ブログ アーカイブ

2011年5月14日(土)

『皇朝拍売有限公司』

(41KB)

今の世界の切手のオークションのダイナミズムは、「新中国」に集中しています。どこのオークションカタログを見ても、赤い切手ばかり、機を見るに敏なのか、ビジネスセンスとしては必然なのか、手数料商売のオークションの商品としてのパワーは、圧倒的に中国でどのオークションハウスも主力商品としての位置づけです。更には、それでは飽き足らず、オークション会社自体がどんどん香港に進出しています。かつては、変型A5サイズの、薄~い紙に印刷したカタログのJohn BullがNo1、その他の数社は、見るのが疲れるか、ビッドをすれば後悔するかのレベルが、香港のオークションマーケットでした。
今度の横浜の国際展には、香港系のオークションハウスが4社ブースを出す予定です。Zurich Asia, Interasia Auctions Ltd., Dynasty Auctions Company LTD., David Feldman Auctionsが香港での顧客獲得を狙っての出展でしょう。何れもが、私の昔から付き合いのあったメンバーが絡んでますが、当然ながら、所在地やオークションのセールは香港でも、資本とコアな運営はアメリカ(又は欧州)でやっています。
そりゃ、今の中国切手の値段を見れば分かります。梅蘭芳の小型シートが200万、猿が単片15万、80面シートで1500万前後で動くのですから。支払いに問題があるかどうかは別にして、香港のフロアでは、本土から来たディラーが出身地が違えば会話も交わさず、勿論談合も無理で、殴り合いで競っています。一時のスイスのメジャーオークションハウス並みの10億円クラスの売り上げが有るのでしょう。値段に釣られて、物もどんどん出て来るので、欧米資本にとっては今が絶好の稼ぎ場所と見ているに違い有りません。私の方は、中国は買い入れでおこぼれに預かる・・以上の積極的にはやりませんが、香港開催のオークションというのは非常に有り難いのです。エアラインの値段は高いのですが、真夜中の帰国便を使えば、1泊2日で出かけられます。実際に、日本切手でも、かつてならスイスやドイツ、アメリカでフロアに出ていたであろうマテリアルが香港に来ているのです。だから、最近の私の海外への出張は香港がメインになりました。日程的に大いに救われています。
今回のDynasty Auctions Company LTD= 皇朝拍売有限公司の第1回セール、アメリカの東海岸の老舗のオークションハウスの子会社で、アジア物を売る為の香港セールが、3月26~27日に有りました。カタログが来た瞬間、日程を決めて、エアとホテルを取りました。小判と葉書とアキュムレーション、基本的には未使用主体、手彫なし、カバー・消印も殆どなしというちょっといびつな内容でした。ただ、写真でもそそられるものが有ったし、それ以上に写真の選択がぐちゃぐちゃで、見なければビッドは無理と踏みました。第1回のセールだし、耳慣れない会社で、日本人は誰も知らないという可能性も、少しは夢を見ていたのです。参考値は非常に安く、その100倍の数字でビッド=日程の都合でフロアに出られず、エージェントに依頼・・したものも幾つもありました。でも、私のところに、セールに行く前と後に5人以上から連絡があったし、ライバルの面子的な見落としや、マテリアルのエアーポケットは生じず、結果としては結構まともな値段でしか落ちないのです。一人とだけは、小判と葉書とアキュムレーションはこっち、未使用物は向こうで、ゆるやかな棲み分けはやりましたが。
かなりのボリュームの物を買いましたから、小判とかは、その内、表で売りに出します。ただ、今回の収穫の内、売る前に記録に留めたいテーマが一つ有りました。Lot1211 「みほん」のロットです。参考値は約20万円、私の評価はその20倍位でした。オークションの記事にはSc.222a=年賀富士山小型シートも書いていますが、それはこのロットには無く、別のロットに単独で出ていました。ま、それは誤差だし、メールビッドで記事を信じて入れたとしても大勢に影響はないのです。今回の単独のロットに、みほんの珍品クラスの不発行・制定・トンボが有りましたから、元の所有者は相当なクオリティーで集めていたようです。Lot1211 のストックブックが手にして整理にかかって、初めて気づいた事実があったのです。おぼろげ記憶しかなかったのですが、確認の為の1冊の本を久しぶりに手にしました。山本義之著 郵便切手資料 みほん切手(昭和編)=S48.9.1発行 日本郵楽会。

