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エメラルドの怪しき煌めき

大分時間が空いたのですが、このタイミングで書いて置きましょう。竜500文逆刷のお話です。一部の出版物で、あたかもDavid Feldman氏が、一代でゼロから世界最大のオークションハウスを築いたかのような論調を見受けるのですが、それは違うかなと思うのです。1947年アイルランド生まれのコレクターで1967年に切手のオークションを開催しています。何時からジュネーブの自社ビルでフロアセールをやるようになったかは覚えていないのですが、わたくし的に印象深いのは1987-1990年頃の、Habsburug-Feldmanとしての活動でした。切手も扱っていたし、東京も含めて世界中でオークションを開催していたのですが、取扱品目は美術品・宝石・時計が多かったのです。相方の名前で判るように、マリー・アントワネットのハプスブルグ家の末裔さんと組んでのビジネスだったのだと思います。私にすれば、それ以前のスイスの立派なカタログでの切手のオークションハウスのイメージが有ったので、切手のオークションは廃業で、サザビー・クリスティー路線に行くのか、残念だなみたいな受け止め方をしたのです。でもこの業態でのビジネスは、名前もセール自体も短期間で消滅し、ハプスブルグの名と郵趣の繋がりは泡沫の夢のように消えました。Feldman氏は2枚目のモナリザ=『アイルワースのモナリザ』で良く名前が出るのですが、アイルランド切手に関する著作以上に、美術研究家として知られています。切手のオークショニアというには異質の能力をお持ちなのです。

長年の交渉を経て、金井宏之氏のモーリシャスのコレクションを買い取って、自らのオークションで売ったのですが、超目玉のカバーの買い手が、モーリシャス国そのものだったのにはたまげました。普通のオークションハウスのような、場での成り行き任せの偶然狙いでなく、必然のビジネスモデルで絵を描いていたのでしょう。外形はオークションのスタイルだけれど、コレクションを買う前からエンドユーザーとは話は付いていたのでしょう。彼は負ける勝負はしませんから。こぼれ話が有るのです。売り手が金井さんなので、値段以外の付帯条件を幾つも付けていたと思います。詳細はさて置き、面白かったのが、デニスンヒンジをねだった事、取引に入る以前の雑談でのタイミングだったのでしょうが、すぐさま50袋入りのカートンが届いて吃驚したと聞きました。彼にすればお安い御用だし腕の見せ所だったのでしょう。

Feldman氏は、或るテーマでは自他共に認める世界一の切手のコレクターです。対象はエメラルド色の切手です。宝石商としての思い入れが有るのかどうかは判りませんが、オフカバーは勿論ですが、オンカバーでも純粋な一色貼りで素晴らしいコレクションを作っています。だから、このテーマでは、コレクターとしては500文の逆刷が垂涎の的だったのです。今回のセールのカタログの逆刷1点の特別仕立てのオークション誌に面白い記述が有りました。1974年に石川良並氏が、7500万円で買ったとの記載です。私には初耳だったのですが、アイホン君がどこかで仕入れてきたネタなのでしょう。ちょっと時を経て、本邦でこのアイテムに絡んだ方たちには幾つもの人生でのドラマが起きていて、その結果として、タイミング的にはタカハシスタンプさんがお持ちだった時の事なのです。2011年の日本での国際展の会場で、Feldman氏がマジで買いにかかったのです。持ち主との付き合いの度合い方して、『あれ幾ら?』は無いのです。だから国際派郵趣人に仲介を頼んだのですが、残念ながらこの人では日本のディーラーとギリギリの線で取引するには荷が重すぎました。だから売り手の本音を聞ける別の人に投げたのです。帰って来た答えは1億円なら売ってやる、売り手は相手が本気だとは思わなかったのかも知れません。よく聞く戯言ですが、日本の宝が海外に出ていくのはけしからん、と言うのが有るのですが、それは経済の論理とすれば何の説得力も無い妄想です。ビジネスは情でなく金で動いて良いのです。2011年はタイミングが合わなかったのでしょうが、2013年に山田裕司氏が手にしたのは確かでしょう。お値段は石川さんの買われた値段とどっこいなので、少しお安いとも言えるのですが、私の評価ではよくぞ買いましたねだし、ご本人も頑張り過ぎたかなと言ってました。山田氏はコレクターとしては2021年に大願成就、本気か冗談かは分からないのですが、私レベルの者に対してさえ、それなりの値段なら手彫を一括で売りたいと声をかけてくれていました。コレクションを崩すのが、勿体ないとか、惜しいとかでなく、今の日本のコレクターのお財布事情で判断して、ビジネスとして持ち主を納得させるオファーが出来ないので、日本人は誰もまともには取り合っていなかったのです。

ビッグビジネスのディールは昨年の12月末、所有者の地元のホテルで行われました。当事者以外の立会人として、今回もまた、前述の国際的ブローカーさんがその場にいました。契約書を交わして、内金を払って、物を持ち返って、年明けに残金をドルで銀行振り込みの条件です。勿論、約定は問題なく履行されました。Taxポイントは契約日なので、2022年度の取引であり、今年の3月15日に譲渡所得として税務申告がされています。売主の手彫切手の収集期間は約10年です。短期間だし目立つ大物が多いので、売り買いともに記憶が鮮明で、かなりの部分は記録も残っているのです。買った相手もごく限られています。だから、購入原価は完全にFixです。そして大物の買値を足し算すれば、売値を軽く越すのです。譲渡所得とすれば、差損になるので、本来は税務申告は不要ですが、グロスの額が大きいので、念のためにお尋ねが来る前に書類を揃えて手続きをしたのです。賢明だと思います。スイスのオークションへ出品したのは、新たな所有者になったは、かの国のディーラーです。幾らオークションで高くなっても、前所有者には何らの影響も有りません。因みに、このレベルのディールなら、仲介者にはコミッションが支払われます。買い手が払うのは、一般的に言って5%、売り手はお気持ち程度が相場です。勿論、貰った人は雑所得での申告が必要だと思います。私に関しては、譲渡所得の申告の協力のご依頼が動機なのですが、かなり早い時期に連絡を貰っていたのです。『手彫を売った』『何それ?誰に?まさか日本人?』『スイスのFeldman』『他の人に話しても良いの?』『全部をオークションで売るのだって・・・売れる自信があるそうだぞ・・・』

逆刷が目玉です。瞬時に読めました。コレクションの取引価格は原価を少し割っているのですが、売り手に有利なディールに思えたのです。日本ではとても商売は成り立ちません。手彫切手のオークションビジネスとしては買っても理屈に合わないのです。でも、逆刷は100%売れると確信出来ました。登場人物を並べれば簡単に解けるパズルだったのです。一流のコレクターが渇望していた物を手に入れたのです。しかも差配しているオークション会社も持っている。ビジネスマンとしては最高の手の振るい方が有るのです。今までの取引実績、日本切手のステータス、コレクションに残す物と商売的に売りたい物、クールにアナライズすれば、逆刷のウエイトは買ったコレクションの3分の1位かなと見たのです。逆算すれば、2億円と踏めれば十分にお釣りが出るのです。だから、セールのカタログを見る以前の評価として、逆刷だけは2~3億円で売れるだろうと何人かに話していました。Feldmanが間違ってもノーヘッジで売り切り前提のオークションにはしないし、テクニックを弄して、競った形にして落すだろうだろうと読んだのです。6月3日のセール、Lot30070 ハンマープライスは440万ユーロです。邦貨で8億超になりました。へんてこな情報が幾つも有るのですが、落札者は、世界一のエメラルド切手のコレクターでしょう。オークション自体での金銭の移動は、実質的に発生はしていないと思います。念願のビッグコレクションを手に入れ、自社のオークションに出品した人とは、別人格のコレクターがお買い上げなのでしょう。これが公式発表なのですが、ギネス級のビッグディールが1枚の日本切手で成立したとは誰も信じて無いと思います。だって、作、演出、主演がDavid Feldmanなのですから。

