
今回のセールは目玉が一杯有るのですが、想定外のテーマでのご出品が有りました。中国本土での方針が原因で、字入切手の切手展での扱いが難しくなるそうで、展示に出せなくなるのでやる気が失せてしまったので売りたいとういうことでやって来たのです。中国での切手展での扱いとなると私は全く不案内です。詳しくは判る人に聞いて頂きたいと思います。
Lot2737~2795なのですが、その分野のコレクターにとっては垂涎のマテリアルが並んでいます。随分と前の強烈な印象の文献上で知られていても、マーケットに出てくることは想定していませんでした。コレクションのリーフそのものをジャスト100リーフ預かったので、記事の編集は楽でした。物が良いのでストレスが無いのです。最低値はご一任だし、今の評価で出品して、売れる値段は場での競りにお任せです。でも、良くも悪くも30年ほど前のコレクションなのですが、マテリアルの本質部分は当時も今も変わっていません。そして時を経たことにより、希少性の確定という視点で見れば、より輝きが増した物も目立ちます。
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今回のオークション、売上とかハンマープライスの額にはリンクしないのですが、書けるネタが一杯有るのです。金銭的には地味ですが表に出して記録しておきたいテーマです。時間を見つけて書いてみたいと思います。オークションの結果に影響を与えるのが嫌なので終わってからにしたいと思います。
オークション誌は10日(木)に予定通り発送しました。特約ゆうメールなので定形外の普通便ルートで流れます。JPの方針で祝祭土日は配達無しなので、月曜日には届くと思います。物流は国内はまだしも、海外がガタガタです。イスラエルは郵便はNG、アメリカも航空便は△=実際問題NGです。EMSで送りましたが想定通りに届くか危惧しています。でもやらないよりは良いでしょう。欧州はコロナ以外の要因でコンガラガッテいます。ベストのチョイスをしているつもりですが、カタログが税関で通関できずに戻ってきたり、関税がかかる為の受け取り拒否も少なからず有るのです。カタログは無価値のはずですが、相手国によっては通用しないし、日本サイドではどうにも出来ません。相手国の税関次第です。今のところはEUだけですが、今後は気を付けないといけないでしょう。
今回のセールには良質の大きいコレクションの一部が複数出ています。旧小判の最終回、極美に拘った新小判、新たに手彫がお二人からスタートしました。そして知る人ぞ知る、在支局のコレクション。中国本土の切手展ポリシーの変更故に弊社にやって来たのです。まさかという思いです。超一流のコレクションの売り立てなので、オークション誌は結構いい出来で仕上がっていると思います。表紙でちょっと遊んでみたのです。メールの方は【何それ?】でしょうか。葉書の写真のおじさんたちの名前を検索すればその理由が分かります。実は数回前に今回の連れが出ていて、随分と良い値段で売れました。出品者が場での競り上がり方に吃驚してその理由を聞いて来たのです。キッチリ教えたのですが、欲ボケの割には学習能力が無い人なのです。ご本人はこの表紙を見てもその理由は分からないと思います。余り高くならない方が平和かも知れません。
フロアの【Lot1521】発光15円の日立は、理屈が明瞭な珍品です。大宮=発光でそこそこ有るはずだという印象なのですが、日立は珍品です。機械の稼働日が分かっていて、4期間で合計21日しか無いのです。今回の日付が偶然にも最終日。物の出所はH13年に売られた、S45年調整のキリストの紙付というのは嘘では有りません。弊社のセールに、ちょっと前に切手商差し出しのエンタが出て、強い札を持って落とす気で場に来た人が頑張っても買えなかったのです。メールの一番値は100万以上だったことを覚えています。今回は単片なのでどういう評価になるのでしょうか。発光日立は浦和ならば有るそうです。
【Lot1854】梅花10円の宮良印は、オボロゲな話には聞いていたのですが、まさかこういう形で世に問えるとは思って無かった希品です。Philatelic Journal 2021に石澤君が19頁の論文を書きました。追いかけて私もThe Philatelist Magazineの2022 新春号に数頁の記事を書いたのですが、書き洩らしが有ったのです。私は物凄くポジティブに見ているのですが、その理由を書いていませんでした。扱ったのが、重義(弟)・正義(兄)の後藤ブラザーズとスティーブ長谷川さんだというのがそれなのです。沖縄で見つかってから取引された値段は、石澤君が評価している数字の二桁は下だと思いますが、この人たちが本物と思ってディールした事実は重いのです。沖縄暫定切手には通じてはいないでしょうが、それでもプロとしての直感が有るのです。RPSSのマクレランが一人で出した結論は罪だと思います。鑑定は、特にFakeの結論は慎重でなくてはいけません。物に対しての死刑宣告になるのです。悪意で無くても一人の思い込みでそれをやってしまえば取り返しが付きません。今の日本の鑑定でも、他人と議論できない人が、他にやる人がいないからという消極的な理由で、その立場で動いているケースが有るのです。怖いし、明らかに不味いことが起きています。遠からず表に出して議論せねばならないかも知れません。ネタも資料も揃って来ているのです。鑑定自体は法的な争いには馴染まないという、組織とすれば都合の良い免罪符が有るのですが、それで逃げられるとは限りません。それが成立するには民法での【善意注意義務】を果たしていることが前提です。やるべきことをやった上での単純過失なら、間違えていても免責でしょうが、それをすっ飛ばしての思い込みでの独断は許されないと思います。場所を変えて論じたいテーマです。