2011年5月13日(金)

『現(うつつ)の消印』

(109KB)

ちょっと時間が出来たので、今回のオークションでの「目から鱗」ネタを2件書きましょう。何れも、随分前から温めていて、ようやく時満ちて書いてもいいかな、と思えるテーマです。まずは、異形な欧文印から。
Lot947と2650 全くの同一の消印で、ゴム2字SEOUL(逆向き)局名下 日付は27.FEB.06 と17.FEB.06IJPO上 です。台切手は菊2銭C13x13.5、印色も含めて一致しています。
私が最初にこの消印に接したのは10年ぐらい前、入手のルートから、不自然さや嫌らしさは感じなかったのですが、余りにも異様な姿で、兄弟も見つかっておらず、売りに出しても誰も認めてくれないと思って、取り敢えずはペンディングにしていました。画像の物ですが、いつの間にか2点になっていました。以前、ちょっと記事を書いたのですが、その時も早速反応が有って、それ以前、今からだと20年ぐらい前の名古屋のオークションに同じものが出て、それを買った人が画像をくれました。私個人の評価は100%真正で、夢や幻でない、実存した郵便印だと思ってましたが、それを強調してもオークションのマテリアルとしてのステータスは上がりません。正に、エンタが出るか、説得力の有るデータが増えるのを待ってました。
Lot2650は、2年前に預っていました。ただ、出品者も私と同じ感性の人で、時間の余裕をくれました。この人はこれをE-Bayで落して、しかも他に10点ほどのピースも持っています。全て、同じ印象で台切手は同じ、消印の日付だけが微妙に違っていました。この時点で、もう少し詰めた記事を書けば、信用されるのかなとも思ったのですが、タイミングが悪くてそのままになっていました。そこへ、Lot947の出品です。こちらは、瞬時での処理が要求されます。だから、私の持っているデータをそのまま書いて掲載、ならばと同時に、以前からの預り物も載せました。最低値の違いは、消印の掛かり具合の差だけです。
手元のデータを纏めましょう。私を含めて少なくとも同じ印影のマテリアルを4人が手にしています。合計で20点近くは見ています。日付は1906年2月10日~28日まで、実際はもっと絞れるはずです。台切手は、菊の2銭C13x13.5ばかり、1点だけ菊1銭が有りました。推測ですが、アメリカ宛の印刷物帯封に使われた物と思っています。消印のデータでは05年の後半から、06年の前半のSEOULの欧文印は空白です。だからと言って、このタイプの消印のみが、この空白を埋めるとは思っていません。出現した額面と、単片の数の多さと、エンタの少なさから、印刷物専用印だと読みました。SEOUL消のアメリカ宛の印刷物は、完全な物も、それなりに残っています。このタイプの実例の出現を待ちましょう。
もうひとつのアラカルト、弊社のフロアセールの極初期に扱ったのですが、U小判1銭のオンピース、ちょっと不鮮明ですが、どう読んでも、JN3上海/日本郵便局というものが在ったのです。完影でないので4~5万で落ちたのですが、今となれば、今回の菊2銭の異形の年2字と同じ、印刷物に使われた◎印と思えるのです。ポジティブは要素としては丸一の上海の前の消印と思います。こちらは、カバーは無論、単片やカットも出てきてません。疑って、諦めて持っている人、是非ご連絡をお願いしたいと思います。Fakeと思い込む理由はないと思います。もう一件は、「香港」と「みほん」のお話、数回分割で書いて見ます。

2011年5月12日(木)