視点を変えて、トータルでセールの結果をアナライズして見ます。逆刷を除けば、出品者であるFeldman SA以外のバイヤーが実際に買ったと思います。空売りでなく、実取引でしょう。和桜20銭政府印刷ペアが16万ユーロ、和桜20銭イ 白抜き十字風の後消印が18万ユーロ、改桜1銭チ第4角 未使用が5.5万ユーロ、玉六ヨ 朱消しが12万ユーロ、色んな意味で私が見知っている物が多いのですが、日本の感覚の3~4倍だと思います。私がプライベートで売った物は、当然ながら瑕疵が無い良い物なので、私の売値よりも伸びて当然なのですが、ちょっと癪だったのが、改桜20銭リが安かったこと。9.5万ユーロなので、御気の毒に足が出ている値段なのです。山田さんに絶対に買いなさいと勧めたのが、30282の玉六ヨと、これに対になる30240の洋紙墨六ヨの使用済なのです。山田さんのリーフでは、勿論2枚が並んでいましたよ。同じポジションだからこその値打ちなのですから。玉六は、悪くは無いけれど、今やNo1では有りません。だからこちらは安く評価して、墨六を100万に踏んで買って貰ったのです。世界に一組しかない同一ポジションだからコレクションに使えるのです。誰の仕事かは不明なのですが、墨六をバラシて出しているので、480ユーロで落ちました。この程度の仕事しか出来ない連中に扱われるのは余りにも不憫です。

このセールでは、日本からのビッドは大物に関しては殆ど用無しだったと思います。でも、個々のハンマープライスも、トータルのリアライズも立派な結果になりました。日本人は無論の事、日本切手のコレクター以外の大口のニューカマ―さんがいたのでしょう。或る意味、打ち出の小槌をオークショニアに預けて、世界中の珍品を漁っている似非コレクターだと思います。この札が1枚有れば、理屈をつけてユニークですよ、珍品ですよで勧めれば喰いついてくれるのでしょう。こういうビジネスはFeldmanの得意ちゅうの得意ですから。ゴルフで言えば、LIVゴルフ、サッカーならばサウジ・プロ・リーグ、金銭感覚が違う世界の出来事だと思えます。

6月のセールで、とっくに投下資本を回収できたFeldman、手元に来ている12月のセールの参考値は随分とお優しいと思います。元が取れたので、感謝を込めての還元セールかも知れません。今回の値段なら、エステメイトの下の方で始まるなら、日本の人でも買えるかなと思いますが、私はギャラリーに徹したいと思います。昨今の状況からは曾ての面影は見出すことが出来ないからなのです。JAPEXで山田さんと大分お話が出来たのですが、セールの結果、特にお値段に関しては無関心だとお見受けしました。楽しんだのでご納得、損得で無い濃密な時を過ごされたのでしょう。収集家の鏡だと思います。私でも少しはお手伝いできたのかな。Feldmanセールの結果を見れば、Stampediaさんを通してスイスで出品して売りたい人が一杯いると思います。でも私はお勧めいたしません。切手のビジネスは甘くは無いのです。夢は所詮幻で終わってしまうのですから。

引き続いての朝鮮字12.5

予想通りの動きでした。朝鮮字菊15銭の12.5の未使用、糊落ちが出て来ました。立太子礼皇室贈呈用沿革志剥がしと見て間違いないと思います。又聞き情報の筈ですが、出品者は姫路の高校生君、手にしたのは日フィラのメールオークションのAの部、出品者は市田右左博士で間違いでは無いと思います。8銭と15銭は同じタイミングだと確信していたのですが、まさにドンピシャ、良い読み筋だったと思います。意外だったのが、続いて1円の12.5の糊落ちが出てきたこと。ヤフオクでNow on saleです。何人かに取材して判った事ですが、主役は65歳ぐらい、お仕事をリタイアされたタイミングなのかも知れません。小柄で痩せ型で黒縁メガネの少年で、関西のジュニア切手展に菊で出品していたそうです。大工大に進学した位のタイミングで、綺麗さっぱりこの世界との縁が切れたのでしょうか。私の周りにいる人で彼と接点が有りそうな人全部に声を掛けたのですが、直接の密度の薄い付き合いが有ったのは一人だけでした。

残念なのは、同じ立ち位置に居て、菊のコレクターとすれば知識とセンスで同レベルだった人物に確かめる事が出来ない事なのです。情報をくれた人は、正に甲乙つけ難かったと言ってました。当時は京都にいた丹下甲一です。年回りで同じぐらいなので姫路の彼とは接点が有ったのかも知れませんが、私は生前の丹下君とその話題を話した覚えが無いのです。

一連のヤフオク出品が、何故か全部が朝鮮字の12.5です。8銭がNG 566,000、15銭がNG 703,000、3銭田型 糊付で98,500、1円NGが有るということは、20銭NGも有るのかな?1銭は無いとして置きましょう。名鑑に載せた8銭と15銭のヤフオク出品で面白いネタを拾いました。糊落ちは私から見れば、マイナスでは無いのです。沿革志剥がしの確信が持てるのでむしろプラスと見ています。でも、書籍の図版のアレンジをした、田辺猛さんが悪戯をやってます。悪意が無いのは判るのですが、裏に鉛筆で12.5のメモを書いたのです。物を貸した高校生君にすれば戻って来て、気が付いて、大ショックだったかと思います。案外そのことが、彼が郵趣界から遠ざかった要因だったりして。今はまさかこんな事は無いでしょうが、当時は同じ様な事が一杯やられていたのかな。

もう一つ予言をして置きましょう。20銭と1銭のNGの12.5が続いて出て来るかどうかは判りません。でも、今ライブで出ている1円のNG、最低値が15万ですが、その結果の予言です。恐らくは売れるでしょうが、15~20万に収まると思うのです。1円の日専の評価は35万で、他の希少額面の25万イーチよりも高いのですが、落ちる値段はその数字には比例しない筈です。それなりの人は持っていますから。朝鮮字の12.5に関しては、存在比率も、誰が持っているかも結構判っているつもりです。もし私の読みが合っていれば、別のディールでの、私しか知らないお話を書きましょう。David Feldman繋がりで、[エメラルドの怪しき煌めき]がテーマなのです。

 

日本フィラテリックセンター Aの部

姫路の連中から発せられたネタを信じるならば、朝鮮字菊15銭の12半=名鑑に載っている現物も同じ高校生が同じ時に掘り出した物だそうです。当然こちらも糊無でしょう。この条件を充たせる可能性は一つしかありません。【立太子礼皇室贈呈用沿革志】の剥がしでしょう。1銭・20銭。1円の12半も恐らくは同じタイミングで剥がされたはずですが、所詮は糊落ちなので邪険に扱われてしまったのかな。かの高校生君が買ったのは、名鑑菊が発刊された1978年より数年前の事、狩場は「日本フィラテリックセンター」のメールオークションのAの部だったのです。誠に残念な事ながら、私はタッチの差で出入りしておらず、稀有な掘出しの機会には間に合いませんでした。西岡辰二さんの、味の有る手書きのオークション誌です。8銭も15銭も目打は書いていませんでした。私が下見して見つけたかどうかは神のみぞ知るとしか言えません。現在、私と同じ立ち位置に居る、コレクターとして現役の連中達も、恐らくは好機に接する事は出来ていなかったと思います。でも、見つけた高校生は目打の希少性を知っていた筈なので、それはお見事だと思います。私が覚えているという事は、もしかしたら、姫路か、関西の郵趣雑誌にインパクトの強い記事が出ているのかも知れません。

『Aの部』というのがポイントなのですよ。私が出入りするようになってからも、毎回200点ほど、竜48文が頭で、電信や旧韓が尻尾の出品が機械的に続いていたのです。ゴミ交じりでなく、ピュア―な魅力的な商品の羅列でした。それなりの金額で売れる物が多かったのです。毎回同じスタイルの手製のブックにハウイドマウントを並べて貼って、そこに切手を突っ込んでの出品スタイルでした。最低値は━、出所は海外、全てが新鮮な物で、売ることを前提にした、稀代のプロのご出品なので実に面白かったのです。私がビッドし始めてからは、下見無しの人のビッドでは絶対に落ちなかったはずです。朝鮮字の12半には間に合わなかったのですが、随分と長期間に亘って楽しませて貰いました。でも手彫は買えなかったと思います。旧小判も掘出しは有りませんが、菊以降はお宝の宝庫だったのです。私と水口正春がどれだけぶつかった事でしょうか。このオークションには都市伝説が有ったのです。幻で無いファクトです。