【Lot2164】旧小判45銭の無地紙目打13、本当は最終ロットにしたかった物なのです。記事は今回通りで最低値は1万で、当然ながらas isでです。意図的に鑑定書は外しました。これに関しては付けるのは野暮ですから。随分前の、連合の市田さんの時の物が付いていました。国際展でもそれを根拠に超目玉として展示されていた物なのです。このアイテムは小判というよりも、当時の目打の研究家としての第一人者、小川孟氏のご自慢の逸品だったのです。1970年代後半か80年代の頭だったと思います。小川氏がメキシコのグアダラハラ自由大学に赴かれることになり、コレクションを一括で処分されたのです。口約束が為されていたのですが、スッタモンダが有ったそうです。当時は物に飢えていた時代でした。皆さん、特にお二人がお元気でギラギラしていた時だったのです。目玉はこの切手です。このディールが因となって、ビッグコレクターが刎頚の友から不倶戴天の敵に変わってしまったのです。問わず語りで双方から昔話を聞かされました。お二人共にコレクターとしての面子とプライドを意識されていたのだと思います。物をクールに評価したならば、最低値は1000円か、100万かのどちらかかなと思います。値段以上にどうしても表紙に持って来たかった物なのです。今となれば値段なんかはどうでも良いのです。
旧小判の目打13には思い入れが有るのです。45銭白紙の13は2枚扱いました。期待したとおりに関西在住のお二人に入っています。全く同じ印象の物が、12銭の白紙に有るのです。オッペンレンダー氏が持っています。もう1枚、想像していなかったのが、50銭薄紙の13です。50銭の場合、薄紙は最後期の印刷でも矛盾はしないでしょう。これも勿論表紙に載せて売りました。45銭の白紙の13をお持ちの方が買ってくれました。私の評価では3銭の11Nよりも格は上だと思います。でも、誰も付いて来てはくれません。45銭の13、勿論白紙の方ですが、番野さんと話をした事が有るのです。結論は、ペアが有れば良い、いや耳付なら使用済でも構わない。12銭でも、30銭でもOKだよ、が結論でした。巡り合える機会が来るのでしょうか。
表紙では無いのですが、書きたいネタが有るのです。在支局の消印です。発端は、丸一のチーフ―の半欠けを見つけた事です。多分新発見かと思います。値段には全く繋がらないし、使えません。最低値は1000円しか付けません。でも少ないことは確かです。今回の一連の山東省の消印でも同じような物が有るのです。博山と周村の電信取扱所です。関連して支那字で思い出したことが有りました。30年かそれ以上前かも知れません。書き甲斐の有るテーマなので覚えているうちに書いて置きたいと思います。昔話でなく今に繋がる事でも有りますから。
大分時間が空きましたが少し時間だ取れますし、いいタイミングで美味しいネタが入って来たのです。2月2日に開催されたアメリカのCHERRYSTONE AUCTIONのレポートです。為替レートはUS$1.00=115円・落札手数料は15%です。日本のオークションシーンでの手彫エンタの相場と今回のハンマープライスの違い、一体何が起きたのでしょうか。桁違いに高いのです。
Lot846 $15,000→29000=385万円 竜48文2枚・500文3枚貼 神奈川検査済

Lot847 $5,000→9,000=120万円 竜100文1版を裏に貼 西京検査済

Lot854 $2,500→12,000=160万円 玉六ル貼上海宛 白抜十字+朱◎YOKOHAMA PAID ALL JUL・31・1875

Lot863 $15,000→30,000=400万円 洋桜30銭イペア(シミ)貼英宛 大型白抜十字+朱◎YOKOHAMA PAID ALL SEP・25・1875

Lot866 $1,500→32,500=430万円 鳥15銭、房2銭貼英宛 白抜十字+朱◎YOKOHAMA PAID ALL FEB・12・1876

Lot894 $1,000→10,000=132万円 改桜10銭ニ貼米宛 白抜十字+朱◎YOKOHAMA PAID ALL APR・13・1876

今の日本の相場の3倍から5倍でしょうか。共通項は朱◎YOKOHAMA PAID ALL、日本人では絶対にこの評価にはなりません。私が知らない海外のビックコレクターがお二人以上現れたのかな。ここで取り上げた物に関しては解説のしようもないのです。ただ只管口あんぐり状態です。でももう一点はしっかり書けるネタを持っています。
Lot864 脇無半銭に鳥15銭、改色4銭、房2銭貼英宛 白抜十字+朱◎YOKOHAMA SEP・11・1875 $1,500→9000=120万

懐かしいし、思い出深い物なのです。私が嘗て買えるチャンスを得ながら、手に出来なかったマテリアルとして忘れることが出来ない、数点の内の1点です。1980年代の後半でした、イギリス人のブローカーの、デービッド・ディグリーがアプルーバルの条件で送ってくれた現物です。値段もしっかり付いていたのですが、二つ折れ葉書の外信使用、UPU未加入なので勿論葉書の料金は生きていません。でも、日本の官製はがきで最初に海を渡った物というステータスは消えません。改めてオークション誌を見直したのですが、あの時と同じく買えない理由が見つかったのです。鳥15銭の消印です。他の3印とは雰囲気が違います。この条件が有ったので、飛び込むことが出来ませんでした。改めて見ても同じ評価になるのです。でも、もし脇無1銭で、鳥15銭・改色4銭・房1銭=葉書料額含めての21銭だったなら、駄目元の後貼承知で買ったかも知れません。それ程に遊びたくなるネタなのです。何れにせよ今回の120万はちょっと高いかな。参考値が1500ドルなので、売れるとは思って見ていたのですが、手の届かない数字なので有る意味安心できました。どなたがどんな評価をしたのかが気にはなるのですが、それを聞く機会は来ないかなと思います。でも、この葉書の存在は幻では有りません。コレクションには使えない物だとしても、日本の二つ折れ葉書の外信使用は存在しないと書くのは間違いだと思うのです。
