、仮に悪意が存在したとしても、私の日専の記事を読んで浅知恵を働かせれば、まさか今度はチョンボはしないでしょう。
さあ、突然出現の3通の竜文カバー、落ちた値段は本物ならば滅茶安だけど、どういうパターンで陽の光を浴びるでしょうか。今度の国際切手展にギリギリに間に合う、どこかのフロアオークションに出たりして?物を見ない情報のみでの記事なので、憶測、推測、仮定の要素のオンパレードです。責任ある結論は出せません。
今、書けることと言えば、郵趣研究100号(近日発行)の丹下甲一氏の記事の続編にかなりのヒントが出ています。3通の内の少なくとも1通は、朱色の西京の干支印が押されているらしいのです。この印の顔料を分析すれば、かなりの確率で真偽の判断が出来るのです。今のタイミングで、この記事を書くには少し躊躇を感じます。ギリギリ出品へのデッドラインが微妙なので、物が危険を察知して引っ込んでしまうかも知れません。でも、実際に起きる事実の方が私の思惑を凌駕することがままあるので、ドキドキしながら待ちましょう。カバーの真偽の確定は困難かもしれませんが、マテリアル自体の劇場型出現の有無は、7月初旬にはっきり結論は出るでしょう。触れ込みは、最近出現の「初い=うぶい市の竜」として。くれぐれも情報に接してない純情な方には、惚れ込んだからといって、飛込みでは手を出して欲しくないのです。ヤフーで一時期活発にご活躍の、お父上のコレクションを処分していた、問題の「tomopu・・・」は依然利用停止中。終わったデールは闇に埋もれてしまっていて、何が起きても誰も助けてはくれません。十二分にご注意願います。

2011年6月2日(木)

『ジェムス・ベンドン UPUみほん』
前の日曜日が丁度、弊社の東京下見会だったので、古家氏の他に山田廉一氏に会い、気になっていた資料の提供を頼みました。直ぐに送ってくれたので、約30年前のオボロゲ記憶を時系列に並べても、チョンボのない記事を書けると思います。
結論を先に書けば、前述した物は、いずれも「UPUみほん」で表現される、加入各国が未使用切手をジュネーブの当局に送り、該当国の言語のゴム印を押して、パクボー郵便物が入ってくる国に送ったと解釈しています。ベンドンの立派な文献が英語で出ています。
SPECIMENは英領東アフリカのナタールとべチャナランド、ULTRAMARとAMOSTRAはポルトガル領のアフリカ、COLONIASとESPECIMENはスペイン領アフリカだと思います。以上は後述するひとつの資料から導きましたが、別ルート=ジョージ・アレビゾスのオークションに、菊5円・10円を沢山貼った、MADAGASCARのそれが有りました。共通点は、全てアフリカでヨーロッパ列強の植民地、完全にグループ化できるので、出所は「UPUアフリカ局」から流れ出たものでしょうか。
この種のマテリアルの日本への登場は、1980年頃のロブソン・ロウが、東京の郵趣会館でやったフロアオークションでした。U小判・新小判13完=SPECIMEN加刷が7点のカットに貼られていました。不幸なことに同じセールに、平和記念の無目打=ワイドマージンをカットした変造品と、平和記念が台のトンボ偽加刷が出ていて、SPECIMENもこの時点で誰も素性を知らず、何のことか分からず、セールでは不落札になったと思います。
その現物が回り回って、弊社のオークションに出てきました。30年の時を経て、間に少なくとも2人のコレクターが入っています。そして、それには1981年5月15日のBPAの鑑定書が付いています。ベンドンの本のタイプではナタール型で、同じタイプが別額面でもたまに出てきています。菊と一部の記念切手の場合が多いのですが、動機的に偽物は作るメリットはないので、見つければ買って良いでしょう。ゴム印で簡単に作れるから、まやかしだ、とブッタ切るのは収集マナーとして貧困です。分からなければ検証すればいいのです。ただ、ナタールとべチャナ・・の区別は今でも私では無理なのです。あのセールの時点では、日本の郵趣会では誰も海外用の異タイプのみほんの存在には気づいていません。
その後、私がオークションに出品した、かんむり10銭のSPECIMENが、落札者のエクステンションで、日本郵趣連合の鑑定に出ています。鑑定不能か資料不足で判断できないとして戻されました。この時点で、私は何故か根拠のない自信が有ったので、RoyalPhilatelicSocietyの鑑定に出しました。結果は真正になっています。