ビッドに際しての値段調整のルールです。大原則は入れたままで調整なしで落とされます。怪しからんけれど、決め事なので文句を言えないのです。でもメールオークションなので、その気になれば何でもやれるのです。関西弁で言えば、【ヤ・タ・ケ・タ】、ビッドに於いてですが、知識が有って、金も使える、指導者としてそれなりの立場にいる人が、傍若無人な振舞をやっていたのです。出品物でお眼鏡にかなって、どうしても欲しい物が有れば、下見期間中に持って帰ってしまうのです。絶対に自分が落すから、それで良いだろうというスタンスです。下見できない人の場合は、この悪行に気がつかないし、どっちみち負けるので影響を受けないのですが、関西の連中は怒ります。手嶋さんが竜のプレーテイングの為に、往復速達でのご自宅下見は納得できるのですが、珍品独占の為の物自体のフライングのお持ち帰りは駄目でしょう。だから、私が悪戯したのです。[あの人]が目隠しの為に持って帰ったということは、下見不要の良い物だと確信が持てるのです。嫌味で相場以上の値段を放り込んだのです。相手は幾ら高くても買うつもりなのでしょう。だったら私の値段以上で買ってくださいよ、です。直ぐに泣きが入りましたよ。だから、自然の流れで暗黙のルールが出来たのです。お持ち帰りでの目隠しは駄目ですよ。値段調整のルールは、オークショニアの専権事項なので、調整なしでもやむを得ません。でも、人によって扱いが違うのは不味いのでは。

変なルールが始まったのです。辰二翁がこっそり教えてくれました。数字だけで何も書いてない場合は、そのままの数字で受け付ける。[・・・まで]と書いてある物は2番値の上まで引き下げる。・・・・実際にその通りになったのです。メールオークションなので、締めの直前に店に行って、1番札を聞いた上で、誰かの札を撥ねて取ってしまうというやり方は私はやりません。あくまで自分の評価に自信が有るので、目一杯に入れて、出来れば安く落としてくれれば有難いという感覚なので、[・・・まで]の調整は有り難かったのです。私が教えたかどうかは兎も角として、数人の達者な人たちはその恩恵に与れたはずなのです。このルールは、西岡親子時代の日フィラの、しかもメールオークションに限定して有効でした。今の金坂忠彦さんのオークションとは何らのつながりも無いことを明記しておきます。勘違いがお得意の思い込みの強い人も、適格に判断されることを望みます。名前が繋がっていても、ビジネスの精神は全く別次元なのですから、私が書いた事に関して、金坂さんにコメントを求めるのはご法度です。

話題を本筋に戻します。「Aの部」の出品者の素性です。問わず語りに自然に耳に入って来るのです。辰二翁が気楽に話してくれたと思います。[市田左右一]氏です。逆引きで完璧に繋がるのです。新鮮な、ソソラレルマテリアルが毎月200点、手彫と小判はキッチリとした分類なので掘出しはノーチャンス、翻って菊以降は珍品・希品満載のド素人さん出品で、下見無しの値段調整無しの人では勝負にならないでしょう。常に何回分かを預けていたと思います。でも、その発端が何だったのかが気になったのです。辰二さんも、ご子息の龍男さんも聞けば教えてくれたと思いますが、時の流れにとけてしまってチャンスを逃してしまったのです。夢の中のお話として私の推測を書いてしまいましょう。

このオークションに[水口の三文字検査済]のエンタが出たのです。日付が3月3日と読めたのです。日本の郵便制度でのエンタとして最初期です。市田さんの頭に血が上りました。何が何でも欲しいのです。そのお気持ちは良く分かります。正に自分が持ってこその名品です。他の人では絶対に使いこなせません。だから西岡辰二翁にオファーを出したのです。何としても欲しい、幾らでも良い。・・・望むなら、オークションの出品物で便宜を図ろうか、どちらもが生きている間は、毎回200点出してやる・・・。これも100%私の推測ですが、強ちガセでは無いと思うのです。でも、本当の事を確かめて無くて、今も後悔しきりです。誰か聞いている人はいないかな。

私は市田さんとは完全にすれ違いです。言葉を交わしたことが有りません。でも、雑誌の記事で強烈な思い出が有るのです。市田さんが書いた物で無く、登場人物として描かれた記事なのです。具体的な号数は書けないのですが、金井スタンプの「スタンプレーダー」の広田芳久さんの投稿でした。ヨーロッパの国際切手展のレポートです。まだ、海外旅行が不自由だった時だったと思います。最初の外遊だったかどうかは分からないのですが、広田さんはワクワク、ドキドキで会場に乗り込んだのでしょう。幾らでも掘出しができた時ですから。初日の朝一にブースに行って、有力なディラーさんに、JAPANが無いかと聞いたのです。帰ってきた言葉は、一杯有ったけど、ついさっき彼に全部売ってしまった。指差した先に居たのが、正規の開場前に、関係者扱いで入場できていた、かのDr.S.ICHIDAその人だったという記事なのです。恐らくは、広田さんの投稿がそのまま載ったと思います。スタンプレーダーの発行人は橘さんです。編集権者=発行者が橘さんなら、言いにくそうに広田さんに手加減をお願いされたと思います。でも、当時の編集は渋谷敏一さんがされていた時かと思うのです。目を瞑って、検閲を掛けずの掲載でしょう。だからこそ、没にならずに世に出たトッピックだったのかな思います。国際展での関係者、特にそれなりのディーラー達の事前の取引は、文化として成立しているので目くじらを立てる事では無いのですが、善良なコレクターにすれば見過ごすことが出来なかったのでしょう。それにしても、我ながら変な事をよく覚えている物ですが。

高校生君は、菊のコレクターでした。関西のジュニア展的なところに作品も出していたと聞きました。センスは良いと思いますし、キッチリ値段も踏めています。直近のヤフオクの出品は、1週間に1点です。朝鮮字菊の12半から出しているのでしょう。5厘の使用済、8銭の未使用、3銭の未使用、次は15銭になるのかな?それ以上に気になるのが、最初に12半をコンプリされた人のコレクション、8銭と15銭の12半が、糊落ちかどうかかが知りたいのです。何度も触れるチャンスが有ったのですが、まだ確かめていないのです。それに、肝心のそのコレクションが現時点でご自宅で行方不明になっているのです。出てくれば真っ先に調べて見るつもりなのですが。

朝鮮字入菊8銭121/2 未使用

9月3日終了のヤフオクで懐かしい物を見つけました。物は名鑑に載っている周知の物なのですが、わたくし的には幾つもの書けるネタが有のです。記憶に淀みはなく、1978年(日本切手名鑑菊の出版時)と2006年(郵趣の広告時)に自然に遡ることが出来るのです。朝鮮字菊8銭12半の未使用・糊落ち・最低値30万・出品者の地域が兵庫県で全てが繋がったのです。ご丁寧に、名鑑に出ている物をご本人が出品したとの記載も有り、確度の高い推測が確信に転じました。知る人ぞ知る、忽然と消えていた【姫路の高校生】の出品なのです。最短の期間で数えても、45年は経過しています。夢のような掘出しをした紅顔の少年君も還暦を過ぎていると思います。おしゃべり好きな姫路の人たちに何度も彼の消息を訪ねたのですが、杳として消えて、その後の消息は不明でした。郵趣界とは何の接点もない所で時を刻んでいたのでしょう。日本切手名鑑・菊の出品協力者名簿のお名前を見ても一人だけ浮いてくる人が彼なのです。

物とすれば、一般の人にすれば、糊落ちは大きいマイナス要因なのですが、私にとってはポジティブに踏める要素になるのです。最低値の30万はいい値段なので、売れてもギリギリ、糊落ちの意味が分かる人がいるかがどうかが気になっていたのです。それは杞憂でした。ビッドはお二人、長時間を掛けて、競りに競っての566,000でした。落札者は何方かは判りませんが、565,000円のアンダービッダーはヤフオクのデータで簡単に分かりました。次に同じような物が出てもお持ちでないなら頑張ってくれると思います。今回の出品者、1週間前にも朝字5厘12半の丸一仁川⑨を最低値18万で出して、入札者1で売っています。昔の相場かなと思うのですが、中々に達者な方ですよ。この方の掘出し話は私なら楽しく書けるのですが、それは後に廻しましょう。懐かしい思い出が一杯有る事を思い出したのです。