119回フロア・JAPEX特別セールは入稿完了、10月8日(金)発送です。大阪での下見の準備は出来てますので何時でもお越しください。
オークション以外で懸案だった2件でほぼ方向性が見えて来ました。後、ワンピースが埋まれば私なりに完結出来るのです。一つは、【東芝ゼロ円】が郵摸違反で摘発された件です。9月9日の報道発表で公の結論が出ています。東京地検は、書類送検された8名を不起訴にしました。その理由は明らかにしていませんので、それを探る術は有りません。恐らくは誰よりもコアな資料を持っているので、発端からかなり詳細に書く自信は有るのですが、総務省郵便課と議論を重ねて来て絶対に確定しておきたい最後のピースが埋まってからにします。明らかになった事実を元に、起きた現象を推測して論じるしか無いのですが、出来得る限りの検証はして置きたいのです。警視庁との会話での共通の結論は、警察は馬鹿じゃないので同じ案件でこれ以上は動けない、それにしても郵政民営化はどうなんだろうか・・、だったのです。
もう1点は、【印刷鑑】完全復刻のご案内です。JAPEX前に発売される、ビジュアル日専・手彫版の巻末に11ページのコラムを書いています。テーマは国際展とお伽話なのですが、そのイントロに、印刷鑑を初めて完全に復刻した話を持って来ています。横40.3センチx縦27センチで、表紙以外に中タイトル、旧小判が2種類、印紙が1種類、債券と地券の6ページで全てです。銘版が他には無い物が有りますし興味深い資料です。カラーコピーで作成して折らずに送ります。A3サイズなので、割引料金が使えず、送料が結構高くなります。代価は送料込みで1000円です。こちらは何時でも送れるのですが、おまけを1ページつけようと思っています。ビジュアル日専コラムではちょっと抜けてしまった事が有るのです。【印刷鑑】の最後のパートの11年の蚕種免許印紙の再構成の経緯と、2ちゃんねらーのお兄さんが持ち込んでくれて、国際展セールに出品した1次昭和1円の無目打エラーの素性です。ゲーベル印刷に無目打は存在しないという定説を覆せる物が見つかったのです。フライング情報なのですが、郵趣研究にその記事が発表される前に、書いて置きたいと思います。これは【印刷鑑】の復刻版を買ってくれた人だけに提供できるプレゼントです。日専ビジュアル・手彫の発刊とタイミングを合わせたいと思います。だから【印刷鑑】の発送は、10月中旬以降に致します。ご注文は代金後払いでお願いいたします。こちらの最後のワンピースはこれから頑張って書きますよ。
オークション誌発送後1週間経過です。ビッドもそうですが、早速いろいろとお問合せをいただいております。既に一部の方の札を見ておりますので、それに絡むことはセール終了までは書けません。元からオークション誌には書けないけれど、開示して差しさわりの無い、ちょっとした情報をここで書いて置きましょう。
Lot990 【青島軍事】 未使用 よく聞かれる質問なのですが、オークションでは何が売れますか?というテーマが有るのです。簡単にはマーケットに出て来ないけれど、或る程度物が有って、金額が張って、欲しい人が沢山いる物という意味で言えば、これが一番かも知れません。ボストークコレクターでメインナンバーでこれだけが抜けていて、気に入れば金銭的に全く問題が無い人が何人かいるのです。10数年前には連続で数枚扱ったことが有ったのですが、ここ10年位は全く縁が無かったのです。今回の物は、多分弊社で扱った現物だと思います。鑑定書が面白くて、日本郵趣連合 金井宏之氏のサインです。No.1504 平成12年5月8日です。ご丁寧に、鑑定書自体にNo1154と同一品です、の記載が有ります。正確な日付はトレースできないのですが、市田左右一氏の時代だったのかと思います。効力には何らの瑕疵は有りません。綺麗な田型を除けばかなりハイレベルだと思います。小OHですがセンターはこれで十分です。未使用とすれば最良の状態です。フロアでの競りが楽しみです。メールビッドでは落とせないでしょう。
Lot991 【かつおつり】 全型目打12・透かし無し・糊付、この3条件を満たす偽物は存在しないのです。序でながら耳付で全型なのですが、この切手に関しては目打も当局製で無いので、耳には抜けていないのです。鑑定書(正確に言えば、山本義之・中井輝典・新生スタンプ連名の書面)が付いていないのですが、それには理由が有るのです。100%の確認は取れて無いのですが、昭和40年と41年に2回に分けてシートが分割販売されているのです。ほぼ半々だったと思います。最初の売り立ては鑑定書無しだったのかな。マーケットに出て来る鑑定書付は、昭和41年1月14日の日付のはずです。この時の売値は35000円でした。今回の物は1次の分割品なので鑑定書無しですが、目打12の糊付で透かし無なら偽物の心配は要りません。それ以外の、無目打・糊無は、まず透かしを見て下さい。透かしありは100%偽物です。透かし無の偽物が有るかどうかは断言できないのですが、南関東の政治家の保家氏の無目打シートは、郵趣サービス社が分割販売しています。この時には全て切手の博物館の鑑定書付で売っていますので、紛れが生じる恐れは有りません。残念な情報が有るのです。無目打・糊無・銘付10B・透かしありで、鑑定書付の物が有るのです。弊社に2度、出品物として送られて来ましたが、事情を説明してお返ししました。売った人も分かっているのですが、ここではそんなものが有るという注意喚起に留めます。かつおつりで市場に有る本物は、新生スタンプ分割の目打ち有り・糊付・透かし無と、郵趣サービス社の無目打ち・糊無・透かし無しか有りません。そしてシートは、この2タイプ共に、国内に於いては旧逓信博物館にしかないはずです。
