二葉目はルイスカバーです。メモでは100点になっていましたが、葉書と白封を除いてオークションネタとすれば約半数になります。実はこのテーマで、昨秋に大きいコレクションを預かりました。未収品を見つければ落し切っていた人のコレクションですが、殆ど増えなくなったのでドロップアウトを決したのです。一応のご希望値を貰いました。暗算でオークションでの落札値を叩いたのですが、コストがかなり高いので、まともに勝負してもオーナーさんのご希望には及ばないと思えたのです。数年前のヤフオクのクレージープライスは、最早どこかへ消し飛んでしまっています。オークションでの最低値レベルの評価とすれば1次昭和と国立が@5万、記念と年賀が@3万、カシェ入りの船内印と風景印、外地関係が@1万、南太平洋と満州が@2万位で叩くのです。この中にはAランクが数点存在します。乃木2銭の10Bと富士箱根と牛車の次高タロコは@10万です。AAは、国立の小型シートと樺太の白熊カシェがオークションでは@50万で売れています。AAAは2点だけだと思います。安くても100万です。制定=FDCでなく後年の特印ですが、複数知られています。そして年賀富士山の20面シートも有るのです。これだけは私は今まで縁が無く、今回も欠けていました。
ビッグコレクションには、制定・白熊・国立小型が数点入っていたので、これらを梃子にして、喰いつくかなと思った人にオファーしたのです。要るんでしょう、高いけど飛び込んでよ・・とかなり滅茶な値段で踏んでプライベートの一括売りで纏まったのです。JAPEX会場に来てもらって、現物を見せて即決でした。無かったのは富士山小型と牛車です。富士山はオークションに出たならば、最低値100万で余裕で売れると思います。牛車は有りそうに思うのですが、随分前からこれだけ抜けている人がいて、チャンスが有れば、値段構わずにビッドすると聞いているのですが、私の記憶の限りでは縁が有りません。ランク的にはAなのですが、タイミング次第でぶっ飛ぶかも知れません。オークションでの結果を確かめ見たいアイテムです。
樺太の白熊はアメリカのオークションでの相場が5000ドルだそうです。恐らくはカシェの人気だと思うのですが、今回手元に来ている物には入っていません。でも、樺太の風景印で【ペンギンカシェ】が2通有るので、もしかすればこれは化けるかも知れません。ルイスの場合、合理的な希少性で無く、私が知らない感覚的な要素で値段が付いているように見える物もあるのです。これからオンセールになる物の内訳を書いて置きましょう。1次昭和が19通、国立が3通、記念と年賀が9通、カシェ入りの風景印・船内印・外地等が22通です。並べて見て気になることが有ったのです。カシェの違いです。国立と記念・年賀は見覚えがある均一のカシェなのですが、1次昭和で複数ある物ではカシェの基本図案が大いに異なるのです。25銭は4通ですが、明らかに構図が違います。こちらは、宛先がまちまちなのでそのせいかと思ったのですが、1銭はどちらもアメリカなのに違っています。何らかの理由が有るのでしょうが、今初めて気づいたのです。カシェに依る値段への影響?さあどうでしょうか。【ペンギンカシェ】がどう評価されるかが楽しみです。

オークションが終わってすぐに大箱を受け取りました。ご連絡いただいた物は、ほぼ想像通りに入っていました。四葉のクローバーはドンピシャな表現だと思います。気分よく仕事ができるのです。大きいダンボールが大分スペースが空いていたので、その詰め物としてストックブックが1冊、手彫の本物・偽物がごちゃ混ぜの未整理で入っていました。この作業は何らの手間も掛かりません。大好きなテーマですから。ボリューム的にはFDCがメインです。これだけでも3~4回に分けて出すと思います。頂いたメモの【川瀬巴水全点含む】が気になっていたのです。正しければ、超目玉が1点、鵜飼100円です。大昔に扱ったことが有って、知る人ぞ知るFDCコレクターで、瀬戸口版を極めた方、高崎正吉さんが滅茶苦茶な値段で買ってくれた事が強烈に記憶に残っているのです。この方は突然消えて、FDC界の後輩の人たちとも音信不通になっているようです。鵜飼100円は私が希少性を意識せずにアメリカのオークションで落とした物だと思います。遠い昔のお話です。この件は、秋吉誠二郎さんの『版画家 川瀬巴水と渡辺版初日カバー』の本に、日比茂春さんがちょっとだけ書かれています。巴水の渡辺版としてもかなり特殊なので、サブナンバー扱いだし、これは無くても止むを得ないのです。