朝鮮字菊の12半の未使用のデータを纏めて置きましょう。2006年の郵趣に『立太子礼皇室贈呈用沿革志』=朝鮮字菊1銭・8銭・15銭・20銭・1円が12半の記事を書いた時に、センサスを載せたのです。17年経って、ほんの少しは増えているのですが、大筋は変わっていないと思います。でも、当時は11種完集がお一人だったのが、今は『沿革志』のページを頑張って落とし切ってくれた人が2人目の栄誉を得たのです。まずはイントロとしてこの記事を載せましょう。

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準備完了と積み残し

只今、8月のオークションの下見の準備が完了しました。今から下見して頂けます。オークション誌の発送は予定通り、27日木曜日です。今回は128回フロアが238号と239号、印刷所の無線綴じのページ制限ゆえに土・日で分冊です。111回メールは通常の240号、112回メールは241号で小判切手他の単片の消印特集号です。4冊をすべて表紙付きのオールカラーでやって、コストの方は従来の6割引きで出来るのです。写真版のバックの黒地は後半に入稿した物は改善できていると思います。

オークション誌の編集のやり方にもよるのですが、兎も角ご出品物が溢れています。最低値と記事が一任の場合が多く、その場合はロッティングのやり方よっては、手彫の偽物の大傷以外は何でも売ることが出来るのです。大量な物を相当に雑な状態で預かっても、弊社の編集のやり方で、お金に変えることは可能です。でも、私の能力と使える時間には限りが有るのです。今は完全に限界を超えてしまっています。折りに触れ、必ずしも想定のセールに掲載できるとは限らない旨を書いているのですが、殆どの人は理解してくれません。今回の場合は、頭数では30名位が積み残しになっています。ダンボール数十箱は潰しようが有るのですが、レタパ・プラス10袋とか、バインダー無しのリーフだけで箱一杯の方が時間が掛かるのです。長年の収集品ですから疎かには出来ません。単品で出せば1000ロット単位になるのです。この方達は、分割掲載でご納得でしょうが、1回完結の方が難儀なのです。今回のセールに掲載されると思いこまれていますし、金銭的にも当てにされている場合も有るでしょう。それが分かっているから、山積みの積み残しを見るのは強烈なストレスを感じます。

今回の入稿が終わって、1週間で10数名分は片付けましたが、大口はこれからが本番です。JAPEXセールは2000ロットなので、苦労せずに出来るでしょう。でも何もやらなければどれだけ滞貨が積み上がるか恐怖です。幾つか手を打ちます。JAPEXセールは、フロアだけでなくメールもやります。積み残しの分もそうですが、JAPEXのプロアご期待で出て来て、そこに載せられない物を載せるのです。【12月のセールは、フロア・メール共に新規のご出品は受け付けません。】積み残しと、大口の分割掲載品、再出品でそのままになっている物を片付けたいのです。新規出品がゼロでも、楽勝で1回のセールは賄えると思います。

今後は、掲載ロットのレベルを厳格に絞りたいと思います。今回だけ・・みたいに、甘やかせて載せると売れてしまって、同じ物がドンドンと続いてしまうのです。基本的にオークションで流通すべきで無い物は排除したいと思います。単価で言えば@3000円が最低線です。外国切手は中国以外は遺品を除いてお断りです。ロット物的な物を私が編集して値付けをすれば当然ながら売れるのですが、大変な手間がかかるし集中力が要るのです。その気になれば、何百ロットでももっと良い物が出せるのですが私自信はやりません。ちょっと甘やかし過ぎたかなと反省しています。普通の記念の未使用もNGです。ヤフオクで売って下さいよ。前回の事ですが、リスト付きで20数点出品された方がいたのです。精算が終わって怒りのお電話です。精算数が1点足らない・・。調べたら簡単に分かりました。国宝80銭小型シートの未使用を、単品で出さずに24円と組んで出したのです。80銭の普通の未使用は500円でも無理でしょう。ただご自分の控えのリストの数と精算を綿密に調べてのお怒りのクレームなのです。今後はここらは遠慮なく全品返品と致しましょう。今回の出品物で吃驚ネタが有りました。絵葉書の3枚おろしです。リーフに貼ってあったのです。切手貼りの白地、裏面の絵の部分、カラーコピーで無く現物を剥がして貼って有るのです。3枚におろして、表と裏の肉はあるのですが、真ん中の骨が残って無いのです。ご自分のコレクションで眺めるのは結構ですが、これをオークションの出品物にするのは駄目でしょう。骨抜きなので、糊で貼ってもお頭付きには戻らないのです。

オークショニアは親切なので、何とか物を生かして換金化を目指すし、それも難しくは有りません。でも、余りに甘えられても私の能力では得られる結果に限度が有るのです。今後は割り切って、どんどん返品いたします。親切のし過ぎは歪を生むのです。特段の便宜は図りません。店渡しでは片付かないし、精算時の同送も事務処理が面倒です。例外なく即座に郵送で返します。個々に理由は書きません。オークションで継続・反復して売るべきではない物を遠慮なく排除してしまいます。ゴミをお金に変えて出品者を喜ばせても、それで生じる軋轢が半端では無いのです。即実行に入ります。

無くなった・・・。

ここ1年位で、海外との取引に関しての金銭の遣り取りの手段が劇的に変化して来ています。基本的には国際的なマネロン対策なのでしょうが、我々も多くのシーンで巻き込まれてしまっているのです。既に大分時間が経っていますが、トラベラーズチェックは過去の遺物です。最早国内で扱っているところは無いでしょう。既発行分は法的には永遠に有効なので、貰った場合は何とか現金化は可能なのですが、相当に苦労します。VISAとAMEX、トーマス・クックはリファウンドセンターが手伝ってくれるのですが、最終的にはアメリカの銀行からの送金になるのでストレスのかかる手続きをせねばなりません。銀行での国際送金も、Demand Draft=送金小切手は何処もやっていません。T/T送金でSwiftやBicsコードが必須です。ただこれは、ネットで情報が取れるので対応は可能です。仕向け(送金)、被仕向け(受け取り)も面倒になりました。国際的な要求に金融庁が動いたのでしょうが、1年に1度、想定される取引相手の一覧表をヒアリングシートとして出さねばならないのです。1万ドルか100万円を超えれば、詳細なエビデンスが必要です。オークションの場合は、お買い上げのインボイス、オークション誌のコピー、発送物の差出時の証明書類を出すのですが、銀行さんが、これほどの完璧なエビデンスは見たことがないと吃驚していました。条件が整っていればやれるのですが、スポットのディールでは相当に苦労すると思います。

私の場合は、1995年にアメリカのWells Fargo銀行で、チェックを切れる口座を開いたのです。アメリカに行かずに開設したので、この時も本人確認が必要で、証明してもらうためにアメリカ領事館を訪ねました。簡単にできる筈だったのですが、震災直後の為、自国民以外の依頼には一切応じられないとして拒否されました。代案として通告されたのが、Nortary Public=公証人に依る証明です。日本の公証人役場に行って、私が私であることを公証人に証明してもらい、更に公証人がその立場にいる事を、外務省に行って確認してもらうのです。実際にその通りにやりました。アメリカの社会保険番号抜きでやるのでこの手続きが要ったのです。こうやって開いた口座は、利息は付きませんが、アメリカ等との取引で随分重宝したのです。ドルでの受け取りとドルでの支払いがスプレッドなしで完結出来るのです。でもこの環境も1年前に潰されました。アメリカの銀行のレギュレーションで、非居住者の社会保険番号無しでの口座の保持が出来なくなったのです。マネロン対策の一環でしょう。数週間のノッティスでクローズドの通告なので大いに慌てました。たまたま数万ドルの残が有ったので、アメリカの取引先5人に頼んで先付のチェックを切ったのです。