Lot784~991は綺麗な未使用を熱心に集められていた人のコレクションです。手彫他の本体は、大分前に弊社で処分されていい値段で売れていました。それが全部だと思っていたのですが、こんな物が残っていたのは嬉しい喜びでした。オークションで競り勝って買ってくれていたので、買い値は安くありません。基本的には往復の手数料はマイナスになるはずです。でも、【青島】と【かつおつり】は別格です。今の方が勢いが有るのです。最低値は絶対に売れる値段で付けているのですが、お支払額が買い値を超えることを期待しているのです。
Lot1177 三五六の5銭独宛 OCT.25.1878 YOKOHAMA消 UPU加盟と葉書は強烈にリンクしています。面白いテーマでは有るのですが、ドンピシャの書きたいマテリアルが中々出て来ないのです。でも三五六なら単品で勝負が出来るのです。日付が最重要です。今回の物は秀逸です。葉書の発行が1877.11.20、独宛5銭は1879.7.31までです。三五六の3銭と5銭は随分と新規の物が出て来ていて、20万も出せば結構良い物が買えるでしょう。でも、日付に拘れば難易度は格段に上がります。2種共に適正期間の適正宛を揃えている人は果して何人いるのかな。その上に今回はこの消印、頑張って落し切って後で後悔はしないでしょう。
Lot1328ー1338 旧中国孫文です。当時現地にお住いだった著名なコレクターの遺品です。ご親戚のコレクターが30年程抱えていて、手付かずに今回巡り合えました。このテーマは当時は随分と賑やかだったと思います。でも、実逓のエンタが無いのでオークションのネタにはなりにくいのです。私の知識では個別のロッティングは出来ません。大きく分けて、フロアセールの場に出せば見る人が見て、競って買ってくれるでしょう。正直、ご希望者が何人いるかは全く見えていないのです。10年に一度の日本国際切手展のオークション、場所とすれば最高だと思います。まさかこの分野のコレクターさんで見落としは無いでしょう。
Lot1561-1577 著名人の書簡です。このテーマで切手の世界で売る場合、条件が有るのです。直筆が絶対です。印刷は無価値です。そして人物とすれば、山川出版の高校の日本史の教科書に出ている人か、切手になったか描いた人。欲ボケの出品者はWikiに出ていればそれが著名人だと勘違いして、素っ頓狂な物を出してくることが多いのです。歌人・俳人・日本画家は基本的にNGです。別の場所で売って欲しいのです。綺麗ならまだしも、キズや読めない物はオークショニア泣かせです。今回は良い物が有りますよ。澁澤栄一、清瀬一郎、湯川秀樹・・みな条件を満たしています。残念だったのは、平沢貞道(帝銀事件)は次の機会となりました。大きい、アコーディオンブックの方は更に豪華です。東郷平八郎、後藤新平、板垣退助・・。同一人宛で封筒のみをベタ張りです。在北海道の内田武一氏宛ですが、この人の素性は判りません。政治家か軍人か官僚かと思うのですが・・。切手のオークションよりも、古書の方が高いかも知れません。でも、封筒だけで、手紙が一切なしが微妙です。もし全部残っていたらさぞやいい値段になったでしょうに。
Lot1736-2000 U小判
Lot2158-2169 飛脚便
Lot2207-2558 旧小判
何れも超一流のコレクターの遺品コレクションです。書き込みがしっかりしている、リーフの状態で預かっているので、編集は楽なのです。物は一級品、状態は極美、値段も張る物が多いのです。オークショニア冥利に尽きますよ。分類は基本的に故人のそれを尊重します。勿論、深刻な意見の相違は有りません。でも、値段が問題です。良い物をオークションで競って競争者を撥ね退けて買われているので、明らかにその場の勢いでの高買いされている物が多いのです。結構買い値のメモが残っていて、その数字を見ると、今の相場が御気の毒になる物も少なくありません。それは変えようが無い現実なので、納得して貰うしか無いのです。ディスクライブは有るがまま、見たままの表現です。最低値は今まさに現役の私の評価で、売れるだろうの数字で付けました。中には手品を使っても昔の値段に近づけて売りたいような物も有るのですが、それは市場に任せましょう。物が良ければ、今だって欲しい人がいると思います。良い物は競って、高くなるのがオークションの神髄なのですから。
