月別アーカイブ: 2月 2009

2009年2月25日(水)

『追加情報』

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今回のセールのLot3093に関し、当コラムに記事を書いたところ、4名の方から貴重な情報を頂いたので、ここに訂正記事を掲載いたします。
まず、結論的にはこのマテリアルの正しい記載は、「菊10銭8枚貼書留11倍重量代金引換墺太利宛」になります。内訳は外信第1種基本料金10銭+割増し10倍=6x10銭・書留10銭であって、代引き書状の場合は郵便物の上に手数料等は貼付しません。
このポイントで、「りす」氏より、代引きは取り扱い料だから切手は貼らず、差出し時に窓口で現金で納めるのではという意見を貰いました。同氏が菊10銭2枚貼のドイツ宛の外信代引き書留を所持しており、また金子入り書状(内国通運会社等の外部に委託のため)、別段急便・別仕立(ある種の後納・後精算)等では同様に郵便物上には切手貼付という形式では納付しないケースもあるという指摘です。現象面ではその指摘は正しいのですが、代引きの場合は制度的に明記された、より説得力のある根拠があるのです。
「とど」氏からは、明治36年の郵便便覧から情報を見つけてきて、一般の書状の代引き料は4銭で均一、価格表記が必須で14銭、つまり8倍重量書留=10銭+42銭+10銭+4銭+14銭の80銭ではという指摘でした。郵便便覧の数項目を追いかけての解明で着眼点はいいのですが、噛み砕いた表現でないため、ちょっと解釈に迷う表現もあるのです。但し公文書なのでデータは正確に載ってます。この制度は、UPUの包括のサービスでなく、2国間で締結した条約で、かつ国際為替の手続きが可能な相手国に限られます。多分アメリカは無理ですし、欧州及び同属国に限られますが、勿論一覧表も出ています。ただ、料金の解明に使うと、プロ級のアナリストでも間違ってしまうこともあるのです。
東京の下見会で、「馬渕直人」氏がコピーをくれました。明治42年の坂野鉄次郎(東京郵便局長・法学士)著で、後藤新平(逓信大臣)が題字を書いた、「通信要録」=三省堂書店発行の該当のページです。他のケースでも、郵便規則や法令の原文は中々読みづらいのですが、「郵便読本」「郵便法概説」といった解説書なら随分わかりやすく説明してくれてます。「要録」の根拠は明治33年の旧郵便法及びその細則や付随する規定なのですが、見やすい表と、カナ雑じりでない文体で解説してくれています。
代引き料金は1899.9.1、1922.1.1、1938.5.1に変わっている(リス君の情報)ですが、今回の出品物の場合、最初の料金体系と手続きが適用されているはずです。別項に記事を載せますが、外信便で代引きに出来るのは、「書留通常郵便」「価格表記書状及び箱物」「小包郵便」です。価格表記は必須の併合要因でなく、差出人が望めば物品保証を付けられるという意味でしょう。ここでは代引きに絞りますが、書状と小包では大いに扱いが違います。通常郵便(書状)は代引き料は4銭=10サンチューム均一で取り立て金送付の為替料と共に差し引いて、差出人に為替金を証書で送付する。小包は代引き料は差出人より徴収し、為替料は要しない=代引き金額8円まで毎に8銭という高額のための別ルールでしょうか。小包に関しては、この表現以上の解説はないので、現金納付でなく切手を貼付しての支払いだと解釈しています。
この解説本で結構実務的な要素はわかるのですが、国際郵便での扱いなので、元になる条約文は万国郵便条約に拠るのです。「730」氏が送ってくれました。明治40年万国郵便条約第6号、同細則規則・逓信省告示第555条です。
詳細は別記で間違いはないのですが、「Remboursement」の文字は筆書き又は印刷で、名宛国の貨幣で代引き金額をローマ字及び数字で記載、訂正不可、差出人の住所氏名、差出地及び差出日付を均しくローマ字で記載・・・。等と定められています。特徴のある柿色の△ラベルは絶対の貼付義務ではないようです。
あくまで私の知る限りではありますが、このアイテム以外の外信代引きは、小包のフロントが2点、満州地区差出の封書が1点(切手脱落)、りす君の持ってるカバーあたりでしょうか。料金面もクリアできましたので今回の落札者及び人知れずにお持ちの方は是非ご利用下さい。