国内からの国際送金も不便になりました。ゆうちょダイレクトが事業用目的の送金に使えなくなりました。私の場合は、会社も、個人もいっさいNGです。だから何とかFX系の送金で凌いでいますが、それも普通にやれるのは100万円までなのです。超えれば銀行に出向いて手続きします。その銀行も外為の取り扱いは大幅に縮小、証明書類を揃えて、本店や営業本部に行かねばなりません。スポットの飛び込みではどこでも無理だと思います。代替手段で使えるのが、ペイパルとクレジットカードでしょうか。金額が大きくなればペイパルは無理かと思います。今回のFeldmanセールでもクレジットカード払いの方が少なからずいると思います。これにもトラブルの種が潜んでいるのです。誰も悪くは無いのですが、知っていないとイライラする事になるのです。

AI?での判断かと思いますが、海外との通信販売での取引をクレジットカードで払おうとすると、金額にもよるのですが、かなりの確率でストップが掛かります。詐欺を疑っての措置なのです。特に、今回のセールの場合、海外取引での実績がゼロの人は引っ掛かる確率が高いと思います。支払い枠オーバーに依る拒否でなく、詐欺の可能性が否定できないという理由でのストップです。全てをチェックしていませんが、決済不完了の連絡は何処からも来ないと思います。Feldmanの場合もWebの専用の窓から入るので、ユーザーさんの認識は支払い完了、落札品が早く着かないかなと待ち焦がれるのです。待てど暮らせど音沙汰無しなのです。イライラだけが募ります。対応策を教えましょう。Feldmanの場合は、発送時にFedEXのトラッキング番号を連絡して来ます。カードの手続きをして1週間たってこの連絡が無い場合は、撥ねられていることを疑いましょう。対応策はただ一つ、カード会社に連絡して、決済がストップされているけれど、自分の取引で間違いないことを告げるのです。簡単に確認を取ってくれます。でもそれ以上の再送金とかには動いてくれません。やってくれるのは、カード会社は1時間後を目途に、この相手に対しての支払い口座を1週間限定で開いてくれるのです。但し、次は貴方がやらねばなりません。もう一度、Feldmanのサイトから、再送金するのです。元の取引は拒否で完結しています。だから二重引き落としにはなりません。このケースに於いては、Web.の手続きのみで完了出来るのでFeldmanにも連絡は要らないのです。多分、数日後に発送の連絡が有る筈です。流れが分かっていれば、そんなものという事で納得できるのですが、慣れていない人にはちょっと酷かも知れません。海外のオークションハウスの取引とはこういう物だと理解してのご利用が必要なのですよ。日本のオークションでビッドするのとはわけが違うのです。

 

Authorized Economic Operater

海外のオークション等で購入した物を輸入する場合のルールを書いて置きましょう。切手の場合のHSコード(Harmonized Commodity Description  and  Coding   System)は全世界で共通です。日本切手の場合、郵便切手としての効力を有する物は印刷物の一部として、49:07であり、関税も、消費税も掛かりません。この点での税関での定義は、郵便法の手彫と5厘を除く旧小判、追放切手以外という概念とは異なっていて、ゼロ無になってからの未使用切手が該当します。因みに、追放切手には記念や国立公園が含まれていない事から判るように、GHQが通達を出した当時の、軍國主義や国威発揚狙いの普通切手のみを対象にしており、当然ながら他の法律での有効性には全くリンクしないのです。新小判と菊の1円は、今でも郵便には使えますが、税関の分類では、効力を有しない郵便切手として、使用済や外国切手と同じく97:04になります。郵便法を根拠にして、税関と争ってはいけません。

Feldmanセールは、出品物が手彫だけなのでHSコードでは97:04です。関税はゼロで、一般論として消費税10%が賦課されます。但し、関税定率法14条10号(関連して同施行令)により、本邦より輸出された物で、形状を変えずに再輸入された物は、消費税も無条件で免税になります。法文を読めば、輸出許可証とかが必要みたいに書いてあるのですが、税関さんが見てわかる物は日本製だと認めてくれます。だから、今回のセールでは関税も消費税も発生しない筈です。でも、現実はそうではない事を強く危惧しますし、何も措置を講じなければ、今回のビッドが初めての、海外取引に不慣れな日本のコレクターの大多数が消費税10%を課せられる可能性が強いのです。

スタンぺディアさんから送られて来た日本語版のビッドシートを見てください。Shipping instructions (発送指示)に、□FedEX  □Registered mail  国際書留  のチョイス欄が有るのですが、これは2つの手段の何れかをクライアントが任意で選べるという意味では無いのです。本文ぺージの12頁に英語で、13ページに日本語で書かれている通りに、【すべてのロットは、スイスのDavid FeldmanからFedEXで発送されます。】が優先されるのです。国際郵便での発送は、FedEXが使えない私書箱の場合に限られて、要望を出しても無視されてしまいます。

20230601161922-0001

国際郵便の場合の通関は、各地の税関の外郵出張所が担当です。ここは話しが出来るし、融通も利くのです。万一、税関が判断を間違えて課税扱いになっても、支払っていない限り修正できるのです。物は受け取り拒否し、同時に通関済み証明書の番号を貰います。電話で説明して、然るべき書類を送るか、開封しての日本製の現認を要求すれば必ずやってくれて、2日後に免税通関での配達になります。話を聞いてくれるのです。でも、今回は無関係なのですが、満州・琉球・南方占領地は日本切手にはなりません。字入りは、国際展での佐藤浩一基準では外国切手ですが、税関に於いても日本切手で通ります。金額の過少申告もNGですし、全てに於いて嘘をついてはいけませんが、会話ができるので外郵通関は結論にも納得できるのです。

望まぬ場合でもFedEXが使われるので、対応策が必要です。法的なルールは完全に共通なのですが、現実では大きい差が出てしまいます。Feldmanは国際オークション会社です。対象は全世界の郵便切手なので、HSコードは97:04ですが、デコ(Declare)の品目は【Stamps】、オリジン(原産国)は無記入で書類を作ると思います。個々に手間暇かけての対応はやりません。大量に作業するので、きめ細かく原産国を書いたりはしないのです。2013年6月27日が境目でした。この日にFedEXがAEOの資格を取ったのです。特定保税運送者の内の認定通関業者になりました。因みに、JPの通関部門はこの資格を持っていません。或る意味、税関の通関業務を代理で行うのです。FedEXと話すと、今でも、矢鱈と【税関さんに聞いて見る、税関さんが言っている】の言葉が出るのですが、これは騙りです。税関抜きで通関作業が出来る資格を持ってしまったのです。税関の名前を使って自らの業務を正当化しているのです。だから、今回のセールで、FedEXで来た物の通関には強い懸念を抱いています。FelmanのデコはStamps、オリジンは無記入、AEOのFedEXは、関税はゼロで通しますが、貨物を開封せずに日本製の可能性を想定せずに、外国切手扱いで通関して、消費税10%を賦課してくる可能性が大いに有るのです。JP=外郵通関は、異議申し立てが出来るのですが、FedEXは出された結論が最終かつ唯一の物です。何処にもクレームを付けられません。日本切手の再輸入だから、無条件免税でしょうと言っても、修正の手段が無いのです。受取人が泣くか、スイスのFedEXが賠償するかのどちらかですが、後者はミスを認めません。元はと言えば、Feldmanのデコが問題なのです。品目は【Japanese Postage Stamps】、原産国【JAPAN】の記載が必須なのです。申告書にこの記載が有って、日本製品を見落して消費税10%課税すれば、これは日本のFedEXの通関士のミスなので争う事が出来ると思います。

