月別アーカイブ: 3月 2010

2010年3月17日(水)

『観音350円電子菱形』 

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今回のセールでは、カラーマークで注目に値する動きが有りました。何れも10Bなので必ずしも一般的ではないのですが、専門家が欲しがるマテリアルが随分と高いのです。
Lot1112 松20円下A2逆櫛 LH 応札5 落札値135,000、Lot1130 狛犬250円下暫定版濃淡逆順 応札9 落札値220,000、Lot1132 観音350円下コンベンショナル 応札8、落札値 370,000。一時の値段の倍ぐらいですし、嬉しいことに、接近した札が複数続いていました。単片なら逆順やコンベでも、7~8万で喜んで売る位の手持ちの在庫もあるのですが、10Bとなると美品は少なく、それ以上に目打形式と絡んでの需要が強いのでしょう。売る立場としては嬉しくなる良い傾向です。
もっと得をする情報を差し上げましょう。発端は、昨年の11月28日に開催した、弊社のPA61回セールのLot3116、そのアイテムが公式な分類手法で表現され、真正面からの記載でオークションに出たのは初めてでした。
物は、観音350円電子菱形CM下単片、胡散臭い、余計な解説を付けずに、最低値30,000で表紙に掲載、これで必要十分条件は充たされます。結果は応札6 落札130,000、同じ回のLot3114のコンベが、応札4 落札90,000なので、きっちりと評価されていました。ただ、この時点ではビッド(少なくとも強い札)は、記事の情報を信じてくれた下見無しのメールビッドだったのです。この結果に対しては世間的にも、私としても、へ~え~程度の受け止めで、真面目に探せば見つかるかな?でも、一般人が見ても分かるのだろうかで終わっていました。人から教えてもらった知識とはその程度のものなのです。
今回のメールMA53のLot5635の銘10、CM下10Bが正にそれだったのです。札は3人、フロア当日の時点では札は1、だから最低値=暫定値で7,600、ギリギリのタイミングで下見した2人が落とす気でビッドして、2番札が54,000、落札値は56,000だけれど、1番札は倍以上の数字で入ってました。落とした人の許可を得て改めて現物を見ましたが、その気になれば割と簡単に探せます。なぜ今まで出て来なかったかが不思議な位で、この切手に関しては、コンベと柵とワインレッド以外は最初から探す人がいなかったのでしょう。カタログに書かれたり、内輪の情報でも有れば探す術も有るのですが、ゼロからの探索はやる人は少ないのです。
出現時期は、恐らく350円の最後期、糊はロータリーの時代の物、これでコンベ=暫定との区別が完了。色の特徴はさて置いて、30倍のルーペで見れば、スクリーンのセルが明らかに、緻密な正方形でなく、隙間の多い、表現としては言いえて妙の菱形です。数多くの350円を手探りで探すより、360円が正にそのものなので簡単に覚えられるでしょう。念を入れるのなら、スクリーンを測れば良いのです。250線なのですが、コンベ・正方形とセルの角度が違うので、横読みでは1ミリには7でなく、6強の数字になるのです。30倍ルーペを使える人が、このポイントで探し出せば、今なら大いにチャンスは有るでしょう。弊社の場合も、出品者の記載の有無に拘わらず、肉眼で分かる分類は原則として書きますが、ルーペで全ての出品物をチェックすることはやりません。正直なところ、希少性は全く分かってないのです。銘10やCMは結構、色んな時期の物が人知れずに残されている場合がありますから、これから暫くはこのテーマで賑やかになるでしょう。
序でながら、おなじオークションでの、地味な掘り出しをもう1点書きましょう。Lot5012、桜連合4銭ジャワ宛 櫛麻布10.1.1 薄印、これが実は「林式」、下見で見つけた人が教えてくれて、データを確認すれば、OK、薄いけれど希少度はかなりの物でしょう。でも、これだけのアドバンテージを持っていても、意気地なしには落とせないのです。2番札は林式は抜きにして、連合はがきの年賀状でビッドしただろうの人で1万円。一番札はもっと上、下見無し隅から隅までオークション誌の写真を見直して、でもボケボケの写真だけで、読み切ってのビッドでしょう。これはご立派。写真だけでこれだけの情報を収集出来る人が結構弊社のオークション誌を見てくれているのです。記事の方はもっと真剣に読んでくれているのでしょう。これからも文字や写真に現れない部分を含めて、真剣に編集に掛かりましょう。行間を読める人が結構いてくれるはずですから。

2010年3月16日(火)