渡辺版で、どれが巴水かを調べるには誰もが上記の秋吉さんの著作を使っています。大元の資料は、毎日新聞社の『川瀬巴水木版画集』だそうです。データとして洩れている物も伝手をたどって検証されており非常に正確な資料だと思います。でも、オークショニアとして、時たま引っ掛かる事案にぶつかります。今回の方もそうですが、それなりにFDCに通じた方のご出品で、秋吉本に採録されていない物に対して、【川瀬巴水カシェ】のコメント付きの物がやってくるのです。有り得ない素っ頓狂な物は冷たく無視しますが、私が見ても、もしかしてと思えるものが2点有ります。長野平和博と4回国体水泳です。時期的には巴水で矛盾しませんし、カシェの形態と巴水ブルーの色使いからして秋吉さんの本が無ければ、誰もが巴水だと思うでしょう。著作の上梓は2002年でしたが、日を置かずに秋吉さんに聞いた覚えが有るのです。長野平和と4国水泳の巴水の可能性についてです。即座に否定されましたが、根拠は巴水の物だとする証拠がないからだという答えだったと思います。物事の証明手法で、存在の事実を示せば説得力を持ちますが、無い事を根拠にしての証明は難しいのです。

渡辺・巴水の場合は、有る事で証明できる可能性が有るのです。【ガリ刷りの会報・或は英文のMEMO】です。又聞きなのですが、国内頒布には付いていないのですが、海外へ送った物には同封されていたそうなのです。これを一生懸命追いかけているコレクターがいて、私も興味が有るので、当然の如く長野と4国水泳のデータを聞いたのですが、見つかったとの報には接していないのです。ガリ刷りぺーパーには、恐らくは巴水とは限らないのですが、カシェの作家の名前が入っている筈です。もし巴水の名前が有れば、秋吉さんは卒倒するかも知れませんが、快く事実として認めてくれるでしょう。20年来の疑問が解決するやも知れません。見つけた方は是非ご報告お願い致します。
別件で、カシェのロゴで多くの人が誤解している事実が有るのです。2回国体と鉄道75年小型シートの版元です。結論とすれば【日本郵便切手会】で有る事は確かですが、ロゴの表示が【JPS】になっているのです。FDCに強い人なら分かりますが、一般人ならJPS=日本郵趣協会だと誤解してしまいます。弊社への出品者さんからは高確率で間違った記載でやってきます。これは罪も悪影響も無いので、オークション誌には【切手会】と書いて、昔は親切に(ロゴはJPS)としてましたが、今はこの注記は止めました。判っていて当然でしょうと思うからです。切手会の英語の略称、幾つか有るのですが封筒の雰囲気とカシェを見れば間違う心配は有りません。FDC、どなたかがきっちりした文献を出してくれれば有望な収集テーマになるのに残念です。山崎君が引き継いだ1997年版初日カバーカタログはこの分野での最新の書籍の筈ですが、FDCコレクターは誰も信用していません。2回国体のJPSロゴは無論ですが、司法保護のJPSAロゴや社会事業と全国緑化のPSJロゴまで全部JPS(日本郵趣協会)としています。これらは全て、郵便切手会の物なのです。この事を曾て児玉君と話したことが有りました。笑いながら速攻で返事が返ってきたのです。【あたりまえじゃん。だって山崎だから・・。】
FDCカタログは無いと困りますからどなたか動いてくれませんかね。山崎抜きでも、山崎付でも、能力のある人は沢山いると思います。
昨日の小話は、昨年12月23日の【かつお釣り】のお話に続きます。珍品をこよなく愛して、弊社のオークションでもギョッとすような買い方をしてくれていた人なのです。一例を挙げれば、沿革志3冊、婚儀の不発行を色々と、青島の田型、村送りのシート、序でに並べれば、ヤフオクに出ていた大判に対してのコメントを求められました。今回のセールのラストロットをどうすべきかのお尋ねでした。自分も鑑定書付の10Bを持っているので、銘10に大枚をはたいて買って将来性がどうかというお尋ねだったのです。真面目に返事する前にクリアしておきたい情報に目を奪われたのです。【かつお釣り】の無目打【銘10】には、立派な組織の鑑定書が付いているリプリントが有るのです。【透かしが有る】ので100%偽物だと断言できます。無目打も目打有りも、物の出所からして【透かし有り】の本物は存在し得ない筈です。弊社に2度出品物として違う人から送られて来たのですが、勿論説明してご遠慮願ったのです。数世代前の権威者が罪な鑑定をした物だと思います。これを買ったのなら辛い話しになるのです。聞いてきた人に10Bの位置を聞きました。偽物云々の話はせずにです。即正確な返事をくれました。時系列で曇りのないディールを説明してくれたのです。第2コーナーの10Bでした。この情報だけで十分です。本物だと判ります。