同じタイプが旧韓国と旧中国切手でたまに見かけるので、このマテリアルは、JAPANのそれというよりも、英領切手の分野で判定が行われます。今なら、多分日本郵趣連合の鑑定でも、OKはでると思いますが、あの時点では止むを得ない判断です。
次の出現が、20年以上前に、1899年10月発行の菊切手数種、縦5連のULTRAMAR加刷、ジャンボ・ゴトーさんが、ポルトガル(領)のUPUみほんとの触れ込みで、アメリカで見つけて、今は亡き柘植の森下さんに売っています。最初期印刷の素敵なクラックの入った糊で、昨日発行されたばかりの雰囲気でした。何故か菊封皮の2種にも複数の同じタイプが見つかっています。ピカピカの状態を見れば、まやかしとは誰も思いません。随分立派な値段で動いています。ペアと単片3枚に切られて、最大ブロックのペアは、20年の眠りの後に数年前に弊社で陽の元に出ました。これも、今度の国際展出品者のコレクションに入っています。
切手やステーショナリーが出れば、最初にUPUに送るべしという決め事が有ったのかもしれませんが、U小判・新小判は100面版の目打13です。出た都度直ぐにではなく、ある程度の期間を纏めて送ったのでしょう。そのルールは推測するしかなく、検証不可能です。
SPECIMEN=ナタール・べチャナ・・とULTRAMAR=ボ領は、その後も希に出てきています。珍しい割りには、値段も伸びないことが多いのです。でも、買っている人は、私の説の信奉者でなく、独自にベンドンの本の情報ぐらいは知っていて、鑑定云々抜きで買っています。正しいマナーだと思います。
もう10年位経ったかも知れません。イギリスのクリスティー(ロブソン・ロウかボーンマスかも知れない)に、そそられるロットが出ていました。参考値は数万円、全頁の青焼きのコピーを貰いました。状態はぐちゃぐちゃ、でも私の好みに合致する。フロアビッドを頼めるので、自分が買うなら限りなく安く落ちる、負けても納得、私の評価の上で買う人がいるならどうぞ・・の数字で入れました。マジで、商売にはならない数字を出したのですが、フロアできっちり負けました。希少性は抜群だし、ひねっていじりたいマテリアルですが、状態ゆえに商売にはならないものなのです。負けて納得の結果でした。
このセールの以前に、同じ様な物が、ハンブルグのエドガー・モールマンに出ていました。不落札になった現物かも。イギリスの物は落した人から収集分野のマテリアルを買った人もいるのですが、皆が同じことを言ってました。「高い」「状態が・・」、それは仕様がないことなのです。原価が原価ですから。元がとれたのなら、立派な商売をやってのけたと思いますが、震災や阿蘇の小型はまだ残っているかも・・。我ながら、変なことを良く覚えているものだと感心しています。場ではいつもながら、2人のエージェントがスタート値から2桁変わるまで、延々と競ったはずですから・・・。
実は、オークションが終わった後、コピーを私が持つよりは役立ててくれそうな、古家氏にあげたのです。全ての情報は公には記事の形では開示してくれてはないのですが、頼んだらきっちり見つけてくれました。その意味で私の取った選択は正しかったと証明されています。自分では保存せずに捨てますから
感謝を込めてデータを出しておきましょう。
ULTRAMAR 菊5銭・8銭・15銭・20銭・25銭・50銭・1.5銭紫・3銭赤・6銭・5円・10円・東宮婚儀。
COLONIAS 旧毛5厘・1銭・1.5銭・2銭・3銭・4銭・5銭・10銭・20銭・25銭・1円・5円・10円・震災9完・1次風景3種。
SPECIMEN 芦ノ湖9.5銭・赤十字会議4完・愛国3完・昭和毛紙3完・乃木2銭(乃木馬鹿くん、買ったかい?)・1次富士箱根4完・関東局30年3完。
ESPECIMENUPU加盟50年3種・昭和大礼4完。
AMOSTRA 阿蘇4完・同小型シート。
このデータで推測すれば、この現物に関しては、該当国へ配った後にそこから流れたというよりも、本部に残っていたものが出てきたと思います。他にチラホラ出ている物とは性質が異なるユニークな物でしょう。私の経験では、注意しているのですが、SPECIMEN・ULTRAMAR以外は接した機会が有りませんが、そのチャンスが有れば、飛び込むと思います。