『コンセプト』
PA68.MA58のオークション誌は5月18日(水)に発送します。それに先立つ、Web.でのダウンロード下見は本日から可能です。今回は、最低値の金額ベースでは過去最高、表紙は拘って、未使用のみで作りました。現存1点~片手以下の珍品が多く、存在数としては竜1銭3版の未使用が一番多く残っている?という贅沢な遊びをしています。支那字毛紙5円・10円の田型は3点目の確認だし、スペースの関係で表紙には使っていません。
要は、本当に良い物が出品物として、続々と来ているのです。出品物には貴賎はなく、ルール通りのマテリアルなら、順次処理するのですが、使える時間と、能力に限りがあり、ご出品者の思惑通りの扱いが出来ない場合もあるのです。出来る限り、不義理はしないようにはしていますが、現状の流れから見て、今のペースでは歪が出てきてしまいそうです。
だから、今後はより、効率の良い手段を採らざるを得ません。オークションのコンセプトは、安心して「マテリアルを換金する」場所を提供することが、唯一の目的だと考えます。掲載記事はオークショニアの言葉で、均一に表現して、最低値はオークショニアの経験で設定するのが、ベストでしょう。その意味で、不落札手数料の優遇制も含めて、記事なし・ロッティング・最低値一任を推奨しています。ほぼ7~8割がそうなので、十分にご理解は頂けていると思います。ただ、現象的に例外マターも起きてきます。最低値一任といいながら、掲載原稿を送れば、値段の訂正要求も来るのです。この場合の措置は、全面的な一任から外れますから、100点の内、1点でも変更の要求があるならば、全てのロットに対して、不落札手数料無料の権利は消滅します。これは、訂正でなく、最初からの指定で、1点でも最低値を指定すれば、残りの全部を一任しても、不落手数料を免除しないのと同じです。「換金のみをコンセプトとして、売れる値段はオークションのマーケットが決める数字が全て」と受け容れられない人ならば、最初から最低値を指定して欲しいのです。その場合、オークショニアの対応は、値段の無断変更や交渉は絶対にいたしません。その数字が受け容れられるなら載せますし、そうでなければ、躊躇無く返品します。余計な手間をかけることはしないのです。
ご出品者が値段に拘るというのも解ります。自分の買値が基準になる場合、他に売り先の可能性が有って、あわよくば、で天秤を掛けている場合・・等々、オークショニアが設定した値段に対して変更の可能性が、万に一つでも有るのなら、それは最初から通告すべきマターです。一度記事を書いて、編集に廻してしまえば、最低値の変更=受け容れない場合は不掲載・・という扱いは非常に困難を伴います。また、値段以外の記事に関しても、専門的なファクターを何の情報も出さずに、オークショニアに要求するのは無理なのです。桜の松田・政府、小判の紙、現行の目打形式等の、カタログで分類されている製造面マターは、それ程の見落としはないのですが、郵便制度上の要素というのは、専門家にとっては常識でも、オークショニアは、普通は覚えていないことが多いのです。わかる人が見つければ良いし、それが2人ならば、結果として高くなるのですが、義務的な要素として出品記事に書くのは、スピード優先の仕事としては疲れてしまいます。オークションの記事は、目視できる要素を表現すれば十分で、隠れているポイントは買う人が見つけて、納得して評価するべきです。特に、このカバーは、お前とこの何号のオークションで、幾らで買った・・だから、記事も値段もそれを考慮せよ・・という人がいるのです。過去の実績とはオークショニアにとっては、何の足しにもならない情報です。覚えている可能性はゼロなのです。特別なポイントを、記事にして欲しいのなら、当然ながら、自分で出品記事を書くべきです。そのまま載せはしませんが、見落とさずに編集することは出来ますから。
オークショニアは、絶対に、貴方自身にはなれないことは十分に理解して頂かないといけません。それが出来ない人とはお付き合いを出来ないし、そういう人ならは、ヤフーに出品して自己主張をしても、だれも文句は言いませんのでそちらを勧めます。仲介業としてのオークションでの、過度の期待を含めての記事一任での、後日の訂正要求は厳に謹んで頂きたいのです。

2011年1月8日(土)

行徳国宏さんの『年賀切手を集める』が発刊されました。

 (215KB)

本文150ページ (カラー図版4ページ含む) B5版

頒価 2,300円+300円(送料)=2,600円 にて販売いたします。

2010年11月20日(土)

『返品・返金』   

  (1505KB)