買ったのは10年程前のヤフオクだそうです。郵趣サービス社のシート分割の即売で、第2コーナーが160万で売りに出て、それを買った人が150万でヤフオクに出したのだそうです。この値付けなら、恐らくはご購入者本人の出品でしょう。少し上でビッドしたけれど、最低値で落札できたそうです。当時の銘10の即売値は250万です。第1と第4コーナーの10Bは多分160万での即売だったかと思います。因みに単片の13.5万の即売はご希望者多数で抽選扱い、外れたよというお話を複数から聞いています。シートの写真と切手の博物館=天野安治氏の署名入りの鑑定書のコピーはもしかすれば全購入者に付けたのかも知れません。
お問い合わせに対する返事は、物は全く問題無し、第2角10Bをお持ちなら、ランクアップしての銘10までは独占しなくて良いでしょうにしたのです。勧めれば買ってくれたかも知れませんが、要るか要らないなら勧めたくない物です。弊社のセールでは終了直前に場に現れた人の存在が気になっていました。その人が渇望されている物は今回は出ていないと思ったのです。メールでもフロアでも、ご希望の物は絶対に逃しません。そして単なる見学もしないでしょう。最後の最後までの残ってくれていたので、何を狙っているのかが気になっていたのです。ラストロットの直前には分かっていたのです。成程ね・・。一度素晴らしいコレクションを弊社で売ってしまって、突然、1種類の切手に絞っての再登場、それも買う物が亡くなって来たので、感性に有った珍品にチャレンジなのでしょう。190万のハンマーはまだまだ余裕だとお見受けいたしました。次は何処へ向かうか大いに興味がソソラレます。多分、読み通りには動いてはくれないでしょうが、今後も大いに注目したい方の再登場でした。それにもう一つの情報が・・。第1コーナーの10Bも売り物として弊社の手元に来ているのです。こちらは比較的最近に別のオークションで260万+手数料で売れた物です。意図せぬ偶然なのですが、何故か物が物を呼んでくるのです。
フロアセールの直前に1通のメールが来ていました。ご出品のお問い合わせです。①明治初期の外国郵便 40点位、②カールルイスFDC・カバー・絵葉書 100点位、③坂東収容所切手葉書等の俘虜郵便 50点、④川瀬巴水全点含む、渡辺版中心のFDC、出品物として受け付けますかという内容です。この並びなら大好きだし、幾らでも捻って売る自信が有るのです。差し詰め四葉のクローバー、今までの私のキャリアで面白い経験を一杯して来たテーマなのです。多分、誰にも話していないはずです・・・この機会に数回に分けて書いて見たいと思います。
2月22日ー23日のオークションの落札品の発送が本日完了いたしました。ご出品者への精算は3月12日の予定ですが、今回のセールに関してブログでご案内していた件の総括をして見ようと思います。昨年12月14日に書いた、外国切手とFDCですが、ビジネスとすれば、ほぼ予定通りだと思います。持ち込んでくれたのは、東京の貨幣商組合加入の古銭・紙幣商さん、従業員が二桁なのでかなり活発な商売をされているのでしょう。切手は偶々の買い入れだと思います。JAPEXで弊社のセールを見学して、電話をくれての初取引でした。京都へ出張しての全国買い入れの途中に、東北で仕入れた結構なボリュームの物を持ち込んでくれました。ボストークのヒンジレスが20巻、FDCと外国がダンボールで数箱ずつ、トータルの買い入れ原価を言ってくれたので扱いは気楽にやれました。2倍になると踏みました。TVでコマーシャルを出していれば、相場の1割で買わないと商売にならないのですが、ここの場合は私が見ても納得できる程度の値付けで買っていると思えました。
ボリュームは有るのですが、この類は基本的にオークションで売る場合、手間暇かける必要は無いのです。ボストーク3巻以降は額面がベースで掛け率を幾らにするか、FDCは@20円、外国は郵趣サービス社の頒布品なので、1冊幾らで踏めるのです。一見して一日でやれるかなと思ったのですが、ボストークの1~2巻と満州と占領地が有ったので、フルに3日掛かりました。出品ロット数が56なのですが、ロッティングに手こずったのです。フロア分は10点出して1点が不落、メール分は46点で17点が不落でした。お支払い額は先方の仕入れ原価の1.8倍、不落を再出品して2倍になるでしょう。不落で残ったのは全部が日本の未使用物、機関車500円とか雁のシート的な物なのです。