オランダのオークションで面白い物を見つけました。「高山寺 表参道」の裏焼きの使用済です。図案を左右ひっくり返すのでなく、額面文字の位置が右が正・左が裏です。2001年11月に話題になり、刷りなおして再発売になったものです。「みほん」は裏焼きで当初に局に配布された物の内、ごく少数が回収漏れでマーケットに出て、弊社でも2~3回は扱いました。15万ぐらいだったと思います。裏焼きのみほんも、通達を出して回収して、改めて正規の物を配布、だから正焼のみほんも当然有るのです。未使用は完全に回収して(或は配給前だったかも)刷りなおして、発売も翌月になりました。今となっては、ここらの経緯はオボロゲ記憶なのですが、未使用の裏焼きが、10数シート北関東の某局で売られたと聞いた覚えが有るのです。少なくとも、弊社では未使用と使用済は扱ったことは有りません。
オークションの記事には、Mi3295Vとして出品されているので、ミッヘルカタログにはエラーとして出ているのでしょうが、弊社の手元に置いていないので幾らの評価かは分かりません。オークションの参考値=実質的な最低値は1500ユーロなので、20万円位でしょうか。正に裏焼きで、使用済なのは確かですが、機械の波だけなので局名は不明です。締め切りは6月16日なので、興味が有る方はご連絡ください。エージェントを立てて、代行も可能です。このオークションハウスとは、昔から相性が良くて、「書き十の東京ボタ贈呈消」、「U小5銭の横班粗紙木綿岡山ボタを5~6枚」を買ったことが有るし、プライベートディールでの付き合いも有るのです。さあ。どういう結果になるでしょうか。
前回に書いた、alternate useのカバーをお見せしましょう。前島15銭が適正期の飛燕5銭3枚貼、ゼロ付前島1円が適正期の、2新昭50銭ペア貼と1円貼。厳格に突き詰めた郵便史でなく、トラッドで切手の盲人用4種便使用として見せるのなら十分だと思います。ルックスが良いですから。

乃木2銭のアルバムは2冊有りました。ゲーベルのブックに入っていたエンタを見て、思わず料金表を調べたのです。日専等の基本のチャートにも載っているけれど、誰も気に掛けず、そんな使用例が有るとは想像が出来なかったカバーです。外信便の盲人用点字印刷物=点字文はUPU規定でも印刷物で通ります。昭和12年4月1日ー20年3月31日なら、1kgまで毎で2銭です。適正切手は乃木2銭。有ると思って探したのでなく、物が目に飛び込んで来たので、まさかと思って調べたのです。文句なしのマテリアルです。


もう1点は、現行のCTOの山に埋もれていた1枚のメモでした。「現行党必見!! 聴覚障害者用小包」。この人のコレクションの場合、「資料が有れば物が有る」。例外は皆無です。だから探しました。郵頼戻しのカバーの束から葉書が数枚出て来ました。改めて、鳴美の大冊をめくったら、しっかり出ていました。説明はパンフを読めば一目瞭然。でもこのメモの筆者がどなたかは判りません。


今回の100冊のコレクションに於いては、基本的に1次昭和以降なので、昭和12年5月10日以前の物は皆無です。場違いな竜48文が1枚だけ有りました。新しいところも、概ねゼロ付までと言って良いでしょう。R字入り以降は5~6年前に弊社のオークションで処分済みです。
昭和12年~27年に拘って、有るべきはずの盲人用点字を調べてみました。ベンチマークは、Star Auction No37、2016年12月4日開催のカタログを参考にしました。料金体系は別表の通りです。

これにクロスして、切手にフォーカスした適正期間をリストにしたのです。単貼の適正切手・適正期間=料金合致で次シリーズ発行前が今回のコレクションのアイテムのデータの並びです。コレクションは、基本的に1額面ボストーク1冊です。整理の仕方が統一されているので、ターゲットを絞れば、探したいものは簡単に見つかるのです。10冊のアルバムから、第4種点字を狙い撃ちして抜きました。全くストレスフリーに見つかったのです。
①1次昭和5厘 12.11.1-17.3.31 大河原欽吾宛 高松13.2.27 適正

②1次昭和1銭 17.4.1-17.12.31 佐藤淳宛 熱海17.11.27 適正

③2次昭和1銭 18.1.1-20.3.31 西村三吉宛 伊豆長岡19.9.7 適正

④2次昭和3銭 20.4.1-20.8月頃 村谷昌弘宛 箱根湯本20.8.14 盾3銭発行前なら適正・多分大丈夫でしょう。

⑤3次昭和3銭 20.8月頃-21.7.24 幣原喜重郎宛 失明軍人発 鬼石21.3.5 適正 点字書状+読み下し文付き

⑥3次昭和5銭 21.7.25-22.3.31 村谷昌弘宛 阿倍野21.10.23 適正

⑦1新昭15銭 22.4.1-23.6.30 尾関君宛 長野23.6.29 適正

⑧2新昭50銭 23.7.1-24.3.30 村谷昌弘宛 西陣23.12.19 適正

⑨無透80銭 26.5.21-26.10.31 大河原欽吾宛 局不明26.8.20 何とも言い難し・惜しい!!!