懸案の【郵摸】案件、やっと動き出しました。総務省郵便課に書面を送ってほぼ1ヵ月が経過しても何らの音沙汰も無かったのです。コンプライアンスマターととして、総務省監察室にメールを送ったところ、今日返事がきました。予想通りの内容です。「当室は総務省職員についての法令違反他を担当している為、お申し出の案件は対象外なので、該当部署に回します」です。仕事上のミスや能力不足での間違いは対象にはなりません。でも、効果は絶大で、踵を接して郵便課から即刻、電話が有りました。来週中に書面での返事をくれて、それをたたき台にして私と議論したいとの事です。こちらは既に準備が出来ているし、論点の整理も完了です。現在進行形の案件は【東芝ゼロ円】なのですが、警視庁保安課の解釈は、【郵摸】の条文に於いて、東芝ゼロ円のオリジナルが合法に扱えるのは、当初の目的に則して正当に利用した東芝株式会社に限られるということです。詳細は繰り返しになりますので、今は流しておきます。もし警視庁の見解が正しいのなら、【みほん】を合法的に使えるのは、郵便局だけで有り、周知・公報・照鑑以外に売買や頒布すれば、それは【郵摸】で摘発されるという事になります。法の不遡及と、公訴時効を除いての原則論で議論をして、【みほん】の合法性を確認したいと思っています。もし、みほんの販売が違法ならば、カラーで切手の図版が載っている、書籍も全て、出版元が最初に売った時以外は違法になってしまいます。【郵摸】の後半部分は売り手の属性を限定している物では無いのです。電話でその旨を話したところ、趣旨は理解してくれています。当初に照会を受けた弁護士さんが警視庁に出した返事を元にしての議論になるのですが、兎も角返事を待ちましょう。
今回のオークションでも、みほんで面白い物が出ています。ギャグですが、法的には時効になっているので、これを売っても【郵摸】で摘発はされません。Lot308は木工船2銭の横ペアです。タイプ12+15なので、山本義之さんのデータには有りませんでした。2次昭和と3次昭和+同時代の記念切手は字体に多くのバラエティーが有るのです。100面シートでの加刷なので、ブロックが有ればPosも分かるかも知れません。2昭の3銭と7銭は塊が有るので研究は結構進んでいるようです。船の2銭はペアでも少ないし、このタイプは単独でも珍しいと思いますし、タイプ違いのペアは貴重です。

Lot1237は菊5円・10円のひらがなみほんです。発行周知用は見本で、朝鮮と台湾まで有るのです。平仮名は、後年の大字しか見つかっていないと思います。それ以上に、今回の物は他に例を見ないタイプです。菊は無論、田沢にも無いと思います。無加刷未使用の価値から判断して、偽物の可能性も無いでしょう。しっかりした活字なので、後年の照鑑用だとしても、連れが全く見つかっていないと思います。でも、1点有るという事は、複数あっても良いはずだと思っていますが、買った人が研究してくれるのを望みます。

Lot6154は吉野熊野の小型シートです。異形の字体です。他には無いし、それ以上に、4種の切手で全て字体が違うのです。たとうが無いのが残念です。ごく最近に海外のオークションの出ていたロットの1点です。このステータスは、正に見たまま以上の物では有りません。

ほんの1回のオークションでも、こんなに楽しい物が出て来るのです。【郵摸】をきっちりクリアして、みほんも安心して買って頂けるようにしたいと思っています。
本日、第118回フロアオークション誌【日本国際切手展記念セール、8月29日開催(メールビッド8月26日締切)】を発送いたしました。同時に大阪の事務所での下見も可能になっております。今回は目玉品が沢山集まりました。物が良い物だという前提が有っての事ですが、意識的に編集したのでテーマで見易く並んでいることが多いのです。どの分野でも注目品を含んでおり、大いに楽しんで頂けると思います。旧小判は超一流のコレクションのPart1を出しました。誰もがご存じの珍品は無論ですが、前所有者のお気に入りの物が目白押しです。骨格とすれば、1997年のサンフランシスコ国際切手展に出品されたコレクションが主体です。その後に入手された珠玉の別枠のエキストラの追加分も有るのですが、アルバムへの書き込みは桑港展の物を其のままの状態で預かりましたので、編集に際しても基本的にはその分類を尊重しています。
1点だけ勝負したいものが有りました。Lot2287 6銭無地の未使用です。リーフ上の展示箇所は、エスパルトよりも上で、無地としての位置づけです。初期色で無斑点の縦紙なので、無地と書いて何の問題も有りません。でも、かなり薄いのです。平滑で無斑点、色は蒼白と表現できると思います。同じ紙が50銭に有れば躊躇なく【薄紙】と書くのです。クールにデータを数字で並べて見たいと思います。厚さはマイクロメーターで計測したμ表示です。今回の場合に限ってですが、贅沢な検証が出来るのです。機械計測での比較の数字が命なので、条件が均一でないと駄目なのです。完全未使用で、オリジナルガムの部分を2か所+測りました。そのデータを並べます。
額面 発行日 厚み(µ=ミクロン) Lot番号
1銭黒 1876.5.17 55.50 2252
2銭狸 〃 54.50 2259
4銭 1876.6.23 55.00 2272
5銭 〃 59.50 2284
10銭 1877.6.29 56.75 2220
6銭 〃 64.60 2287
3銭 1879.6.30 62.33 2322
50銭 〃 62.50 2335

発行日を基準に取れば、前後半で4種ずつ2組に分かれます。厚さで分ければ、前半5種と後半3種で2組です。さあ、この6銭、どういう位置づけになるのでしょうか。60μ未満ならば良かったのですが微妙な数値です。【欲目の薄紙】結構気に入っている表現です。眼で見てわかる特徴もそうですが、こうやって並べると単独では見えない部分も見えて来るのです。薄紙は短期間のみで使われています。目打9Sは有りません。出現期は11年~12年ですが、短期集中でのスポットの使用とは限りません。3銭・50銭は主力に近い使われ方ですが、1銭黒~10銭は主流では有りません。さあ、6銭はどうでしょうか。見つかっていなかったから、頭ごなしに否定はできないと思います。同じような例が、45銭の白紙の13(複数存在)と50銭の薄紙の13目打にも有るのです。表紙に使っての最低値5万円、評価は???