『オークションのトピックを』
お約束の記事に入る前のイントロで、PA62・MA53のトピックを幾つか書いて置きましょう。まずは、正統派の目玉の2点から。
Lot 3057の大日本郵便切手沿革志 最低値 100万、スタート 125万、落札 155万、メールの1番札が145万、2番札が120万、メールビッドは4人、場でお二人が手を挙げて、メールをクリアで150万、場での2人の競りの更なる一声での155万の落札です。マテリアルとしては、弊社だけでも2年に1回は扱っているし、マーケットトータルでは、年に1点は売り物が出ています。今回の落札者は、一度は持ってみたいという覚悟を決めての、海を渡ってのお越しの方、昨今の相場は120~125万位だけれど、落札値との差は、機会を得て念願のマテリアルを入手出来た喜びが容易に埋めてくれるでしょう。わたくし的には、2番札の150万、メールのトップの145万のビッドが極めて貴重。十二分に留意する価値がある数字なのですよ。
Lot1652U小判2銭貼 那覇ボタ カバー。最低値 30万、スタート 74万、メールは7名 1番札は140万でした。フロアでメールの1番札を一声超えて、145万で落札。コンピュータのシステム上、このケースはビッドの数がプラス1としかカウントされず。実際はフロアでオープンの74万の上で、90万+、100万+、125万+とファイナルの落札者の4人以上のビッドが有りました。ハンマープライスの145万は、赤二のボタのカバーの値段としては、最高記録でしょうか。これも、落札者は、遠路はるばるお越しの、オークションは初めての方、開始前にルールの問合せを戴きました。赤二のボタカバーを熱心に集めていて、これで完集?になるので、覚悟を決めてのお越しでした。このクラスになると、冷静に値踏みしたメールビッドではまず落ちません。仮に予算を超えたとしても、数十年の念願が叶って大満足だと思います。
このカバーは、消印のボタはタイド無、でも全くといって良いほど、真偽は話題に上りませんでした。かなり知れ渡っているお話で、昨年にヤフーで出た、九州の蔵出しやルートの初出しの「薩摩・伊集院・有馬家宛」の一連のカバーの最後の一山だったのです。那覇が5通、宮崎が沢山、鹿児島系も結構有ったようです。弊社に来たのは、本当に最後の最後で、突然、「○○県の△△です。ある人の紹介で・・・。」地名と紹介者のお名前で一発に判りました。先方が用件を切り出す前に、「那覇ボタ?」と聞いていました。ひとしきり話をして、お急ぎでないのなら、オークションが良いですよ、とすすめて、驚くような値段で売れることを約束しました。この結果なら、ご満足戴けるし、紹介者の顔が立つし、先に動いた4通の現所有者もお喜びでしょう。わたしのビジネス上のポイントは、2番札の140万のビッドですが、この需要を充たすのは容易でないかも知れません。チャンスがあれば、具体的には、おなじ山のカバーを2通持ってる人が、賢明に判断して1通を出すならば、いつでもお手伝いできるのですが、その確率は低そうです。
この2点は、ある意味、想定の範囲での動きであり、驚きネタでは有りません。でも、メールオークションの方で結構なドラマが有ったのです。

2010年3月2日(火)

『アンボン郵便局長印加刷切手』 

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半年程前にここに書いた、蘭印旧女王121/2C封皮に航空30C、各アンボン郵便局長印加刷貼りのカバーのThe Royal Philatelic Society の鑑定結果が出ました。Philatelic Useの注記はありますが、間違いなく真正の結論です。
このカバー自体は、かのR.Boekemaのセールで随分と立派な値段で売られた記録があり、時を経て私の手元に来ています。何せ、 日専からは、全てが偽造として追放されており、それを検証できる資料も明瞭には示されてはおりません。私としても、あわよくばというよりも、もしかしての確認の意味で入手して、恐らくは世界で最も信用できる機関の判断を仰いだのです。このケースに於いては、RoyalのGenuineの結論が全てであり、否定するならば、説得力のある資料を開示していただきたいと思います。
日専からの追放の詳細は存じませんが、「日専」を読み解く「南方占領地」P123を読む限り、土屋理義氏が判断されたと推測されます。・・・現在ではこの加刷切手は、アンボン郵便局長の鄭忠孝が戦後になって作った偽造品であることが確定している。・・・とあります。偽物として同書に示されたのは赤加刷、私のカバーは黒加刷ですし、消印の印象も異なります。また、カバー上には鄭局長の名前も出ていません。出所が全く違うのなら、100余種の偽物の他に、少数の真正加刷が存在して、郵趣家便が残っているという位置づけになるのでしょうか。次回の日専・日本関連地域編の訂正されての採録を待ちたいと思います。
このカバーがきっかけ、という訳でもないのですが、オークショニアという立場の役得で、一般の世間の常識では情報不足ゆえに、色眼鏡で見られている郵趣マテリアルに関しても、真正さを証明するのに、結構説得力の有るデータを持っている場合があるのです。画像に出す資料を見つけるのは手間が掛かるので、オボロゲ記憶を文章で表現するしかないのですが、ちょっと書いて見ましょうか。理屈で考えれば、真正性には絶対に自信は有るのですが、説得力の有る資料を提示出来ていないマテリアル・・だから時として随分冷たい扱いをされることものです。オークションの出品物として来たならば、料理の仕様も有るし、現実には私以上にコレクター的なセンスで、飛び込める人達も複数います。
更には、もし持っているなら見せてよと、一声掛ければ、きっちり持って来てくれる人もいますから、最大限に敬意を表して幾つかの情報を出しましょう。
SPECIMEN+ULTRAMAR=UPU見本、消印では年2字SEOUL(局名下)IJPO逆向き・JN3上海日本郵便局、実際に私が扱った物なのですが、ちょっと時期尚早という評価になっているのです。「20銭リ」は、私の感性では、2枚目云々でなく、1枚目で挙証責任を果たせている、でも2枚目や、連れが有って始めて陽の目を見られるケースも多いのでそこらを書いていきましょう。