私がやったバトルを書いて置きましょう。アメリカのディーラーからの額割れでした。数万ドル有ったと思います。ボリュームはかなりの物ですが、シッパーさんのデコは【Stamps】で金額は書いていたものの、原産国を書いてなかったのです。大きい荷物なので普通は開封するでしょう。見れば一目瞭然で未使用の日本切手だと分かります。でも、FedEXは、書類だけで数十万の消費税を掛けて来たのです。事前連絡一切なしでです。当然怒るし、抗議します。古い物や、混ざった物なら兎も角、完璧な額割れ数百万に対して、調べもせずに書類だけで外国切手扱いで、消費税数十万を支払えと来たのです。これが、FedEXのAEOの現実です。日本のFedEXは通関の不備を認めません。全てシッパーさんの書類不備のせいにしたのです。幸いにも私の場合は、消費税本則課税業者です。確定申告で仕入れ税額控除が出来るので、払っても行って来いになるのです。だから、この時は目を瞑って我慢しました。同時に再発防止策を要求したのです。オークション誌とかの無税通関はスルーでOK、金額にかかわらず、関税・消費税の可能性がある物は、全ての物に対しての事前通告を要求したのです。事務所宛、自宅宛、会社宛、個人宛の全てです。この条件は先方からの申し入れなので、実際その通りになっています。おかげで、結構際どいバトルになるのです。当然ながら、【税関が・・】の無茶な要求が茶飯事です。オークションでの落札物は問題ありません。エビデンスがしっかりしているので紛れは有りません。突然にやってくる出品物が困るのです。デコも切手でなく、PaperとかDocumentsで小さい数字での申告です。出品物なので、物は手元に来ておらず、価値も分かりません。でも、FedEXは詳細なインボイスを要求して来ます。税関の名前を騙ってなのですが。品目と金額、発行年・・。メールのやり取りをして、何とか辻褄を合わせるし、日本切手なので無条件免税だよが頭に有るのです。直近で癪な事が有りました。JSCAの番号だけは判ったので、想像力を働かせてリストを書いたのです。でも、1点だけが文字情報では書けない物が有りました。情報は葉書に貼られた5厘切手・三角のTSINGTAU消、物を見ずにディスクライブと評価をするのです。新小5厘の△TSINGTAU/CHINAのCTOと読みました。評価は2万円、竜から制定、霧島小型などは問題なく通ったのですが、これ1点は、「税関が調査して」日本切手と認めないとの結論になったのです。2000円の消費税は構わないのですが、税関さんはこんなことをやるはずが無いのは、税関職員の知人に聞いて分かっています。FedEXのAEO、変な資格を与えたものだと思います。でも、私の場合は、金銭的な損はないので遊んでいる感が強いのですが、普通のコレクターがこの扱いをされれば辛いでしょう。

自己責任で出来ることを教えましょう。Feldmanは絶対に前送はしてこないので、請求書が来るのです。送金の連絡の際に、デコのリクエストを書くのです。【JAPANESE stamps only】原産国【JAPAN】です。これを忘れればFeldmanに、FedEXがミスって消費税が掛けたのなら、FedEXに責任の追及ができると思います。本来ならば『共催』のスタンペディアさんが、支払いを国内で受けて、一括で落札物を貰って、国内から発送する位の事をやるべきだと思うのですが、ここの場合は際どい実体験をしていないので、この種の事案に対応する発想力をお持ちだと思えないのが残念です。Feldmanクラスのオークションハウスなら、ロイズと組んで、FedEXの輸送に限定して1件当たり30万ドル限度の保険を掛けることはやっていると思うので、安心して免税で受け取れると思います。ビッダーさんも輸送中の事故と通関に関して完全にストレスフリーでやれたはずなのです。簡単に出来る事だけに、評価もされるし感謝もされたでしょうに残念です。

支払いに関しても、ちょっとややこしい事が起きる恐れが有るのです。クレジットカード払いでです。これは次回に書きましょう。ビジネスに於いて世の中から消え去った物が矢鱈と多いし、そのスピードも日増しに勢いを増しているのです。付いて行くのに苦労しています。

 

東西南北・東南西北

和桜20銭縞のお話を続けます。Lot30170の再接ペアには、私が密接に絡んでいますし、当初のディールでは私しか知らないネタが一杯有るのです。アイホン君の記事のHerbert Goldsmithの名前は、日本人で知っているのは私とキタゾノ君だけでしょう。アイホン君の記事の詳細は、私が嘗てどこかに書いた物を引っ張って来ていますが、大急ぎのやっつけ仕事の為、事実関係が錯綜しており正しくないことが一杯なのです。登場人物の固有名詞は合っていますが、登場シーンと数字が出鱈目なのです。【東西南北】と書くべきところを【東南西北】と書いてしまっています。今回のセールの結果には影響は無いのでしょうが、書籍に開示された情報が、国際切手展の作品に子引き、孫引きされて、私の名前が間違って引用されるのは気分が悪いので、ここで修正しておきます。正誤表でなく、ゼロから決定版を書いて行きましょう。老婆心ながら、この切手だけでなく他の物の詳細に関しても、アイホン君はよく勉強をしているのですが、情報の処理に関しては、大昔から物凄くルーズなので、引用する場合には慎重さが必要なのです。このセールのデータは、確定版でなく一つの参考の情報だと思って扱って欲しいのです。一例をあげれば、止むを得ないケースなのですが、1銭ブッチの田型は存在が5になっていますが、去年私がバラ4枚にして潰しましたし、その前にもユキオスタンプさんが同じ事をやっています。もう1点もオンセール状態です。どんな物でも、世に知られずに形を変えて動いても誰もトレース出来ないと思います。私が知っていることだけでも、まともに正誤表を出すならば、500文逆刷の別冊以上のボリュームになってしまうでしょう。

本筋に戻りますが、20銭縞のペアが我々の元に来たのは、下側切手=Pos32が最初でした。ユキ・(カネコ)・長谷川さんのサンフィラUSAが東京に来た時に、山崎君にプライベートで売られました。私が持っている情報の、1989年で間違いは無いと思いますが、値段は300万位だったと聞きました。この頃の彼女が扱ったもので、ちょっと不似合いかなと思えるものが結構有ったのです。今回のセールの和桜20銭イ 墨点 白抜十字の後消しは、鯉江君が安く(言葉を変えれば、適価で)買っています。残念ながら私にはプライベートのお声が掛からなかったのですが、この時のオークションでは良い物を落しました。旧小判3銭木綿紙11N 未使用です。場に行った時に、秋元信二郎さんと話をして、要るでしょう?降りましょうか?と聞いたのですが、『紙が違うだろう、要らない』のご返事だったので、遠慮なく最低値の一声上で買いました。安いけれど、1000ドル位の評価なので、元の持ち主は少なくとも目打は判るコレクターだったのです。木綿紙は公式には未発表ですが雰囲気は良かったので、飛び込んで買ったのですが、売る時には連合の鑑定書を取りました。プライベートで売って、物が表に出た時点で、田畑君が貴重な情報を見つけたのです。【ウッドワード】の本に出ている現物だったのです。一気に格が上がりましたし、関連しての情報の捜索が出来るようになったのです。

このヒントを貰えれば、私の出番になるのです。ユキさんが手にした珠玉のお宝の素性が割れたのです。20銭縞のN1B1 東京も20銭イの墨点・後消しも3銭木綿紙11Nも大元の出所は同じでしょう、トレーシー・ウッドワードだと思います。彼からカナダの著名なコレクター、ブラッドショウに流れて、次いでカナダ在住の日系の弁護士、エドモンド・バンノ氏のご遺族からユキさんに来た物だと思います。バンノ弁護士は代は変わっていますが、今も同じ職に就かれているはずです。因みに、エドモンド氏は、番野一臣さんの実の叔父(或は伯父)さんです。番野さんに聞いたら、カナダに泊まりに行ったけど、切手の話は出なかったと言ってました。私が88,000ドルで買ったというのは、100%ガセネタです。また山崎君が16,611,000円でJAPEXで売ったというのも間違いです。他の物と混同していると思います。過去は兎も角として、私が関われたもので、取引値で1000万を軽~く超えるのは【秋田調】の2枚だけだと思います。