発端は、今年1月の報道でした。ヤフオクでの切手の模造品が取引され、それが【郵摸】で摘発されたというニュースでした。予想外でしたが、嬉しいニュースでした。被摘発者の代表に富山の男性という情報が有りました。恐らくはヤフオクでの素っ頓狂な偽物を反復、継続して出品している、ID tsumekome・・・さんだと思います。摘発者は警視庁・保安課でTVや新聞でその一部を見ることが出来ました。まさか、【郵摸】での摘発とは正直期待していませんでした。【郵摸】は違反者を摘発をするのが目的の法律だと思っていなかったのです。マスコミに出た画像は、なる程と納得できる物でした。でも1点気になる物が有りました。「東芝ゼロ円」です。ヤフオクに出品されたときから気づいていたのですが、tsumekome氏の出品物はそれの現物でなく、ごく最近作った、光学機器を用いたリプリントだと思います。ビードロの摸刻、現行切手への悪戯と同じく、【郵摸】でアウトの物で間違いないと思います。その根拠は既に詳しく書いています。でも、ちょっと気になったのが、「東芝ゼロ円」のオリジナルを誤解しないかという事でした。この時点で、横浜の古物商が、馬鹿げたやり方で本物をヤフオクに出しまくっていましたから。【郵摸】の条文と現物の性質を慎重に読めば、これは【郵摸】に該当しないのは明らかです。作られたのが昭和41年で、【郵摸】施行が47年12月なので、法は遡及できません。また、【郵摸】に基づく物では無いのですが、作成時に郵政大臣の許可を得ています。どう見ても合法なのです。全郵普の90年スーベニア―と同じです。そして、【郵摸】で摘発できるのは、違法物を扱った場合に限ります。かなり対象が限定されているのです。
郵趣に関してはド素人の横浜の古物商、「東芝ゼロ円」は貰ったか、廃紙を拾ったのかしたのでしょう。千載一遇のチャンスだと舞い上がったのだと思います。実際に良い値段で売れました。下邑さんの印紙のカタログには20万の評価で出ています。かつてこれがマーケットに最初に出た時に動いた値段がそれでした。その後オークションに散らほら出て、10万位で落ちていました。縁あって私の手元にある程度の量が来た時は、5万位が相場だったと思います。ゼロ円も二本バーも、私が扱った時点で、絶対的に合法物だという確認を取って売っています。
5月の報道で吃驚です。マスコミにでかでかと「東芝ゼロ円」が出ていました。【郵摸】で摘発されたのが53歳、横浜の古物商、ヤフオクで1000万以上を荒稼ぎ、そしてお気の毒にこの人の出品物を買って、転売した人たちも芋ずる摘発です。「東芝ゼロ円」が【郵摸】に該当しないことは確信が有りました。超一級の裏付け資料が有ったからです。だから、警視庁・保安課に電話した上で資料を手紙で送りました。無視されるかなと思ったのですが、電話で返事を貰いました。保安課の広報担当の方でした。ご機嫌の口調で私の問いに答えてくれたのです。1月の件では、富山の男性が、5月の件では横浜の古物商がターゲット、「東芝ゼロ円」を【郵摸】違反で摘発したと明言していました。当然ながら私は聞いたのです。リプリントは【郵摸】に触れるけど、オリジナルは合法でしょう。法の施行と物の製造は日付が逆なので遡及は無理でしょう。オリジナルをリプリントと勘違いしていませんか。富山は立件できるけど、横浜は無理ですよ。明瞭な答えが返ってきたのです。リプリントもオリジナルも両方ともに【郵摸】で立件できる。オリジナルに関しても、【東芝】のみが、自動取り揃え押印機のテストに使う場合に於いてのみ合法であり、それ以外は全て違法だと言うのです。警視庁の保安課の刑事が夜も寝ずに捜査して、書類を地検に送っている。当然ながら起訴されて有罪になるに違いないという主張でした。そしてこの法的解釈は、警視庁でなく、郵政省郵便課に書面で送って、顧問弁護士の確認の上で書面で返事を貰ったので自信があるという事なのです。
【郵摸】の法文を読んでも、この法律に於いて合法な物を、特定の属性を持つもの以外がその目的に反して販売した場合に処罰するとは書いていないのです。警視庁の解釈は法理論として滅茶苦茶です。マリファナなら、医薬品として使うなら合法、それ以外は違法だと薬事法?に書いてあると思います。「東芝ゼロ円」を扱った横浜の古物商が法に問われるのなら、【郵摸】でなく、ネコババ=占有離脱物横領か、所得税法違反位だと思うのです。窃盗・横領・背任は実際問題無理でしょう。幸いにも電話で話が出来ているので、論点を絞れているのです。「東芝ゼロ円」の東芝以外の第三者の販売が【郵摸】に抵触するか否かを法的に判断したいのです。警視庁にこれ以上問い合わせるのは無意味です。【総務省郵便課】が書面で【郵摸】に触れるという返事をした故に摘発したのだからです。この件を聞くべき相手は、総務省・情報流通行政局・郵政行政部・郵便課です。だから。7月1日にレターパックで書面を送り、翌日に到着したことは確認済みです。でも、今日の時点で返事は来てません。【郵摸】は、公訴時効が3年、必要弁護人事件では有りません。地検の判断はまだまだ先だと思いますが、どう考えても検事は起訴は出来ないと思います。一般的な数字なのですが、書類送検されての起訴率は38%に過ぎないのです。起訴された場合の有罪率はほぼ100%ですが、検察事務官が法律をチェックして、財務省印刷局に問い合わせれば物の性質が分かります。上司は100%有罪の確証が無いと決裁を通しません。横浜の古物商には余り同情を感じないのですが、同時に摘発された、40歳代の女性の事が気になるのです。ほんの数点のゼロ円をヤフオクで落として、小遣い稼ぎ?に転売したら、警察から呼び出され、家族や勤め先に知られたらどうなったのかな。ヤフオクのへんてこな物でボロモウケの輩を懲らしめるというチクリの投書が発端かも知れません。そのこと自体は善なる行為でしょうが、無実の罪で法の場に引っ張り出された人の気持ちを思えば、放置はできないのです。ヤフオクでの【東芝ゼロ円】シャットアウトは、【郵摸】が根拠では有りません。マスクの転売禁止と同じでしょう。ヘンテコなラベルを売っての大儲けが怪しからんという判断なら、それは理解できなくも無いのです。でも、手彫のおもちゃを流通も同時に止める事の方が大事でしょうが。