2009年2月7日(土)

『速達3点』

今回のPA57の出品物の内、オークション誌には書きたいけど書けないテーマのお話を続けます。共通ワードは「速達」ですが、郵便制度上の、早く送るという目的を超えて語れる要素が有るものです。

まずはLot2649 二二六事件が絡んだ「速達」です。

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カバーと葉書が各1点、評価的にはカバーの、2種の検閲関係印、裏の小型「戒厳令ニ依リ開緘」表に大型「戒厳司令部査閲済」が押されている。この例が一般的というか、他に有るのか否かは知りません。見覚えがない使用例なので多分珍しいし、出品者の評価もこちらのウエートが重いのでしょう。でも、私的な好みでは、葉書の速達=濁点楠公の新改鹿8銭貼の東京の市内速達の文面に興味を引かれます。「拝啓 明二八・九日も引続き休業致し候に付御通知申上候 敬具」 二月二七日 東京府立第一中学校。戒厳令に拠る中学校の休校通知です。27日に出してその日に配達されてます。速達ここに在りの証明です。

検閲もなければ、文中に、叛乱云々の記載はなくても、正に二二六の速達そのもの、連れは、相当数出てるはずなので、この文面を手がかりに上手に探せば連れが見つかるかも知れないのです。

Lot3067 紫雲丸事故の付箋つきカバー

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国鉄戦後五大事故というのがあって、1951年の「桜木町事故」、1954年の「洞爺丸事故」、

1955年の「紫雲丸事故」、1962年の「三河島事故」、1963年の「鶴見事故」、いずれも死者が3桁を超えてます。郵趣的に直に絡むのは、「○○の事故・・・」又はもう少し固有名詞の少ない説明での遅延の詫び状の付箋つきのマテリアルです。日本絡みで有名なのは、洞爺丸、木犀号墜落、イタリアでのフィリピン航空墜落、よど号乗っ取りが良く知られてますし、何れも弊社のセールで数回は扱っており、いつもそこそこの値段で売れてます。クールにランク付けすれば、値段=「人気」は洞爺丸>よど号>木犀号>イタリアの並びです。このテーマは、国際的にも認知されていて、広い意味では、飛行試行の事故飛行中止や、川支延着や差出人戻し等の、正常に配達されなかった郵便物も含まれます。

ローカルの雑誌に発表はされていて、垂涎の的となりながら、現物が競の場に出て来ていなかったのが、今回の「紫雲丸事故カバー」そのものです。高松郵便局の事故から4日目の付箋付の通信事務書留速達、中には銀行宛の書留便、事故の悲惨さは次元が違うのですが、郵便物の取り扱いとしては完璧な措置が講じられてます。セールでもホットな競りになるでしょう。

3点目はLot3363 通信事務の第2種速達 京都中央郵便局の特殊部差出

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文面が強烈に面白く、「本日青ポストに投函されました・・、速達には切手が貼ってありませんでしたので、便宜当局で立替えて・・、追ってお電話を・・・」です。最近とんと見かけない、速達専用の青ポストですが、昭和28年には郵政も制度としての速達には強烈な責任感で仕事をしていたのでしょうか。

ちょっと嫌味を言うならば、料金不足の速達郵便物に「便宜立替て切手を貼って速達の扱いをするべし」は、郵便法には有り得ない規定だし、郵便約款(或いは郵便規則)にもその定めはないはずです。ただ、個人の郵便局員が、勝手に出来る仕事ではないので、地方郵政局か、中央局レベルの通達では有ったのかも知れません。実際、数回前の弊社のセールには、速達料金不足の郵便物に、郵便局が貼り足して、便宜配達し中身を渡して、封筒のみを取り戻して、差出人から料金を徴収した例があり、その根拠の法令も、確か地方郵政局の通達で出ていたことが確認できた実例も有るのです。ただ、これは郵便法の概念でならNGなので全国に適用される制度にはならなかったのか、いつの間にか沙汰闇に消えたのです。今回のマテリアルも流れとしては同じでしょうか。私はこういう話は好きなので、結構高い評価をするのですが、残念ながら反応してくれる人は少ないのです。実際、どういう使い方をするかは難しく、単に持ってないから集めるというレベルの人ならば、ちょっと料理に困るでしょう。結果を楽しみに待ちましょうか。