10月21日付けの当ブログにUpしました、ヤフーのオークションでの手彫の珍品カバーの取引に関し、一つの動きがありました。

画像の「竜48文1版単貼り 西京検査済消し 丸太町発松原通宛の市内便」は140万円で落札になっておりました。

この程、財団法人「切手の博物館・鑑定委員会」の鑑定で、真正なカバーに非ずの結論が出されました。落札者と出品者の直接交渉で、滞ることなく、返金・返品の取引が完了した旨、落札者から報告を頂きました。取り急ぎ知り得た情報をお知らせいたします。

2010年11月17日(水)

『プレス・リリース』

日本郵便ホームページ

「お知らせ
米国等あて航空運送する郵便物の一部の引受停止について」ページ内PDF参照

12月4~5日開催のオークション誌は昨日11月16日に発送しました。従来はゆうメール(旧冊子小包)の大口差出の特割で、遅延承諾3日が付いています。受験や税金、株の配当時の大量郵便と重なった時に遅延する可能性が有るという意味ですが、それ以外にも郵便逓送ルートでもかなりのハンデが課せられていました。はっきりと確認できている点でも、大阪発の場合、東京23区内へは、悪名高き「銀座局」経由が絶対条件です。また北海道へはJRコンテナでの2日に1便での輸送になります。北海道へは普通の流れで、配達には5日はかかります。東京は「銀座局」でのパレットの動きの運次第なので、差出人サイドでは対応策は有りません。北海道へは遅延が確実な手法では送れませんから、割高な料金を承知で定形外の普通便で発送していました。

詳細は省きますが、今回の発送からは郵便事業会社大阪支店支店長と特約を結び、この「特割」の縛りを外せることになったのです。○特のラベルを外せば、郵便事業会社の物流のルールで、大阪発東京23区へは、新大阪支店からダイレクトに新東京支店に入ります。北海道へはJRコンテナでなく、航空機輸送での新千歳です。ゆうメール(信書不可)限定で、値段も何故か旧来より遥かに安く、一般の定形外郵便物扱いで流れるのです。デメリットは後納が条件で、郵便切手が使えないことです。大口のユーザーの料金後納印付の郵便物は、殆どがこの扱いになっているのです。早くて(遅くなく)安いという、不思議な制度に物流のハード面が悲鳴を上げない限りは続くらしいので、大いに利用したいと思います。

別項でUpしました、郵便事業会社のプレス・リリースは11月12日付ですが、本日からアメリカ宛の航空便が1ポンド=16オンス=454グラム以上の物は、かなりの確率で引受停止になりました。印刷物もSALもEMSも同じです。ひとえにテロ対策の手段で、カナダとかヨーロッパ宛にも波及するやも知れません。一般の人が取れる対応策は、重量を制限範囲内に分割して軽くするか、船便で送るか、FedexやDHLを使うしか手段は有りません。影響を受ける人も多いでしょう。

但し、何故か弊社はセーフです。あくまで今回の条件上なのですが、引受停止の全ての条件には該当しない項目を持っていたのです。「料金納付方法」の「料金後納=1ヶ月以上前から」による差出は、制限から免除されるのです。切手貼付郵便物はアウト、スポット差出の料金別納もダメ、セーフは審査を通った料金後納か料金計器別納のみなのです。慎重な本人確認を受けた差出人の郵便は大丈夫というコンセプトなのでしょうが、弊社の場合は、EMSの月間差出の通数割引の権利取りの為に手続きをしていたのです。もしやっていなければ、453グラムを超えるオークション誌も落札物も、アメリカへは航空郵便ルートでは送れないという事態に陥るところでした。将来は変更も有り得るのでしょうが、今回の決定はストレスなくクリア出来ました。もし、当記事をご覧で、アメリカへの航空郵便が送れなくてお困りの方がおられるなら、弊社でEMSでの発送代行をいたします。料金は正規のEMS料金のままで構いません。但し切手での納付は不可能で、郵便局に対しては差出人は弊社が出したことになるのです。必要でしたらお問合せ下さい。

2010年10月27日(水)

『緊急販売終了』
10月14、15、19日に掲載しました、チャリティの紙付は、弊社協力者の尽力により、10月25日までに発送完了いたしました。追加の販売の可能性はございません。

2010年10月21日(木)