総務省・郵便課には、まず電話して名乗った上で、警視庁・保安課から紹介された旨を知らせて書面を送っているのですが、3週間経過しても何らの反応も無いのです。かつての郵政省の時代なら我が事としての対応がされたかも知れませんが、郵便切手は民間私企業の証紙です。郵便課は監督官庁であっても、お役所のステータスとしても随分と下部に位置する立場でしょう。これ以上返事を待っても仕様が無いと思います。幸い、総務省にはコンプライアンスの部署が有るのです。そこに通報して返事を待ちましょう。芋ずるの一番下で、無実の罪で、とばっちりで摘発されて警察のお世話になった人、もしそのことが原因で人生が変わってしまったなら、アメリカなら大変でしょう。数億円の損害賠償の訴訟の対象になりかねない事案だと思うのです。総務省監察室の返事を貰え次第ここで公表いたします。
改めて、法律第50号 昭和47年6月1日公布・同年12月1日施行の郵便切手類模造等取締法を載せておきます。
第一条 郵政大臣又は【外国政府】の発行する郵便切手その他郵便に関する料金を表す証票に紛らわしい外観を有する物は、製造し、輸入し、販売し、若しくは頒布し、又は郵便切手その他郵便に関する料金の証票の用途に使用してはならない。
2 前項の規定は、同項に規定する物で【郵政大臣】の許可を受けた【もの】を製造し、輸入し、販売し、又は頒布する場合には、適用しない。
第二条 前条の第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
飯塚博正さんからアドバイスを頂きました。法令用語の解説です、「者」と「物」と「もの」には使い分けがされているのです。「者」は自然人や法人、「物」はそれ以外の有体物で、「もの」は抽象的なものに用いるとのことです、人物は「者」物体は「物」、自然現象や人の気持ちみたいな目に見えない存在物、宇宙のような漠然としたものが「もの」ということでしょうか。2項の【もの】ですが、助詞が【を】なので、【物】に置き換えて良いと思います。対象物が違法か否かで、それを製造・頒布した者が法に問われるということです。対象物の違法性が確定していてこそ、処罰の対象になるのです。
この法律で全てが決するのでは有りません。『総務省の郵便切手類の模造等』に実務上の詳しい説明が出ていますので、是非読んで頂きたいのです。
総務省|郵政事業|郵便切手類の模造等 (soumu.go.jp)
「取締りの対象となる郵便切手類とは」の項目に使用済みは対象外と明記され、未使用の【現行切手】に紛らわしい物が本法の対象と記されています。この定義は後で論じます。直ぐ後に、》総務大臣の許可を得たときは製造等ができる場合があります』に続いて【許可をされたとみなされ、許可申請を要せず、製造等ができる場合】が示されています。主として、サイズや材質で切手と間違える恐れが無いケースを示しています。その最後に、(9)外国で製造された模造切手類を輸入する場合で、そのものが当該国の郵便切手類等取締関係法令に違反しないもの。ただし、郵便切手類模造等取締関係法令の規定のない国から輸入する場合を除きます。と記されています。数回前に書きましたが、現行の【郵摸】法の起案の際の郵政省の便箋に書かれていた、万国郵便条約73条(模造変造等の処罰に関する条束)を批准している、UPU加入国がその対象だと思います。第一条の【外国政府】の発行した切手模造品が、日本の【郵政大臣】の許可を受けねばならないという事では有りません。当然ながら、世界中の切手をデータベース化して、違法・適法の判断を日本の当局がやるはずもないのです。【外国政府】と【郵政大臣】とを繋げる発想は普通の人ならば持たないと思います。外国切手のみほんやプルーフは当然ながら対象外です。許可申請は不要です。
【現行切手】の定義は簡単では有りません。特に郵趣家が持っている生半可な知識が邪魔になるのです。郵趣家は条文に書かれていない言葉まで、自分の知識に置き換えて常識では通用しない判断をすることが有るのです。ここでの議論はあくまで【郵摸】法です。現行切手=郵便法上の有効な物とはどこにも書かれていないのです。郵便切手に誤認される物を排除するのが目的です。郵便法に有る定義をそれ以外の法律に機械的に適用させるのは無理だと思います。旧【郵摸】=明治42年の逓信省令にも有るのです。第3条 ・・・【現行郵便切手】・・・、ここでも郵便法に限定しての有効性には触れられていないのです。郵趣家の思い込みで同時に思い上がりなのですが、郵便法での効力を一律に引用していることが多いのです。係争になり、最高裁に行って、確定判決だ出れば別ですが、全ての法律に於いて、郵便切手の有効性が郵便法上の規定にのみ合致するとは私は考えていないのです。現行切手の定義は、普通に流通している物で額面で購入できるものと置き換えて良いと思います。実務で言えば、海外からの輸入貨物に掛かる消費税ですが、効力を有する日本の郵便切手は有価証券なのでHSコード49:07で非課税です。でも、菊1円や月雁は郵便料金として使えますが、それを理由にして有価証券の主張は出来ません。49類=有価証券でなく、97:04の日本製の骨董品として免税の結論を得るのです。額面を生かす事よりも骨董的な価値が上なので、その判断を優先させるのです。