⑩無透1円 26.11.1-27.8.10 大河原欽吾宛 小石川28.11.20 後期使用 パーフェクトならず

郵趣用語でalternate useというのが有るのです。代用使用です。点字便では、2昭3銭が適正の時の2昭1銭3枚貼、2新昭50銭が適正の時の、3次昭和50銭貼といったケースです。やむを得ないケースも多いのですが、一流のコレクションを目指す場合は、これすら排除すべく努力するのです。カバーとしてのルックス、消印可読に拘って、明らかにバージョンアップを図られていました。コレクターとしての真摯さ見て取れるのです。お金で買える物だけで満足してはこの並びにはなりません。点字便の場合は、コレスポンデンス=同一の宛名便と中身付きが好ましいのですが、このポイントでも条件は満たされています。切手の後使いや、複数貼りを排除した完璧な適正使用例に拘られていたのでしょう。⑩の無透1円だけは残念ながら次のシリーズの発行後になりました。あとの物は貶しようが有りません。。買わない理由が見つからないマテリアルです。オークショニアとしては最高に贅沢な仕事をさせて貰っています。ここからはみ出た物は、勿論たくさんあるし、単貼りでない1種多数貼などは、捻り方次第で珍品に出世するでしょう。次回は、もっと衝撃的な物を見せましょう。2点共、料金表には出ているのですが、無い物と思われていたものなのです。乃木バカくん、元気になってくれるかな。
2次新昭和とすれば、多分、これが考えられるベストでしょう。螺鈿の2種は、お値段もそうですが、お買いになったプロセスが中々に面白いのです。書くとちょっと差しさわりが有るのですが。45銭も良い物ですが、残っている数からして、昭和48年の3月の150万はご立派です。

捕鯨の田型の使用済は、何度か出品して、やっと収まった物。単片の私製目打も達者なディーラーさんが見つけたものです。オークショニアレポートに書くか止めるかは、終わった瞬間に考えましょう。

何れも、カタログの評価を超えたマテリアルです。乃木の平台のそれは、現存1点のシートを分割したもので、勿論最大ブロックです。大冊の昭和切手専門カタログの評価は上下田型揃いで150万円になっています。評価者は、乃木バカ先生でしょうか。今回の物は12枚ブロックなので、単純計算で3倍、銘付のプレミアムをオンすれば500万かな?誰が買ってくれるのでしょうか。

数字の1.5円の逆櫛(横抜)も最大ブロックでしょう。日本普通切手専門カタログでは、大人しい値段ですが、とてもその数字では収まりません。理想のルックスのマテリアルです。

能面50円は、上記カタログでは、「306vaの逆抜櫛型目打は銘付田型が1点確認」になっていて➉銘田型で20万円の評価です。でもこれはちょっとお気の毒、3点存在の右書き印刷局⑦は、偶然にも、縁有って結構私が関わっていて、現状では最終所有者に収めているのですが、大雑把な評価では綺麗な田型で300万円です。こちらは、テレビの鑑定に奥様がご出演、評価もほぼその数字だったと思います。この放映の際に、切手部門のプロデューサーさんは、右書の印刷局を出すか、「逆櫛印刷局」を出すかを迷ったと聞きました。鑑定者=疾風さんの値付けを逆読みして、取引実績が明瞭な物にしたそうです。私の好みとしては、このマテリアルは是非とも同じオークションで2点並べて売りたいのです。

他にも色々仕掛けられるので、オークショニアは楽しい時を過ごせそうです。まだ全く絵を書いてはいませんが。
この程、出品物として超一流のコレクションを一括で預かりました。1次昭和~1次円単位で、本体のボストークアルバムが約100冊です。フロアオークションレベルの物でも、1冊で100ロット、目勘定で1万アイテムを全てオークションで売却します。一応3年間位を考えています。知られていた名品は勿論ですが、何これ、物も有りました。80銭の盲人用点字・宛先最高・・でも切手大傷は、発表されていないのでは?