状態を吟味して、売れるはずの値段で出しているのですが、今の相場では残ってしまうのです。2割下げれば売れるでしょう。ギリギリの勝負をして、残ると厳しかったのがボストークの19冊のロットでした。完揃い美品、最低値は額面の80%で設定しました。落札手数料をオンすれば93.7%になります。まともに評価すれば売れないのですが、新しい所が、連刷シートなのがミソなのです。小売りで使えるのです。このロットの場合、残って1割引きで再出品か、手数料抜きで弊社で買い入れか・・どちらでもやれたのですが、ストレートに売れてくれたのでラッキーでした。今回のセールは最低値の高い物が殆ど残っていません。オークショニアは真剣勝負で勝つか負けるかを賭けるのです。
今回のメーンイベントはラストロットの【かつお釣りの無目打銘10】でした。オークションをスタートして、予期せぬ人から楽しいメールを頂いたのです。今までに数回大きいディールをしている方からでした。物の将来性を教えて欲しい、買うべきかどうかのお尋ねでした。気になるサブのデータを貰っていたので速攻で情報収集に掛かりました。杞憂で有る事を願ってです。時を置かずに返事を貰いました。
答えは明日・・・。
第136回フロアセールのメールビッドの締め切りは、明日2月21日(金)正午です。15時頃にはスタート値をUp出来る予定です。直近の傾向ですが、メールビッドの手段として、郵便・Fax・E-メールが各々3~4割ずつになって来ています。特に気になっているのがE-メールの不着です。送ったにもかかわらず当方に届いていないケースが散見されています。この場合、当方では気づくことが出来ません。スタート値をご覧になって、ビッドが反映されていない場合は勿論ですが、20日18時までにE-メールでビッドしたにもかかわらず、当方から確認のメールが届いていない方はご連絡ください。現在までに頂いたメールへの受領のお知らせは、当方で確認できている物に対しては100%完了しております。今回のセールに於きましては、Re.で返信した物で当方に戻って来た物は皆無です。ご確認頂ければ幸いです。
2023年12月の3度目の出品の日付がちょっと微妙だったのです。セールの当日はご健在、精算日前にご逝去でした。税理士さんと調整して、発生主義を取り入れて、セール当日を故人の取引に組み込みました。残りの3回分は、相続税の確定申告のタイムリミットを意識しました。こちらの扱いは、故人の申告義務からは外れるのですが、実際に金銭が動いたので何らかの手続きが要るのです。セールの日付が相続税申告に間に合う物は、数字がFix出来るので支払額を被相続財産に合算します。項目は現金です。譲渡所得なので申告義務も有るのですが、故人は既に申告できまないので相続人に引き継がれます。このケースでは、1点で30万超の物が無かったので申告は不要でした。残った物に関しては、再出品の原稿が仕上がっている物はその金額を用いました。未整理分は、私が評価して項目ごとに一覧表を作りました。所謂、精通者評価価格一覧表です。主導権を取ったのが、私なのか税理士さんなのか分からないのですが、オークショニアとしてお客さんに交付した書類で事足りるのです。税理士さんは、終わった物は勿論ですが、それ以外の物のデータも添付書類として税務署に出したと言ってました。
私にすれば仕事の一環として何時ものリズムでやっただけなのですが、税理士さん的にはちょっとビックリだったかも知れません。切手コレクションの扱いに苦慮していていると言われてました。譲渡所得の申告に於ける原価の証明をエビデンス付きでやるというのは普通は無理な作業なのです。今回は楽だったのですが、過去の取引でデータの証明が難しくても私なら目一杯手品を使います。同種の物の取引実績を並べるのです。税務署さんは結構話を聞いてくれるのです。今回は偶々運が良かったのでしょうが、あと数年すればAIを使ってオークションでの流通のデータ収集などちょろい話しになっているかと思います。ご遺族からメールを頂いたのですが、私と水口(清音)さんに費用を支払いたいとのお問い合わせでした。私は、税務申告のお手伝いもオークション業務の一環だから無料だし、水口さんも友情の証としてのお手伝いなので受け取る訳はないのです。