私にすれば、山崎君が安く買ったPos32の存在が記憶に有ったので、もう一枚のPos24に反応出来たのです。ペアにしての大儲け、二人での山分けを夢見ました。Hamburg  Kleine Reichenstrasse 1-ⅤのSchwanke & Shonセール、赤い表紙のA5版で隔月程度のペースでやっていた、小さいオークションハウスです。200回記念セールで表紙に20銭縞が出ていました。フロアセールは1991年で間違いないと思います。カタログを見て、消印とPosを確認して、ペアになることが分かりました。国内で調整したか、何も無しでやったかは覚えていないのですがそれは些事でしょう。ユーロ導入前なので、参考値は5万マルク=400万位だった気がします。山崎君にペアにしようぜ、の連絡をしたのかな。ここのセールのフロアには何度か出たことが有って、競りの流れは分かっています。小学校の教室みたいな風情で、長テーブルと木の椅子です。コールはドイツ語、ファーストコールは、エスティメイトでスタートして、ノービッドならビッダーが声を出してリクエスト、1割引き位ならOKだと分かっていたのです。20銭縞のメールはノービッドと読んでいました。だから45000マルクのコールを掛けようと最前列に座って、ドイツ語を反芻していたのです。予想通りの50000スタートで、値切りの発句をしようとしたら、場で手が挙がったのです。若いドイツ人、一体誰だ?状態でした。コレクターだとは思いません。エージェントか、スポットの代理人なのかな、数声読んで落札、許容範囲に収まりました。終わった後にアンダービッダー(最後まで競って降りた)のお兄さんに声掛けしたのですが返事なしで逃げられました。ドイツの若い子というと、ブレーメンの高校生=アンドレ・ローランの友達がいるのですが、見知った彼とは別人でした。

出品者は会場の最後部に座っていた、ドイツ系のイギリス人、Herbert Goldsmithでした。1984年にイギリスのオークションで掘出して抱えていたと聞きました。20銭縞を掘り出したもう一人のイギリス人(亡命墺太利人)のR & S Schapiraは、猜疑心が服を着ている風情で、付き合い方が滅茶苦茶難しかったのですが最後の最後に大きいビジネスをやりました。G・S氏の方は、ロンドンのBishopsgate のCity of London Philatelic Auctionへの有力な出品者としての間接的な接点しか有りませんでした。ここはマンスリーでやっていて、古~い全世界のアルバムを国別にバラシて売るのがメインでした。アルバムのブランドで狙う価値が有るのは、IdealかLincoln、多分この2社の場合、19世紀で終わっているメーカーかと思います。だから内容に魅力が有るのです。海外のオークションで日本切手の彫り出しが期待できるのはこの老舗の2社で有り、ライトハウスにスコット、ギボンズ、ダーボなら殆ど面白味は有りません。ロンドンに4大オークション=ロブソンロー・ギボンズ・ハーマー・フィリップスが有った時は、ここで大きいコレクションを買って、City of Londonでバラの小ロットで売るのがビジネスモデルとして成立していたのです。ロンドンを訪れた日本人の郵趣家をキタゾノ君が良く案内してあげていましたよ。必ず日本の初な物が出るので、スポットの旅行者でもイギリスのオークションでの掘出しの源流を体験できたのです。多くの人が楽しめたオークションハウスでした。普段は殆どが写真無での、場で見てよ・・のスタンスの編集なのですが、年に2回例外が有るのです。Goldsmithは手彫が結構判ります。4大オークション他で買った手彫の良品を、1年に2回、City of  London に出していました。この時だけ写真版2ページに手彫の光輝く物が並ぶのです。このオークションでは掃きだめに鶴なので、彼の手彫を見た瞬間はギョッとしたし、大いに燃えたのです。City・・はとうの昔に無くなっていますし、Schwankeも何時しかオークション誌を送って来なくなりました。Schwankeの20銭縞ですが、Goldsmithはこの2社に深くかかわっていたのです。親戚か何かだと思います。だから200回の記念セールの目玉に出品してあげたのでしょう。もう30年も経ったのかと反芻すれば不思議な気分になるのです。時代はすっかり変わりましたから。

1991年の国際展に4社合同オークションが有ったのです。編集は私が全部やりました。再接ペアは目玉として3000万で出しました。私と山崎君の買い値からして、ちょっと欲張りなのですが、お祭りの目玉なので、話題になれば良いのです。それなりに反応も有ったのですが、残念ながら不落札になりました。旧に復してペアが2枚の単片に分かれたのです。私の物は白井二実さんが買ってくれて、山崎君の方は一度売って、戻って来て、又別の人に売ったと聞きました。取引の値段は野暮なので書きません。時を経て。何時しか合体して、面妖な場所に現れました。テレビの『何でも鑑定団』のやらせ出演と、売る気の無い『ヤフオク』出品です。更に時を経て、ペアとしての安住の地を信州に見つけたと、ある意味安堵していたのですが、又も目途の無い旅に出て行きました。Feldmanの画像よりも現物は綺麗だと思います。でも、118年も泣き別れだったのでペアというには色の違いが微妙です。4社合同オークションでの私の書いた記事を載せて置きましょう。アイホン君のそれよりもセンスは良いと思います。オークションの記事には華美な修飾語は要らないというのが私のポリシーです。30年前も、今も全く変化はしていません。

20230531

他の大物も含めて、今回のビッグなセール、私としても大いに楽しみたいと思っています。セールの予想は書けませんが、終わった後に結果を見て、裏話を書いてもいい物かどうか思案している物も少なくないのです。David Feldmanとスタンぺディアさんの【共催】のセールですが、ちょっと言葉の使い方がどうかと思うのです。東京での現物の下見が無理なのは分かります。でも、海外のオークションへのビッドが初めての人の参加を誘引するのが主眼でしょう。ならば、その人たちのストレスと不安を除去するのが【共催】社の義務だと思います。今のままなら、単なるプロモ―ション協力に過ぎないと思うのです。同封されたビッドシートでメールビッドをどうぞ、後の取引はご自分がやって下さいなら、オークションを標榜していて、取引の機会は提供しても責任は一切取らない、ヤフオクの場所貸しビジネスと同じでしょう。このままだと、海外取引に通じてない人が何人も泣くことになると危惧しています。だから私が出来る範囲で助け舟を出しましょう。キーワードは、HSコードとAEO、通関に絡む公式用語のイニシャルです。この件も含めて、直近の『ビジュアル日専』産業・動植物国宝編に、郵趣に絡む法律案件を書いています。郵便法の憲法17条違反、郵摸の東芝ゼロ円の不起訴、郵便法での切手の使用制限・・他です。特にFedEXのAEOの解説はもろに今回のスイスのオークションの最後の締めで大いに役に立つと思います。次回に詳報いたします。私の長年の経験で何が起きるかが見えているし、それを防ぐことも出来るのです。無駄な税金は払う必要は無いのです。

 

21+1ー1=21

20銭縞の一覧表を最新の情報に置き換えて分析して見たのです。博物館物に関しては、書けるネタは皆無です。物は抜群に良い物でしょうが、ワクワクする息吹を最早発する事は無いのです。私自身が接する事が出来た、イギリス在住の3人が皆英国系のオークションハウスで掘出しをしています。④ゴールドスミス、⑥シャピラ、⑦ゴールドスミス、㉒某ディーラー。何れもがギボンズとロブソンロー系(一部はスイスで開催)のJAPANのロットからの掘出しです。昔のイギリスには古~いアルバムが馬鹿ほど有って、毎月のように多くのオークションハウスに、国毎に千切られて出品されていたのです。古き良き時代の大英帝国には幸が埋まっていたのです。20銭縞が判る連中なら、手彫の真偽も分かるし、竜の版別も出来るでしょう。面白いように掘出しできたと思います。キタゾノ君がロンドンに行く前に於いてはですが。➉は私で、オランダでの10頁程のリーフでした。旧韓の梨花と鷹の未使用のセットで元が取れました。本当に巧まぬ偶然なのですが、これらは時を経て色んなパターンでその全てを私が扱う事になったのです。もうこの辺で打ち止めで良いのかなと思っています。プラーベートでまともな相手から買って、それなりの利ザヤをオンしてのプラーベートディールは、余程の幸運に恵まれていないと出来ないし、冴えてないと無理なのです。今は自信が有りません。

この切手では、ディールでは縁が無かった物に対しても、それなりに関連情報を聞かされていましたが、1点だけブラックボックスに入っていた物が有りました。⑬のKG羽後久保田 3割消しです。タカハシスタンプに出たことだけは、トレースできたのですが、売れたかどうかも、落札者に関しても杳として分かりませんでした。ところが今回の記事を書こうとして、薄っすらとした情報を思い出しました。反芻すれば、当たりだと思えて来たのです。

