月別アーカイブ: 7月 2009

2009年7月15日(水)

『再審請求』 

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2005年版以降の日専日本関連地域編では6N1~116のアンボン郵便局長印が「偽造印」と確定された旨で削除されています。その根拠は土屋理義氏の「日専」を読み解く「南方占領地」の123頁に書かれてます。アンボン局長の鄭忠孝が、作ったとしてその見分け方の情報も開示されてます。この記事を読まされれば、少なくとも日本国内では、誰も反論は出来ません。元になる情報量に比較が出来ないほどの差があるからです。
ところが、極最近、オランダのオークションで1通のカバーを手に入れました。駄目を承知で参考品として買っておきたかったのです。元はといえば、世界的にも最も著名な南方切手の専門ディーラー、Boekema 75回セール ロット4196=落札値5250ギルダー・多分手数料込みで25~30万円で売られた現物です。私は持ってないのですが、Roelf Boekema の1980年の著作に記事が出ているそうです。落札した現物を見ましたが、普通の郵便使用ではないようですが、上記の鄭局長のカバーとは顔つきが違うのです。
このケース、いわば「死刑宣告」を受けたマテリアルの罪を改めて確認しようとしているのです。ここは、判断をする組織の河岸を変える必要があるでしょう。躊躇無く「The Royal Philatelic Society London」の門を叩きます。今までも、何度も日本国内では判定が無理なマテリアルを、ここを使うことによって生かして来たのです。小判・菊・冠の「SPECIMEN」加捺も日本では駄目にされかけたのですが、Royalでは日本切手でなく、英連邦切手=Natal・BechanalandのUPU見本で真正との判断をしてくれました。蘭印関係の日本占領地をどなたが判断するか判りませんが、座して死刑執行を待つのでなく、「再審請求」にトライしょうと思うのです。Royalの鑑定のミーティングは年9回で、日付も完全に公表されてます。今回のアンボンカバーも白黒は付くと思います。結果が出ましたら、ここで公表いたします。南方の場合、アンダマン・ニコバルは多分実逓はないでしょうし、幾つかの地区やテーマでも素性のはっきりしない物も残ってます。貴重な物、胡散臭い物が結構入り混じったオークショニア泣かせのカオスの領域なのです。  確か昨年だったのですが、人を通じて、多分未発表と思われる、「フローレス」の切手貼の郵便使用のカバーと葉書のカラーコピーを見せられたのです。売るとしたらの評価のお尋ねでした。瞬時で良い物と思ったので、琉球の100円加刷貼のカバーか、竜500文のシート並の数字を出したのです。ただ値段がどうこうで無く、まさにタイミングが合わずというか、縁が無かったのか、この2点の大珍品は、故人が生前お世話になったという、海外の郵趣団体へ無償で寄付されたというのです。今手元にある、「アンボン」はもしオーソライズされたなら、「フローレス」や「アンダマン・・・」と比肩できる可能性が有るのかなとちょっとは夢を見てもいいでしょう。或いは、ナイトメアーに終わるかも知れませんが・・。

2009年7月14日(火)

『旧小判5厘エスパルト』 

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8月のオークション誌の編集も今が佳境、メールは2400ロット強の出品で、記事は書き終わり近日中に入稿できますから、これから2週間+はフロアのパートに専念します。今で1500ロットなので、最終のロット数は3500を超える位になるはずです。目玉は広告とオークション誌を見ていただければ分かりますのでここでは取り上げません。それ以外の、今現在にわたくし的に感性に響く物を書いておきましょう。1点はオークションの出品物、もう1点は海外のオークションでの購入品です。
オークションに出るのが、旧小判5厘E紙10 初期◎YOKOHAMA1879年2月の黒印が③の状態で掛かった物。最低値は5000円 「as is」 扱いで出しました。ごく普通の国内のコレクターから記事なしで送られてきたものです。付随する情報は皆無です。旧小5厘のエスパルトの使用済は、きっちりとその存在がオーソライズドされたものは無いに等しい状況です。でも、私のおぼろげ記憶では結構そそられる物が有るのです。澤さんの「小判切手」の記述でも輸出用の20ミリのリメンダーTOKIOはエスパルトと書かれてます。ただ、これは郵便使用とは繋がらない例外で、正規の使用済の存在の有無とは直接にはリンクはしないのです。ところが、それ以外にもう1枚、トビっきりの物が有るのです。金井スタンプが扱った、オーストラリア人のコレクター=ワイズブレムセールの旧小5厘の単片使用済のロットに「記番消=イ47号」が入っていて、見つけた2人が猛烈に競ったのです。時を経て、落札者=所有者から確かに見せてもらった覚えが有るのですが、印影・印色等何の嫌らしさも有りませんでした。記憶では紙は確かエスパルト・・、海外から来た、うぶいロットを2人が見つけて納得で競ったのは確かなので、真正を疑う要素は、1点切りで連れが無い、珍品過ぎる使用例という、理由にもならない状況証拠しかないのです。でもこの条件では客観的な物証が欠けるとして、戸籍には採用されてません。
今回の初期◎YOKOHAMA エスパルト、直感では記番の神奈川の連れという気もするのです。ただ、1点きりの単片で、掛かり方が③なら、オークションの出品物としても無論のこと、コレクターの自慢に耐えるマテリアルではありません。でも、記番のイ47号の話でも経緯を知ってる人が何人いるのでしょうか。競って買った人も切手展の作品に使ったかどうかは今直ぐには確認できない状態だし、今更好んで現物をオープンにはされないし、競って負けた人は今は遠くへ行ってるので、ここらで書いておかないと、存在自体が日陰の幻想で朽ち果てるかもしれないのです。真っ当に評価すれば大珍品のマテリアルが、ルート違いでの複数出現は後に続く人にとっての格好な道しるべになるでしょう。珍品の出現の事実を根拠の無い思い込みで排除するのでなく、冷静にアナライズすれば見えてくる事実も有るのですから。でも、この2点の5厘の使用済は「鑑定」には向きません。私がそれをする立場だったとしても、「意見無し」=資料不足・判断材料が欠如しており「判定し難い」という評価になってしまいます。直感では良い物、面白い物と思っても、踏み込みにくい場合があるのです。だから、オークションの記事としては「as is」 が正解で、後は買う人の評価に委ねたいのです。でも、もう1点はちょっと事情が違います。