ある人を介しての突然のお申し入れでした。ご本人は体調が思わしくなく、入退院を繰り返していたと思います。見覚えの有る筆跡で太いマジックで書かれたメモ付きでした。自分の切手のコレクションをオークションで処分して、代金は同居している唯一の親族の銀行口座に振り込んで欲しいという趣旨でした。直近まで正に、その分野に於いては数社のオークションでの最後の買い手みたいな勢いで買い漁っていたように見えていたので、随分とふんぎった風に見えました。程無くして出品物を受け取ったのですが、予想を上回る揃いっぷりでした。サラリーマンとしての勤めを終えてからご自分の体調を自己判断して、長年の積もり積もった収集欲を一気に解き放ったやに見えました。闇雲に手を出すのでなく、絞ったテーマの内の特定の要件を充たす物に狙いすまして矢を放つのです。ピンポイントの狙い撃ちなので、このタイミングでは彼に勝てる人は最早居なかったと思います。
問わず語りなのですが、依頼主のお気持ちは分かっていました。資産の現金化もそうですが、人生を掛けたコレクションがマーケットでどう評価されたかの結果を知りたかったのでしょう。セールがスタートした時点でもご自宅と病院を出たり入ったりだったと思いますが、本当の状況は聞けていませんし、無理に急がずとも数年は時間が有るかなと思っていたのです。オークシニアは人の時間を差配は出来ません。だから他の方のそれと同じような流れで編集に入ったのです。スタートは2023年8月のセール、当然の如く目玉は11月のJAPEXセールに持って来ました。あとはゆっくり、で止む無しでしょう。記録を辿れば、既に6回のセールで売っています。そして今も継続中・・・。送金先は当初からご希望通りに親族の方の口座でしたが、出品者としての登録は最初の2回はご本人、目玉のJAPEXセールの結果はお手元に届いたはずです。12月に逝去のご連絡を受けて3度目から変更したのです。早すぎたか、やっぱりな、かは分かりませんが驚きは感じませんでした。オークショニアとしてやるべき作業に入ったのです。コレクションは既に手元に来ています。スケジュールは動き出しているのです。それなりの金額の売上になるのです。売ることは勿論ですが、私のポリシーとして、税務手続きも含めてご依頼人に出来る限り多くの果実を残したいのです。私が持っている知識と情報で判断して、正々堂々と手続きをして無税で相続人さんが引き継げると読みました。
切手コレクションの売却です。ご本人は直近で亡くなっています。居住していたマンションは同居のご親族に引き継がれるはずです。小規模宅地等の特例を使うので、必然的に相続の申告が必要になります。税理士さんを使う可能性も有るし、税務署に相談に行くやも知れません。資産の大部分は趣味の郵便切手かと思います。オークションで売って、代金は想定される相続人さんの口座に振り込んでいます。確定している事実を前提にして動かないといけません。このケースは余りないのです。申告義務者が知識を持って無いと怖いのです。そして税理士さんは経験したことが無い筈です。所得原価の計算式で、表面上のルールに捉われて、思い込みで変な計算をされれば酷い事になるのです。だから、余計な事ですが相続人さんにメモを送りました。私は今までも何度か書いて来ていますが、一番まとまっているのが昨年の【さくらカタログ】の広告です。これをもし税理士さんを使うのなら、是非読んで貰うようにアドバイスしたのです。依頼した税理士さんは矢鱈とプライドの高い飛び込みや紹介でなく、被相続人のお友達だったのです。即、連絡をくれました。率直に言って、真面目過ぎるタイプですが、理詰めで説明すれば分かってくれると読みました。
相続本体に関しては、私は口を挟みません。お手伝いは切手の処分に限定です。要素的にはちょっと複雑なのです。被相続人ご健在時の売却が2回、2023年8月と11月、ご逝去が同12月なので相続税の申告のタイムリミットが2024年10月になります。このケースでは逝去後の4か月以内に【準確定申告】をせねばいけません。2023年の所得を本人名義でやるのです。リタイアしたサラリーマンならやらずに済むと思うのですが、JAPEXセールで結構な数字の売上になっています。伝票上は被相続人の売上ですが、資金は相続人の銀行口座に入っています。目立つ数字です。この説明がいるのです。こうなると私の出番になるのです。売上自体は被相続人の相続資産に合算されますが、その種別は【現金】としてです。不動産・有価証券等と合計して、相続税の基礎控除(配偶者無しで相続人1名の)3600万を超えた分に課税されます。この計算式には紛れは生じません。同時に、所有者=故人の【準確定申告】に於いて、譲渡所得の申告義務も生じるのです。私から見れば、簡単だし、何の心配も要りませんでぶった切るのですが、税理士さんは真面目に悩んでしまいます。口座に入っている金額に目が行くのです。