『珍品カバーの検証のご協力のお願い』
おそらくは最後になるであろう、日専分冊の戦前版2011-12が発刊された。遠からず手にされるだろうと思う。例年の通り、私は本年も巻末にコラムを書いている。今回は17ページで、興味を持っていただける内容だと自負している。ここで概略を書くのもくどくなるし、これからの内容は当記事を読んで頂いていることを前提としたい。まだ目にされてない方は是非お読みいただきたい 。
17ページで起承転結をつけてはいるのだが、ペンディングの部分を説明したい。記事のポイントは、和桜赤2銭貼 水口検査済のカバーが、悪意で作られた偽物である。切手は本物、宛名文字・消印が後年の作り物である。そしてそれを郵趣的なポイントで分析して、解明し、証明したということである。郵趣マーケットに2タイプの水口検査済の印が存在し、出所から完全に2グループに分かれる。然るに、この局では真正な印は1種しか使用しておらず、いずれかのグループは全て偽である。そして一方のグループの宛名は、その時期には存在し得ない表記である。墨の色や消印の感じも不自然さが有って、この偽のグループの出所は1990年代後半の名古屋のMSA(全日本切手交換会)と、現在進行形のヤフーのtomopu0527のIDでの出品の2箇所なのである。
このカバーの場合、真偽の検証に必要なファクターが揃っており、郵趣的な要因で説得力のある判定結果に導けている。ただこれは条件としては奇跡的であり、これ程の恵まれた情報量を持つカバーというのは希である。
今回の記事で指摘した偽カバーの作り方は3パターンに区別できる。
①基本的には本物のエンタの一部を変造して価値を高めた物。後貼や貼変えなど。
②台の封筒は本物、丁稚便などのスタンプレスを用い、本物の切手を貼り、偽の消印を押した物。
③白い封筒に宛名等も後で書き、本物の切手を貼り、偽の消印を押した物。何れも、かなり出来栄えが良く、簡単には判らない。逆に余りに珍品過ぎ、綺麗過ぎるために作り物ではと疑われる本物も存在すると思われる。
①は疑って見ればかなりの部分は見抜ける。しかし②③の真偽の判断が非常に困った状況である。この状況を放置も出来ないので、ここ数ヶ月、有力な協力者の手助けを受け、郵趣的な要因以外のファクターでの真偽の判定を試みている。放射性元素の半減期での検証は無理、それ以外の物質の成分分析をチャートを読んで、責任者の署名入りの鑑定書付でやれば、一つの要素で15万円位はかかる。筆跡鑑定も絶対的ではない。
鑑定書という表現ではなく、考古学的な検証という、ある意味、試行錯誤からスタートした調査で面白い現象が見つかっている。ポイントを絞っての調査でなく、明らかに偽の手彫のカバー数通の調査、分析を依頼したところ、明治初年のカバーならば、有り得ない要素が発見できている。一つは、本来その時期には使われているはずの物質が見つからず、逆にその時期には有り得ない物質が存在する。この2つの事実が、偽カバー上の、それぞれある種の特定の条件で出て来ているのである。
今までに検証してもらったのは、私の手元に有る数点のカバーである。郵趣界的に検証を要する重要な物は、1990年代の後半のMSAと今のヤフーのtomopu0527の出品物である。心当たりの物を買われた方に呼びかけたい。正規の郵趣界での鑑定でなく、私の持っている偽カバーの検証で、重要な要因が見つかっている、然るべき装置を備えた研究機関で科学的な分析を受けてみませんか。まだ、この検証は極めて私的な調査であり、マテリアルに対しての真偽の確定には直接にはリンクしていない。ただ、標本数が増えて、説得力の有るデータが蓄積できれば、将来的にはその可能性も出て来るのである。
次回の会合は11月初旬の予定、上記に該当するルートで入手された手彫のカバーで、抹消印又は重要な証示印が朱色の物、黒印でインクの油滲みが目立つ物の提供をお願いしたい。鑑定書の有無は、分析には何らの妨げにも、助けにもはならない。分析は完全なる非破壊で行い、結果は依頼者にのみ、メモの形でお教えする。所有者の意思を無視して、如何なる郵趣メディアにも公表しないことをお約束する。逆に、協力者は郵趣界とは全くの無縁の立場の組織であり、その属性の詮索はご容赦願いたい。現状では窓口は私のみということにしておいて頂きたい。
この文のみでは、私の意図するところが語れないし、誤解を呼ぶ恐れもある。是非、日専のコラムを熟読した上でご判断いただきたい。何分にも、先方のご好意による分析であり、ビジネスベースの取り扱いでないことは切にご了承願いたい。ご協力いただける場合は、まずメールでご連絡をお願いする。より詳しく説明しご納得の上でお送り願いたい。分析費用は、現時点ではご心配は不要である。