このケースでは、法律の適用根拠が違っていても、結果は同じ事なので争うのは無意味です。旧【郵摸】は施行が明治42年なので、郵便料金としての使用禁止は、竜と桜、「5厘を除く」旧小判だけです。明治42年では一部ですが新小判はまだ現役だったと思います。この時点なら菊と新小判が現行切手、法律はそのまま続くのですが実情に追随して適用範囲は変化します。大正時代になれば、新小判と菊は現行からは外れるし、終戦時なら田沢・風景も非現行だと思います。郵便法で生きているから、それが現行切手だと主張して論を張るのは、一部の郵趣家だけなのです。今の【郵摸】でも、手彫と5厘以外の旧小判、昭和の追放切手、1回国勢、飛行試行以外は【現行切手】だから【郵摸】の対象だと考えているとは思いません。細かいことに拘れば、GHQ命令での追放切手には記念切手は含まれません。軍国主義や戦意高揚の物がNGならば、日韓併合も満州建国10年も国立台湾も当然その対象になるのですが、これらは【現行切手】という認識外なので対象から外しているのです。旧小判5厘が郵便法を根拠にして有価証券だと言い張る人の意見は認めたくありません。結論付けるなら、異論は有るでしょうが、1円未満の全ての切手と新小判~田沢の1円~10円が非現行かなと思っているのです。次は、警視庁保安課との遣り取りに入ります。
まず触れておきたいことが有ります。基本的な情報ですが、郵便切手の有価証券としての偽造は、有価証券偽造罪にはならずに郵便法により処罰されます。正確に表現するなら、太政官布告に始まり、郵便規則、郵便条例、旧郵便法、新郵便法に受け継がれます。こちらに関しては法的な空白期間は有りません。でも、収集目的での模造は意味がだいぶ違います。前回書きましたが、発端は明治42年の逓信省令です。この時以前は、法律が無く、当然処罰も出来ません。和田小太郎の偽物はそれ以前に作られており、作成時もその後も処罰の対象にはなりません。法の不遡及の概念からも、法律が出来た後なら違法な物も、許可を受ければ適法になるケースでは、法律の無い時には許可申請を出すすべがなく、当然ながらその後も届け出の義務は有りません。許可申請が不可能なので当然ながら無申請でも処罰はされません。和田の偽物が郵便法に触れるのなら作った時から違法ですが、使用済は勿論、未使用も当時としての現行の物と判断されずに郵便法でも違反にはならなかったと思います。【郵摸】は法律自体が不存在なので議論の必要は有りません。
明治42年の省令65号は逓信省が郵政省に変わった、昭和24年5月31日までの期間で法的効力を持っていました。この間に【郵摸】に触れる物は逓信大臣の許可が必要だったのです。実例も残っていて、小島勇之助氏の日本愛郵会の竜や村送りのシート写真集には許可の事実が表示されています。切手そのものに類する模造品での実例は私では思い浮かびません。許可を得ての合法品、無許可の違法品共にです。
昭和24年6月1日に、前回記した理由で、旧【郵摸】の法的効力が消えたのです。新【郵摸】の施行は、昭和47年12月1日です。この間は空白期間で有り、【郵摸】は存在しないのです。意図したかどうかは判りませんが、もし【郵摸】が有ったなら、違法になった物も数多く作られているのです。趣味の切手社=清水裕雄氏の昭和~新昭和のパケット用の模造切手、切手経済社の月雁見返りの無目打摸刻、郵便創始80年(昭和26年)及び90年(昭和36年)の郵政省や全郵普、各地の郵趣会等の竜切手他の摸刻シート、これらは昭和47年12月1日以降に作ったのなら、許可を得て無ければ違法です。でも【郵摸】空白期間の作成なので、許可申請を出すすべもなく、当然必要も無かったので、ごく自然にマーケットに流通したのです。法律が出来たからと言って、改めて許可を取る事は無理ですし、勿論必要では有りません。当時も今も違法でないので、製造者は罪に問われることは無く、販売、頒布も自由です。【東芝ゼロ円】は郵政省郵務局の許可が昭和41年11月20日なので、この期間にモロに合致しています。全郵普の90年スーベニアと同じ位置づけで捉えられるべきものなのです。どう考えても違法にはなりません。全郵普のスーベニア―を郵摸違反だとは誰も思わないのに、東芝ゼロ円に目くじらを立てる人がいることに驚きを禁じ得ません。もしそうなるなら、日本郵趣出版のカラー印刷本も、空白期間の出版で許可申請が出ていなければ全部郵摸違反になるという珍妙な理屈を主張しているのに等しいのです。有り得ない暴論です。
全くの偶然で、私の手元には東芝の作成依頼書と、それに対応した郵政省郵務局長の許可書が有るのですが、これは【郵摸】とは無関係な物なのです。この法律自体が存在しなので郵摸・許可は有り得ない事実です。ゼロ円と2本バー加刷は、郵便物の自動取り揃え押印機作成に当たっての機械の精度を上げる為のサンプルとして、東芝及びNECに郵政当局が便宜供与した物です。費用はゼロでの供与という事での大蔵省印刷局への依頼だったと思います。これを【郵摸】の法律で議論すること自体がおかしすぎる話です。
次回は今生きている【郵摸】の条文の言葉を解釈して、1月と5月の事件をアナライズして見ます。「もの」と「者」と「物」の違い、条文に有る「外国」と「郵政大臣」の読み方、「現行切手」の法が想定している定義等ですが、普通に読めば【郵摸】は法律として分かり易と思います。でも、なまじコレクターの思い込みの知識が入って来れば違う方向に向かいます。許可を受ければ合法になるのがこの法律の趣旨ですから、どうすべきかを丁寧に指針で示してくれています。違法物を摘発するのが主眼でなく、手続きを踏んで合法になるように導いてくれているのです。でも、不心得者も現れるのは残念な事実です。