譲渡所得ですが、不動産とは別個の物です。書画骨董扱いです。課税要因は利益が出ている事が必須です。一般のコレクターではレアケースです。さらに個別の条件で一点又は一組で30万以下の物は生活用資産と見なされて、無条件で課税対象外になるのです。言葉を変えれば、オークションの支払明細書を見て、手数料を差し引いて30万を超えた物だけが課税される可能性が残るのです。これに大前提として、利益が出ている物という条件が追加されます。売って受け取った金額から買った時の原価を差し引くのです。赤字ならそのロットは無罪放免です。ご本人が健在なら、ある程度は説明できると思います。コレクターが収集目的に人と競ってオークションで買って、それを時を経ずにご自分抜きでオークションで売って、往復の手数料を払って利鞘を得るのは極めて困難なのです。理屈でも、実態でもそうなのですが、それを第三者に証明せねばならないのです。真面目な税理士さんのご希望の趣旨は容易に知れました。やりきる自信も有りました。
確か二桁超が30万円以上のハンマーでした。購入先は弊社とあと2社のオークションハウスです。弊社の分は7年間の伝票を直ぐに取り出せます。ロット番号が判ればオークション誌から物の確定と購入時の価格も分かります。目に見える書類で完璧な紐づけが出来るのです。他の2社は、私のスキルでは困難です。だから誰よりも役に立つ人にメールを送ったのです。JAPEXセールのアレとアレとアレ、どこで買ったか調べてよ・・。翌日、オークション誌を抱えて来てくれました。10数点の一覧表を作りました。売っての手取り額から買い値を引いて、赤字と黒字をチャート化するのです。数点黒字が有ったのですが、トータルでは勿論赤字です。損益通算が出来るので益が出て無いので申告義務は有りません。更に、譲渡所得なので基礎控除の50万も使えます。私ならこのルールで、申告不要ですよ、税務調査が来ればそれはその時、説明できますよ・・とぶっ飛ばすのですが、真面目な税理士さんが相手なので、懇切丁寧な一覧表を作りました。協力者は勿論、水口(みなくち=濁らない)公秀さんです。赤字なので税務署に提出したか否かは分かりませんが、【準確定申告】の税額がゼロだったのご報告は貰いました。でも、まだまだ作業は続きます。相続に関してですが、オークションで売るという事が如何に楽かが判ります。他人に説得力を持って証明できるのです。次回はその解説です。
3~4年前だったと思います。娘さんからの電話なのですが、会員さんでご逝去の連絡を頂いたのですが、故人がメモで弊社に依頼するようにと書いてあったので、コレクションの処分が可能かどうかを聞かれたのです。勿論ポジティブに返事をしたのですが、量が多いので整理が出来次第連絡する・・で終わっていました。キャリアの長い方で、武蔵の消印とボタのエンタがメインとして収集されていました。印象深かったのが、某老舗オークションが切りの良い回数の開催になった際に会員番号1番として祝辞を書かれていたことです。逆引きして収集キャリア60年以上の方なのです。お名前に記憶が有ったので当初のお電話の雰囲気から、正に落ち着けばお声が掛かると思いつつ何のアクションも起こしていなかったのです。後で判ったのですが、処分を急がないして、それ以上に奥様が売りたくないという雰囲気だったので手付かずのままだったのです。
去年、奥様も亡くなられて、部屋の片づけが必要になって動き始めたのです。改めてご連絡を頂いた時点で、大量のガサ物の始末は終わっていたのです。故人のお住まいが東京に近い武蔵国なので、色んなところで名前を聞く東京で一番元気な買い取り屋さんが一括で持ち返ったとの事でした。でも、話しがちょっと前後するのですが、本当のメインのコレクション、アルバム20冊は残っているのです。故人の遺言のせいかどうかは微妙なのですが、買いに行った人がメインのコレクションを見て、自分には手に負えないので、私に頼むようにと言って残して行ったそうです。名前は良く聞くし、共通の知人を通して私の事も知ってくれているのかなと思うのですが、直接には会った事は無いのです。