2010年9月10日(金)

『しばらくお休み』
日専Vol.1 戦前版 2011-12 は、10月25日発売=10月20日より出荷予定とのこと。今年も、例年の如く、巻末の広告スペースで「コラム」を書きました。広告なので、編集委員会のチェックは入らず、本体の記事とは責任の在り処が違います。広告ですが、ページ数は原則自由ですし、テーマも書き放題、文字数の割にはストレスを感じずにすんなりと出来る仕事です。今年のテーマは「珍品カバーを検証する」。20数年の出来事を並べて、直近のライブの「ヤフー」の手彫の珍品カバーの素性を分析しています。初めて図版を入れて、トータルで17ページ、今までの最高のボリュームなので、担当者に迷惑が掛かってなければいいのですが。私は普段は書いた文は読み返さないのですが、今回は内容ゆえに、慎重に推敲しています。自分で読んでも疲れないので、是非お買い上げの上、ご覧頂きたいと思います。
郵趣サービス社のディーラー向けのBulletinによれば、「★刊行50周年の節目にあたり、手彫~第1次動植物国宝の切手別専門分類が完成し、分冊刊行はひとつの区切りを迎えました。本年版をもって「日専」分冊刊行をしばらくお休みいたします。この機会に、ぜひお買い求めください。」とのことです。これに関しての、コメントは止めておきましょう。
今回の私のコラムで、ちょっとした追加の情報が必要なポイントが二つ有ります。一つは、テーマを絞って書き出したら、止まらなくなって端折ってしまったことが一件、SPECIMEN他の、UPUの横文字みほんのこと、これば遠からずここで書きたいと思います。随分前に資料を貰っていて、載せるだけのタイミングでしたが、やれていませんでした。丁度、直近に新しい文献に記事が出ていますし、オークションでも関連の出品があったので、今まさに時満ちたのです。戸籍をきっちり付けられます。
もう一件は、今回の記事のテーマの結論です。オークションでの偽カバーの実存を証拠を示して書きました。同時に、疑わしくても、私が本物と思っている根拠も載せてます。オークショニアの立場として、やるべきは、流通の場からの偽物の排除と、ビッダーの不信感の除去なので鑑定の役割が重いのです。それへの新たな一つの結論として、然るべき鑑定機関に提示して、その結果が「意見なし」なら、弊社の場合は、返品を受け付けると書いたのです。ただ、これにはかなりの注釈がいり、スパッと割り切って、現状のルール=「意見なし」は返品不可=買わねばならない、と全てで正反対でやりますよという結論には出来ないのです。
利害の伴うルールの変更なので、実務上は然るべく告知をした後にやりますが、真偽に関してのポイントで、鑑定のリクエストがあり、その結果として、現状では確定できないという意味での「意見なし」は、無理やり買って貰う必要はないという考えです。ビッダーの疑心と不安感、鑑定に携わる方のプレッシャーを減らしたいのです。オークションの出品物全てに対して、神の真正の鑑定書が付くものでなければ、流通させないという主張では有りません。単片の未発表の不統一印とか、カラーマークの主観による、シェードの表現とか、神でない鑑定者が、絶対の答えを持っていないテーマの場合は基準が異なります。それに対して、全てで鑑定という責任回避の答えを求める方が無茶なのです。それがわかってない人も多いのですが・・。ここらも含めて、今回の記事は相当詳しく掘り下げましたから、是非ご一読願いたいのです。因みに、弊社の「意見なし」での、返品の可否の基準は、オークショニアの判断による、とせざるを得ないと思っています。マニュフェストに書いてあるから、教条的にその通りにやらねばならないでなく、実行することが社会正義に即するから、個々のケースで判断して運営をすることになるでしょう。ここらは、まだ時間も有るし、色々動きも有るでしょうから、まずは提言することから始めたいと思っています。