オークションでの売り立ては順不同ですが、記録に残すことに意味が有る物を、ここにピックアップして行きましょう。今回の2点に引き続き、逆抜け櫛型・無目打エラー・銘版が2つ・アーカイブ・みほん・盲人用点字・農産物種子・塔30銭・勅額10銭・27銭適正貼等々です。全ての分野が御強いわけでは無いのですが、ここに書いた10のテーマでは、見事に揃っていたのです。弊社のオークション誌も、8月のセールからオールカラーに致します。フロア2冊・メール1冊の体制です。編集も楽になるし、出品物の並びもきれいに仕上げられると思います。今日から8月のセールの編集に入ります。
高崎光吉さんの記事は完璧です。私が知りたい要素の全て網羅されていたのです。瀬戸口正(寸一路)氏は、大正14年5月生まれで1995年8月に逝去されています。商業デザイナーで、日本画家ですが、郵趣界的には肉筆FDCの瀬戸口版の版元として知られています。その業績は、私がくどくど書くよりは、前述の高崎さんのそれをお読み頂きたいのです。ここでは竜文のシートに絞って纏めてみたいと思います。肉筆シートは、当時お世話になった、深谷市の大谷二郎氏にお礼として贈呈されたもので、4種各1点限りの物です。瀬戸口氏から大谷氏へのこの期間の私信も多数公開されており、昭和37年から38年にかけて、数度にわたって渡された事実が読み取れます。大谷氏がご存命かどうかは分かりませんし、48文と100文は残念ですが行方は知れません。記事には、シート以外に200文Pos31の腕落ちの模写が、11.3㎝x11.3㎝で描かれた物が有る記されています。その現物は不明ですが、私の手元には同じタイミングで入手できた、100文2版のPos18の腕落ちの全く同じものが有るのです。左下に白抜きの「瀬」の落款が押されています。これの存在は高崎さんもご存じないかも知れません。今回のヤフーの出品では、この落款を見つけたから、私が瀬戸口のシートと信じて飛び込んだとも言えるのです。原寸でない、「お化けサイズ」なので、図案もかなり違うし、実寸の肉筆ほどのインパクトは有りません。因みに、シートの方は紙の厚みは200ミクロンで、本物の竜文の3~4倍の厚みです。筆書きの為にこの位の厚さが必要だったのでしょう。貰った大谷さんは、埼玉県深谷市の住人です。私が買ったのが埼玉県の古美術商、遺品?が流れて出たと考えれば、見事に辻褄が合うのです。ご存命中なら手放される可能性は皆無です。

大谷氏もそうですが、瀬戸口氏も手彫切手の収集家で、竜のカバーを収集されていたと聞きました。4種シートの模写は、手元に本物のシートを置いて為した物でなく、何らかの資料を使って描いたと思われます。細かい図案の相違が有るのはそのせいでしょう。写真を元にして写されたのかなと思います。因みに昭和37年なら、市田氏の英文のDRAGONが発刊されています。瀬戸口氏が、FDCを商業的に頒布されていたのは、昭和34年から46年4月20日までです。私的な物や、幻の3点制作の「笹の會版」などのお話は、他の方に譲って、視点を竜文の肉筆に絞りましょう。エポックメーキングな物が有るのです。花下遊楽・昭和37年の切手趣味週間です。連作で40通作られていて、48文の1版をPos1~Pos40に似せてカシェにしたものです。高崎さんのHPには30点近く載っています。知る人ぞ知る事実なので、欲しい人が沢山いると思います。同じ切手で、限定20部の名品も作られています。偶然ですが、弊社の今開催中の99回フロアセールのLot27、竜文4種をカシェにした肉筆カバーです。封の裏に鉛筆で各切手のポジションが書かれています。このカバーは全て1版のPos40です。風景社のFDC忍び草にも同じ物が載っていて、こちらは48文1-1、100文2-18腕落ち、200文1-31腕落ち、500文1-2中期印刷・襷リタッチです。

昭和37年頃が、瀬戸口氏とすれば、最も筆が立っていた時だったのでしょう。竜の4種の肉筆シートも、ぴったりとこの時期に当てはまるのです。縁あって入手できたこのシート、いずれはマーケットに出したいと思います。私の手元にある内に、ご希望の方にカラーコピーを差し上げます。200文と500文の肉筆シート、その他の参考品も添えてです。期日は2017年11月末までで、送料も含めて無料でお送りいたします。E-メールでお申し込みください。