お待ちしていたお呼び立てですし、丁度タイミングが合ったので、ご自宅へ出かけて行って、物を確認しました。話の流れからして、買い取りは有り得ません。キャリアの長い方のコレクションのエキスなので、必然的にオークションでやりましょうにしたのです。ざっくりした数字を出そうと思いました。買い取りで無く、あくまで評価ですし、エンタが主体のアルバム20冊なので1時間でやれるのです。未使用・FDC・葉書系は全部先に持って行ってくれていたのでしょう。切手は墨六・MLL・キ半銭入りの手彫が1冊有ったので評価の助けになりました。相続は既に完了していますが、相続人が複数なので資金の流れがハッキリ判るようにして欲しいとのご希望でした。銀行振込みにして税金面の一応のルールを説明して、余程の事が無い限り税金は掛からないことを保証したのです。税務関係で何かあればこちらで対応する事を約束しました。相続人さんのご商売の関係でしょう。オークションの精算の書類一式を税理士さんに渡したらそれなりの数字になっていたので、この分の譲渡益の説明を求められたのです。ストレートに連絡を貰ったのですが、要件がはっきりしているので答えやすいのです。1分で納得してもらえました。こちらの案件では、相続には私はノータッチです。だから聞かれたことにだけ答えました。
書画骨董の単純な譲渡であり、1点で30万以下は生活用資産の売却ゆえに申告不要、超えた物も所得原価を考慮にせずに全額差益と評価しても、50万以下なので、譲渡所得の基礎控除の範囲に収まる故に申告不要だったのです。前日の件と、今回と2日連続しての未知の税理士さんからのお問い合わせは正に確定申告が始まっている事の現れでしょう。私の場合は、慣れているし、法的にも正しい解釈が出来ている自信が有るので、説明をすれば理解してくれる相手と対峙するのは何のストレスも有りません。税理士先生の方が不動産の譲渡とゴッチャにしていて、30万条件と所得原価を矢鱈と厳格に捉えている人が多いので要注意なのですが、税務職員はまさか間違えないと思います。でも、中々に微妙なケースも有るのです。この話はもうちょっと後に廻します。次回は、税務申告、フルメニューのお話です。純確定申告・相続税・譲渡所得・精通者評価価格・・対応に当たった人が、余りにも生真面目な税理士さんなので、マジで疲れたのですが、何時もながらの強~い味方が助けてくれたのです。私は仕事の一環で、相方は友情故にベストの結果を得られたと思います。
昨年の4月に亡くなられた方のご遺族からの突然のお電話でした。相続税の申告に入っていて、著名な葬儀屋さんから紹介された税理士さんにお願いしていて、切手のコレクションの話をしたら、専門家に評価を依頼するように言われたとの事でした。お名前に覚えが有って、ここ数年に亘って毎回数十万円レベルで未使用切手を弊社のメールオークションとバザールで買ってくれていた人でした。リタイアした後に切手屋でもやるつもりみたいな買いっぷりでした。制定と年賀富士山小型シート、雁と見返りが5シート以上有りました。ご自分の買いたい値段が決まっていて、それ以下ならダブっても平気で買ってくれていたのでしょう。見事な位の未使用切手のストックが残っていたのです。この品揃えでは金額は大きくても、オークションでは高く売るのは無理なのです。往復の手数料が重いのです。即金で買える数字を出したら、速攻でOKになりました。もしかしたら、TVにCMを出している買い取り屋さんも来ていたような雰囲気でした。この人たちには負ける筈は有りません。
相続のデッドラインに少し余裕が有ったので、アドバイスしたのです。税理士さんは切手を含めての相続を勧めています。被相続財産としの評価を望まれています。相続人は奥様と娘さんです。プライベートの資産状況は聞けませんが、あくまで一般論として配偶者控除を使って、奥様が相続するように話しました。配偶者控除で1.6億円又は50%まで無税になるからです。でも、遺産分割協議書は既に出来上がっていて、相続は100%娘さんになっていたのです。剰え不動産は登記まで完了です。聞けば、要介護認定を受けていて、法的な行為は出来ないということでした。私が話したところ問題は無さそうだし、相続に於いての係争の恐れも無く、署名・捺印さえできれば問題なく配偶者控除利用で税金が抑えられると見えたのにです。不動産の方は外野は口出しできませんが、せめて切手は奥様の口座に払いたかったのですが叶いませんでした。こちらとしては何方に払っても損得には影響しないのですが、出来るだけ手取りが多く残る様にお手伝いしたいのです。このケースでは基礎控除が4200万、配偶者控除不使用なのでプラスは有りません。不動産と金融資産で無税の基礎控除の数字は超えるので、切手の分に関しても否応なしに一定率の相続税が発生してしまいます。娘さん曰く、自分は一切嘘が付けない性格なので、税理士さんが言うとおりにやりたいとの事でした。だから、コレクションをピックアップする直前に、下見で評価した約定金額を銀行口座に振込んで、売買契約書を2部、収入印紙貼付で作り、思い出の為にご自宅に残したい物の精通者評価価格一覧表を添えて、これで申告して下さいにしたのです。