数年前に秋田の会員さんから電話を貰いました。不幸な事件に関りがあるかもしれないエンタが、マーケットに出回っている。知っていることが有れば教えて欲しい・・です。秋田市内でお独り住まいの男性が、自宅兼事業所で亡くなられ、金目の物が盗まれて警察沙汰になっている・・。地元印の収集家としても名が通っていて、この人の物と思しきエンタが弊社に出品されているというご趣旨でした。調べましたが、ご出品のルートからは繋がりの可能性は見出せず、多分勘違いだろうで終わったのです。その際に話題になったのが20銭縞の久保田消しです。故人がお持ちで、JPS秋田支部の切手展に展示されたというお話でした。この時は、私は何らの情報を持っておらず、まさか?松田印刷では?みたいな受け止め方をしたのです。

でも、祖父江ノートの図版を見て、認識が変わりました。切手自体の状態は判りません。消印は⓷ですが、総合的な情報で、KG羽後久保田と判断して間違い有りません。でも手彫のコレクターはコレクションに入れたくは無いでしょう。値段にも依りますが、地元印のコレクターなら大珍品、ご自慢の逸品の地位に置けるものなのです。故人は、羽後の消印の大家です。弊社のオークションでも、私が覚えている位の強気のビッドをしてくれていました。いつしか縁が切れ、音沙汰も無くなりましたが、こんな哀しい事情が有ったとは始めて知ったのです。私のアンテナにかからなかった、20銭縞のKG久保田、この方のコレクションの目玉になっていたような気がします。羽後の消印コレクションは、少なくとも私の手の届く所には出て来ていないと思います。切手のアルバムは、金にならないと思われて、泥棒さんにも見向きもされなかったのでしょうか。祖父江ノートの最後の㉒を増やせたのは昨年でした。同時に私の記憶のデータベースからは⑬が消えたのです。これが表題の計算式の理由です。

祖父江ノートを再検証

David Feldmanからは、豪華装丁で、500文逆刷の別冊も含めて2冊、ほぼ同じタイミングで、スタンペディアオークションからも、同一内容の手彫のオークション誌が届きました。こちらはホンチャンのカタログと同じPDFを元にして、プリントパックでの印刷でしょう。無線綴じのページ制限が164なので、必然的に2分冊になのです。ディスクライバーはアイホン君なので、突っ込みどころ満載のカタログです。じっくりと楽しませてもらいましょう。このセールに関しては私はノータッチなのですが、前所有者が超現役のコレクターなので当然ながらお付き合いも有りますし、このセールのマテリアルに関して知り過ぎていることも多いのです。書けるネタは一杯有るのですが、慎重に筆を進めて行きましょう。このセールのエスティメイトの設定は、大物に関しては前所有者の買い値のメモを参考にして、現所有者が決めたのかなと思います。一般の物のロッティングは記事も含めて、アイホン君の世界観でやりたい放題でやっているのでしょう。彼の場合、エンタのルートとレートは誰よりも分かるのですが、トラッドの切手そのものでは、売買という意味での修羅場を踏んでいないので大甘だと思います。だからオークションとすれば面白いのですが。

オークション誌の記事と言う視点では、読んでいてウザく感じてしまう所が多いのです。余計な事を書きすぎですし、目に付くのが、現存何点という記載です。国際切手展へのコレクションの記載として推奨されているらしいのですが、私は極めて否定的です。極一部の例外を除いては、日本切手では定量で数を示す程の情報網は整備されていないのです。だから現存数など分かる訳が無いのです。一生懸命、文献を漁っても、完璧にトレースできるものでは有りません。今回のカタログでも、書き十の未使用5枚、使用済1ダースは酷い表現です。山田祐司コレクションの記載を引っ張って来ていますが、割と普通に数えても、未使用は11枚、使用済は少なくとも30枚、恐らくは50枚以上は有るでしょう。存在数の単純計算でも15銭ロの2版分=80Pos分の1なので推して知るべしなのですよ。和紙墨六の未使用のカナ毎の枚数は、山崎氏のデータを使っていますが、比較的最近に、私一人が扱った物でデータから漏れているのは、レアシラビックのカナ混合で6~7枚は増えてしまいます。現存何枚とはこの程度の物なのです。それに定量の存在数は値段には全くリンクいたしません。定量の存在数の少なさよりも、該当品のルックスの方が値段への影響力は絶大なのです。高い切手のオフセンターは、リーフに貼った見栄えが悪く、第3者が貶す格好のネタになるのです。値段が下がるのでなく、集める対象から排斥されるのです。

本題に移ります。和桜20銭縞なのです。今回のコレクションもそうですが、最近の切手展の作品で必ず引用される数字が、存在21枚です。珍品としての枚数としての多寡を云々するのは野暮ですが、皆さんどこで情報を得ているのかなが気になったのです。局別の数字も誰もが同じタッチで書かれていると思います。しっかりした元ネタが有るのでしょう。推測ですが、私も少し協力した、祖父江義信さんの一覧表かなと思います。画像付きで、データが余すことなくリストアップされています。作製当時とすれば特に所有者名は完璧だったのですが、ここに来て結構動いている物が多いのです。総数21枚、その内博物館物が5枚なので、マーケットに有るのは16枚です。この切手には私は昔から何故か縁が有って、矢鱈と扱っているのです。掘出しが1枚、オークションでもろに落札した物が1枚、実質的にプライベートディールが7枚、もう1枚も次のJAPEXセールに出品することが確定しています。私如きが一人で市場或る物の過半数超の10枚も扱えるのですから、存在数21枚は眉に唾して数えねばなりません。ここではオリジナルの祖父江ノートを元にして、私が持っている最新のデータを書いて置きましょう。データは書籍等に発表されている物は、所有者名を書きますが、画像は種々事情を鑑み、ノーガードで引用する事は出来ません。番号は祖父江番号で、★は私がディーラーとして扱った物で、一部はコメントを付けました。

①②ペア N1B1東京7.6.13 有馬切手文化博物館

③    N1B1東京 不鮮明 三井文庫

④⑤再接ペア N1B1東京7.6.13 今回の出品物 書けるネタが一杯有り過ぎるので、別項目で書きます。④★

⑥    N1B1/K越前敦賀7.11.28 Pos33ピンホールあり シャピラが掘り出しで、ナタ二エル ★

⑦    N1B1/K越前敦賀7.11.10 ゴールドスミスが掘り出しで、関西のコレクターを経て、祖父江義信 ★

⑧    N1B1/K越前敦賀7.11.8 カロル2世→林喜一郎→日本フィラテリックセンターに出品

⑨    N1B1/K越前敦賀7.11.25 Pos1ピンホール無し 元ウッドワード 香港John Bullに出て、セールで不落札を後にプライベートで購入 某コレクター所有 ★

➉    N1B1/K越前敦賀7.11.6 Pos3 ⑪と同時使用の下側 オランダのVan Dietenで私が日・韓の古いリーフの中で落札 タカハシスタンプ ★

⑪    N1B1/K越前敦賀7.11.6 Pos11 ➉と同時使用の上側 山本謹一

⑫    N1B1/K越前敦賀7.11.8 スミソニアン博物館

⑬    KG羽後久保田 タカハシオークションで売られた物。唯一行方が定かでなかった物だが、今回の調査で判明。秋田の地元印コレクターが所有も、没後所在不明

⑭    KG羽後久保田 ウエーバリー→村川恒夫

⑮    マ23号 手彫切手専門カタログの表紙に採録 某コレクター ★

⑯    マ23号 元市田左右一 本年のJAPEXセールに出品 ★

⑰    マ1号  福原一信→太田克己

⑱⑲縦ペア キ1号 三井文庫

⑳    秋田調 某コレクター(関東地区)★

㉑    秋田調 アメリカ業者がE-Bay入手 鈴木鉄一 ★

㉒    N1B1/K越前敦賀7.11.9 昨年イギリスのオークションのロットから出現した新発見の物 某コレクター ★

祖父江データの21枚に、㉒が加わって、⑬が消えました。だから暫くは、知られている枚数は21として良いでしょう。後で一寸コメントを書いて置きましょう。