完全に終わったつもりだったのですが、2日前に電話を貰いました。税理士さんが故人の切手の売買での差益の申告が必要だと言って来ているとのことでした。通帳の数字を見れば、それなりに大きい数字なので、念の為のお問い合わせだと思います。ルールを娘さんに説明して、税理士さんに繋いで貰うのが筋でしょうが、説明能力に危惧を感じたのです。だから私が説明するからと言ってこちらに電話を貰いました。ポイントを絞らないといけません。今更、配偶者控除云々は言いません。お問い合わせの趣旨を聞きました。相続ですか、譲渡ですかです。譲渡での差益の申告との返事なので、ここらはソラで回答が出来るのです。真面目にレクチャーしましたよ。切手コレクションの売却は譲渡所得だけれど、不動産とは異なります。書画骨董と同じです。一点又は一組で30万円以下の物は生活用資産と見なされて、一切が申告対象外です。今回のケースでは、購入時の弊社のオークションのカタログからして1点で30万円超の物はなく、普通の未使用切手なので値上がりもしていません。だからトータルで大きい金額になっていても、譲渡所得の申告は不要です。この説明で先方も納得してくれました。本来なら、所得原価と必要経費を差し引いたり、損益通算したり、年間の譲渡所得の基礎控除50万を使うとかもするのですが、この人の場合は、30万条項一発で解決できたのです。税務署が聞いて来れば、私が対応致します。
でも、どう考えても、切手だけでなく、不動産の相続で配偶者控除を一切使わない理由が見えてこないのです。お元気そうだったし、普通に話せたし、署名・捺印は問題なく出来たのにです。葬儀屋さん紹介の税理士さんで無く、初っ端から私に声を掛けてくれれば幾らでもお手伝いできたかなと思うのです。
時期が時期だからなのですが、直近で税務申告へのお問い合わせが、出品者サイドの税理士さんから続いて来ています。相続した切手コレクションの売却と、その後に売った場合の譲渡所得についてです。弊社のスタンスとして、遺品のご出品受付に際しては、コレクションの処分で終わらず、税務申告への対応までを業務の一環としてやるので、相続とその後の譲渡に関して税務申告が必要ならば私に連絡する様にお願いしています。今までの実務経験で判っているのですが、郵便切手コレクションの売却に際しては、基本的には税務申告は不要なのです。買って、売って、特例を目一杯使って、それで差益が出てこそ申告が必要なのですが、そんな幸運な方は極めて限られます。現役のコレクターはそのメカニズムをご存じなので心配はいらないのですが、ご自分がお金を払っていない相続に関しては、所得原価がゼロで、譲渡所得に於いて自動的に認められる5%を引いた物に課税されるという思い込みが有るのです。この場合の原価は、被相続人さんが買った金額を用いるのです。昨今よりも高い時に買われている事が多いのです。でもこのルールは、納税義務者ご本人だけでなく、切手コレクションの売却を扱ったことの無い税理士さんもよく間違えているのです。無駄な税金は払ってはいけないし、頭の片隅にルールをインプットしさえすればその愚を避けることは出来るのです。昨年後半に扱った3件では、私が書類を作って、税理士さんに申告時にやるべきこととやる必要が無い事を区分けして説明したので、丸く収まっていると思います。因みに、利益が出ていないから税務申告不要というのは、一般のコレクターの場合であって、業者さんや、セミプロでも【業として】売買されている場合は前提条件が異なりますし、計算式が違います。【業として】の定義は、総合判断で為されます。お金を借りている、人を使っている、場所を借りている、広告を出している等々の要因を元にして決するのですが、今回はその人たちは対象外として論じます。3件共に、相続を因として弊社が仕事をやったのですが、かなりのボリュームの額になりましたし、何れも支払いは銀行口座振り込みなので必然的に確定申告の際に、税理士さんの目に留まったので弊社へのお尋ねになりました。中々にドラマチックだし、バラエティー豊富な案件なので、詳しく論じて行きたいと思います。切手コレクションの処分に於いては、真っ正直にやって、法的にも何ら問題なく、特にオークションを利用する事が如何に有益なのかを説明したいと思います。税務署にバレルから、オークションに出さずに一括で買い取りますという甘言を信じてはいけません。時間をかけて詳しく書いて行きましょう。